5話 全裸の最低美少女。


 5話 全裸の最低美少女。


 スキンヘッドは、姫のヤバさについて、とうとうと語る。


「シューリ殿下とは、俺も、数回、話したことがあるが……なんというか、ヒドかったな……『クソ女』の最終形態って感じだった」


「……」


「確かに、殿下の『見た目』は世界一だ。全世界ナンバーワンの美女。それは、誰もが認める。だが……中身は、最悪のクソ女だ。い、言っておくが、俺一人が言っている『個人的な意見』ってわけじゃねぇぞ? 殿下をよく知る『皇室全体の総意』だ」


「……そうか……」


 センは、頭をぼりぼりとかきながら、


「んー」


 ちょっとだけ考えた結果、


「……まあ、いいや。他人の評価なんざ、どうでもいい。俺がどう思うか。それが全部だ」


 そう言うと、センは指をパチンと鳴らした。


 すると、スキンヘッドは、


「……んっ?! え?!」


 元の場所に戻っていた。

 センの姿は、もうどこにもなかった。


 キョロキョロとあたりをうかがっていると、

 そこで、バックヤードに引っ込んで休憩していた同僚が近づいてきて、


「おい、どうした?」


「あ、いや……あの……実は、今……」


 と、自分の身に起こったことを伝えたが、


「ん、間違いなく夢だな。つぅか、寝てんじゃねぇよ。カシラに殺されるぞ」


「……夢……ぁ、ああ……まぁ、そうだな……現実なわけがねぇ……ランク25の魔法なんざ、ありえねぇ……あんな、カスみたいな落ちこぼれのガキが、そんな……はは」






 ★






 ――ここは、南の森の御用邸。

 さっそく姫に会いに来たセンは、


「護衛が一人もいねぇ……本当に、姫がいるのか? 嘘つかれたか……それとも、全部真実で、護衛すらつけてもらえないほど嫌われてんのか……」


 などと考えつつ、

 センは、ノックもせず、

 御用邸の中へと入っていく。


 すると、『リビングで風呂に入っている』という、頭おかしい美女を発見した。


「おや、野盗か何かかと思いまちたけど、違ったみたいでちゅね」


 全裸でセンを出迎えた美女。

 彼女は行動も語尾もバグっていた。


 センは、そんな彼女から、紳士的に、スっと目線を外し、


「……え、どういう状況?」


 と、素直に疑問符を投げかけると、

 その美女は、


「お風呂に入っているんでちゅけど、それ以外の何かに見えまちゅか?」


 いろいろと、ツッコミどころが多すぎて、

 センは一瞬、『あれ? 夢を見ているのかな?』と、

 現状の現実性を疑ったが、とりあえず、


「……ちょっと話したいことがあるんで、風呂から出て、服を着てもらってもいいすか?」


 紳士な提案をするセンに、彼女は、


「オイちゃんは、他人の指図を受けまちぇん。常に天上天下唯我独尊。それがオイちゃんなんでちゅ」


 行動と語尾だけではなく、

 どうやら、自称と性格もバグっている様子。


「……あ、そうすか……でも、目のやり場にこまるんすけど?」


「ガキに見られたって、なんとも思わないでちゅ。見たかったら、お好きにどうぞ」


 そう言われて、センは、


(とことんガキ扱いか、ナメやがって……とはいえ、まあ、実際、俺の肉体年齢は3歳だしなぁ……)


 精神年齢は1億歳を超えているが、

 肉体は、ゴリゴリの3歳児である。


 実際のところ、3歳児に裸を見られたからといってガタガタいう女性など、どの世界にも存在しないだろう。


「じゃ、遠慮なく」


 そう言って、センは、目線を、彼女に戻した。


(……あらためて見ると……エグい美女だ……)


 彼女とは、過去に一度だけ会ったことがあるのだが、

 あの時は、『死にかけで朦朧』としていたので、

 彼女の顔をじっくりと見る余裕はなかった。


 『世界一の美女である』というウワサはよく聞いていたのと、『うっすら残っている記憶』を合わせて『たぶん、このぐらいの美女だろう』と予測していたのだが、


 実際に『目(ま)の当たり』にした彼女の美貌は、想像の100倍を超えていた。


(まるで、女神だな……)


 年齢は17歳前後。

 スラっと長い手足と、豊かな胸が特徴的な、

 まさに、『美の女神』といった相貌(そうぼう)。


 『翡翠(ひすい)が混じった金髪』のミディアムボブ。

 小悪魔が過ぎるイタズラな表情。

 常にニタニタしているが、目はまったく笑っていない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る