6話 マジでとことん最低の美少女。
6話 マジでとことん最低の美少女。
絶世の美貌と、イタズラな狂人性。
彼女の全てが、センの全てをわしづかみにした。
心の底から『彼女の隣に立ちたい』と思った反面、
(……ここまで美人だと、俺がチンチクリンすぎて、隣に並ぶのが嫌になるな……)
根本的に自己評価が低いセンは、
異次元レベルの美貌を持つ彼女を前にして、
つい、自分というものを客観的に見てしまった。
(……んー……『根性』と『能力』の方は、普通に釣り合っているという自負があるが、見た目がなぁ……もっと、イケメンに生まれていたかったなぁ……)
などと、自分のルックスについて卑下(ひげ)しつつ、
彼女の完璧な美を、ジっと見つめてしまったセン。
そんなセンに、彼女――シューリ・スピリット・アース・ソルウィングは問いかけた。
「で、話ってなんでちゅか?」
「え……あ……えっと……」
ここに来るまでは、『世界最強の俺様が求婚してやるぜ』と意気込んでいたセンだが、
彼女の異常な美貌を前にして、つい、ほんのり日和ってしまう。
「俺と殿下は、一回、会ったことがあるんすけど、覚えます?」
「……ん? んー……」
そこで、シューリは、センの目をジーっと見つめる。
三秒が経過したところで、
「……ああっ!」
と、何かを思い出したような彼女を見て、
センは、内心、
(お、覚えていてくれたか)
と、普通に喜んだのだが、
「あんた、きのう殺し損ねたゴキブリでちゅね! 確か、そういう『しぶとそうな目』をしていた気がしまちゅ」
「……いや、あの……俺、黒光りしてないですよね?」
「じゃあ、三日前に殺し損ねたドブネズミでちゅか? 確か、そのぐらい『みすぼらしかった』という記憶が、なきにしもあらずな今日このごろ……」
「よく見てもらっていいですか? 一応、人間です」
「あれ? あんた、もしかして、自分のことを人間だと思っているんでちゅか? あわれでちゅねぇ」
そう言って、ケラケラと笑う、天上天下唯我独尊なお姫様。
(この女が嫌われている理由が、ほぼ100%分かってしまった……どうしよう。俺も、すでに、だいぶ嫌いになりかけている。この速度で、人を嫌いになりかけたのは生まれて初めてだ。泡立つような動揺がとまらねぇ)
などと、思っていると、
「話ってそれだけでちゅか? じゃあ、お帰りくだちゃい」
「いや、それだけじゃないすけど――」
「これから、オイちゃん、『自殺する準備』で忙しいから、マジで帰ってほしいんでちゅけど」
「……へ? 自殺?」
『まったく予想していなかった角度』からのカウンターを受けて、センの眉間にシワが寄る。
そんな彼に、シューリは、たんたんと、
「この家の裏手にある、『ヤオヨロズの迷宮』のことは知っていまちゅか?」
「ぇ……あ、ああ……有名だから、一応、知ってはいますよ。確か、むちゃくちゃ高レベルなモンスターが大量に沸くから、誰も踏破できないって噂の最高位ダンジョン」
『今の俺なら、秒でクリアできるだろうが』――などと心の中で思っていると、
彼女は続けて、
「その一番奥に、でかい扉があるんでちゅけど、数日以内に、その扉から『存在値1兆以上の化け物』が出てきて、世界を滅ぼしてしまうんでちゅよ」
「え、なんて? 存在値いっ……え? ぃ、1兆? ……ちょう?」
「信じられないでちゅよねぇ。オイちゃんも、この話を他人から聞かされたら信じないと思いまちゅよ。ただ、オイちゃんは、その情報を、生まれる前から知っていまちた。『魂に刻まれている』ってヤツでちゅね。だから、それが『真実』だと知っているんでちゅよ」
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