7話 存在値1兆の化け物。


 7話 存在値1兆の化け物。


「存在値1兆って……もし、そんなのが実在したら……鼻息だけで、世界がまるごと全部吹っ飛ぶんじゃ……」


「コスモゾーンの法則が働くから、一瞬で世界が終わるってことはないでちゅけど、その化け物を野放しにしていたら、いずれ、世界すべてが飲み込まれるのは間違いないでちゅね」


 『コスモゾーンの法則』は、この世界の真理の一つ。

 ・『大きすぎるエネルギーは、コンパクト化されるため、無駄な破壊には至らない』


「まあ、でも、安心してくだちゃい。オイちゃんが生贄(いけにえ)になれば、その化け物は出てこないんで」


「……」


「というわけで、オイちゃんは、だいぶ忙しいんで、帰ってもらっていいでちゅか?」


 そこで、センは、ギリっと奥歯をかみしめて、


「……ぁ、あんた、世界のために、自分の命を投げ出して死ぬっていうのか? ……なんで、そんな選択肢をとれる?」


 と、敬語を忘れてしまい、ただ思ったことを口にしてしまう。


 そんなセンの『不敬な態度』など意に介さず、

 シューリは、たんたんと、


「なんで、って……『オイちゃん一人が死ぬ』か『全員死ぬ』かという、『ハナから選択肢になっていない不自由な二択』でちゅからねぇ。どっちみち死ぬなら、ひとりで死にまちゅよ。その方が合理的じゃないでちゅか」


「……」


「あと、オイちゃん、プライドが高いんでちゅよ。『ひとりで死ぬのは怖いから、みんな一緒に死んで~』とか、そんな吐くほどダサいことは死んでも言えまちぇん。――結局のところは、それだけの話でちゅよ」


 短い会話の中で、センは、彼女の『大半』を理解した。


(めんどくせぇ女だ……)


 心底からそう思う。

 自称も、語尾も、行動も、性格も、全部バグっているメンドくせぇ女。


 全部ひっくるめて、


(ドストライクだ、バカ野郎)


 センの好みど真ん中だった。

 『過去の一件』があるので、

 仮にシューリが、多少『好み』から外れていても、普通に求婚する気でいた。


 『権力を失い幽閉された』というウワサだけは、親伝いに聞いていたので、

 センは、『その状況から、颯爽と救い出してやろう』と思っていた。


 そして、そのまま『俺の女になれよ』と『華麗に求婚』して、

 末永く幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし、

 ――というのが、描いていたプランだったのだが、


 しかし、ここまで、ドストライクだと、

 逆に、とことん日和(ひよ)ってしまう。

 もう、ほんと、どうしたらいいのか分からなくなる。

 『敬愛と憧れ』が『ガチ恋』に変わった瞬間。

 『本気で恋している女性』に日和(ひよ)らない男はいない。


 だから、センは、

 いったん、自分の感情を押し殺して、


「……その、『存在値1兆の敵』とやらを殺すことが出来れば、あんたは死ぬ必要がない。そういう理屈で間違いないか?」


 現実的かつ生産的な話をはじめる。


「まあ、理屈はそうでちゅけど、普通に無理じゃないでちゅか? だって、存在値1兆でちゅよ? ダレが、どれだけ、何をしても絶対に勝てまちぇんよ。――この世界で一番強い存在は『本気を出したオイちゃん』でちゅけど、そのオイちゃんでも、レベル700、存在値999でちゅからねぇ」


 レベルは上限の700。

 存在値はカンストの999。

 余裕で『人』の限界に達している超人。

 それが、大帝国の姫『シューリ・スピリット・アース・ソルウィング』

 ――だが、そんな彼女でも、存在値1兆が相手だと何もできない。


「え、あの……殿下って、そんな強いの? あれ? 確か、殿下の親である皇帝のレベルが、500あるかないかぐらいじゃなかった?」




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 名前『シューリ・スピリット・アース・ソルウィング』

 ・称号『史上最低の美少女』

    『完璧で万能な超人』

    『生贄』


 《レベル》    【700】

 (存在値)    【999】


 [HP]     【18900/18900】

 [MP]     【25500/25500】

 [スタミナ]   【9000/9000】


 「攻撃力」       【1500】

 「魔法攻撃力」     【1900】

 「防御力」       【900】

 「魔法防御力」     【2300】

 「敏捷性」       【800】

 「耐性値」       【5000】

 「HP再生力」     【1500】

 「魔力回復力」     【3900】

 「スタミナ回復速度」  【1000】

 「反応速度」      【700】


 「隠しパラメータ合計値」【53000】


 習得魔法「ソードスコールノヴァ」「他、多数」

 グリムアーツ「なし」


 スペシャル「ラッキー・ニルヴァーナ」


 戦闘力評価「★★★★★」

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