8話 存在値999の壁。
8話 存在値999の壁。
「確か、殿下の親である皇帝のレベルが、500あるかないかぐらいじゃなかった?」
「あんな雑魚とは、比べられたくもないでちゅね。オイちゃんは、無敵で天才で万能で完璧な究極超美少女なんでちゅよ」
そこで、センは、『プロパティアイ』という、他人の能力を看破できる魔法を発動させて、彼女のステータスを確認してみた。
さすがに冗談だろうと、思っていたのだが、普通にマジだった。
「……す、すげぇな……17歳という若さで、存在値999か……俺が、『最初の壁』である『存在値999』相当になれたのは、いつぐらいだったかなぁ……確か『10万年』は余裕で過ぎていたと思うけど……」
「……? 10万年? なんの話でちゅか?」
「ああ、実は俺、レベルは1だけど、1億年ほど修行した結果、存在値で言えば、『17万』相当ぐらいになっているんだ」
「へー……存在値17万でちゅかー……うわー、すごいでちゅねー……かっこいー、すてきー」
「ああ。だから、俺は自分のことを、ぶっちぎりで世界最強の存在だと認識していたんだが……さすがに、1兆が相手になると……今の俺でも屁みたいなもんだな……」
そこで、シューリは、
いったん、『センの全て』を、
『はんっ』と、鼻で笑ってから、
「……常識について、何も知らないみたいでちゅから、教えてあげまちゅけど、『人間』の存在値は999がカンストでちゅよ。扉の向こうにいる化け物が『存在値1兆』を超えているのは、『神』と呼ばれている化け物だからでちゅ」
「ああ、知っているよ。俺も、『999の壁』を、なかなか超えることがなかなかできなくて、本当に苦労したから。『壁の前に到達するだけ』なら10万年でいけたが、『壁を超えた』のは、1000万年を超えて以降だ。ほんと、苦労した。けど、その壁を超えて、かつ『半神化』できるようになってからは、結構、勢いよく存在値が跳ね上がっていった。俺の場合、『土台となるレベル』が『1』で低すぎるから、今一つ、伸びが悪かったんだけどな」
レベルは土台。
センの領域になると、『レベルという下地』に『倍率』がかかって、最終的な存在値が導かれる。
もし、今、センのレベルが『2』に上がれば、
それだけで、存在値の方は、現在の『17万』から、『50万』ぐらいに跳ね上がる。
「存在値17万もあれば人生余裕、レベル1でも問題ない……と思っていたんだが……こうなってくると、やっぱ、レベルを上げたいなぁ……まあ、今の状況だと、仮にレベルがカンストの700になっても、存在値『1億』ぐらいが精々なんだが……いや、ほんと、1兆は、マジでエグいな……どうしようかなぁ……」
と、真剣に考え始めたセンに対して、
シューリは、
「……申し訳ないでちゅけど、オイちゃん、ガキのたわごとに付き合っているほどヒマじゃないんで、妄言は、どっかよそでやってもらえまちゅか?」
と、シューリが呆れ交じりにそう言ったところで、
バァァアアアアアアアアアアアアアアアンッ!
と、豪快な音が響いて、
『御用邸の門戸』が吹っ飛ばされた。
「ぉお……なんだ、なんだ?」
と、センが困惑しつつ、音が鳴った方に視線を向けると、
そこには、
――ミニスカ浴衣姿の『完璧ボディ超美人』が、
鋭い目つきで、シューリをにらみつけていた。
(うぉ……すげぇ美人……シューリとタメはるレベルじゃねぇか……)
艶(つや)やかな漆黒のロングツインテール。
スラリと伸びた長い手足。
超美形の超美人なのは間違いないが、鬼のように怖い表情なので『かわいらしさ』は皆無。
まるで、刃物のような美貌。
そんな『ミニスカ浴衣の超美女』は、
鋭い目つきでシューリをにらみつけたまま、
「……そこの金髪。あんたが、シューリ・スピリット・アース・ソルウィング?」
突然の訪問者に対し、
シューリは、いつものニタニタ顔を崩さず、
「そうでちゅけど、あんたは誰でちゅか?」
「アダム・クリムゾン。あんたを殺しにきた。あんたが死なないと、この世界が滅びてしまうから。正直、この世界がどうなろうが知ったこっちゃない。けど、世界が滅びるってことは、あたしも死ぬってことだから。それは許容できない」
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