4話 やりたいこと、その一! 世界一の美女と結婚したい!


 4話 やりたいこと、その一! 世界一の美女と結婚したい!


「まずは、やりたかったことを全部やる」


 そう決断すると、

 センは、『裏ギルド』の本部に向かう。


 裏ギルドは、闇社会最大の特権的同業者組合。

 『カルマ家』は、基本的に、裏ギルドから仕事を請(う)け負っている。

 だから、


「ん? お前、確か、カルマ家の出来損ない……名前、なんだっけ?」


 一応、受付とは顔見知り。

 ただ、センは『無能すぎる』ため、仕事を任されることはなかったから、『正確な認知』はされていない。

 ちなみに、『この受付の外見』は、スキンヘッドでガチムチのコワモテ。

 表の冒険者ギルドみたいに、美女が受付をしたりしない。


「センエース」


「ああ、そういえば、そんな名前だったな。で、何か用か?」


「シューリ・スピリット・アース・ソルウィング姫殿下が、今、どこにいるか教えてくれ」


「はぁ? そんなもん知ってどうすんだ」


「結婚を申し込む。男なら、誰でも『世界一の美女をゲットしたい』と思うもの……だろ?」


 センのやりたいこと、その一。

 世界一の美女とイチャイチャする。


「ははは。面白いギャグだ。お前、なかなか道化(ピエロ)のセンスがあるじゃないか。お前みたいな『暗部のゴミ』が、皇帝陛下の娘であるシューリ殿下に求婚とは、ははは、こりゃ、傑作だ。最高に笑える悲喜劇として、ぜひ舞台で観賞したいレベル」


「好きに笑っていいが、とりあえず、場所を教えてくれ。この裏ギルドの上層部は、皇室ともつながりが強いから、姫の居場所も分かるだろ?」


「ははっ、教えてほしけりゃ、2000万テス払いな」


 子供をあしらうようにそう言うスキンヘッドの受付。

 完全に、『子供の冗談』だと思っているようだが、

 しかし、セン的には、一ミリも冗談ではないので、


(限定空間ランク25)


 指をパチンと鳴らし、無詠唱で、空間系の魔法を展開。

 生成した亜空間に、スキンヘッドを引きずり込んだ。


「っ?! はっ?!!」


 何もない長方形だけの世界で二人きりになると、

 センは、


「今の俺なら、稼ごうと思えば、いくらでも稼げる。自力で『姫を探すこと』も可能。ただ、そういう手順を踏むのは面倒。余計なことは省いて最短でいきたい。だから聞いているんだ。姫はどこにいる? 国内か? それとも、国外か?」


「なっ……なんだ……まさか、空間魔法? そんな高度な魔法を……お前が? いや、そんな、まさか――」


 と、困惑を隠せないスキンヘッドに、


「人の話を聞けよ、ボケ」


 そう言いながら、


「雷槍(らいそう)ランク25」


 『雷を纏ったヤリ』を召喚する魔法を使い、

 その『バチバチと帯電しているヤリ先』を、

 スキンヘッドの喉元につきつける。


「う、ぃっ……に、25?! ランク25の魔法?! はぁ?!」


「3秒数える。0になったら、喉を溶かすぞ。3……2……」


「ちょちょちょちょ、待てっ! わかった! 何でも話す! だから、やめろ! やめろぉお!」


 完全降伏を受けて、センは、雷のヤリを消す。


「で? 姫は、今、どこにいる? 余計なことは言わず、姫の場所だけ口にしろ。皇城か? 外か?」


「しゅ、シューリ殿下なら、『南の森』の御用邸(ごようてい)にいる」


「ふむ。ちなみに理由は? なぜ、彼女は、そんな場所にいる?」


「……か、隔離されているんだよ。……殿下は皇帝陛下から嫌われているからな。いや、皇帝陛下だけじゃない。皇室全員から嫌われている。もっといえば、貴族からも、ナイトからも、周りにいる全員から、わけへだてなく、死ぬほど嫌われている」


「……あの人、なんで、そんな嫌われてんだよ」


「殿下は……尋常じゃなく性格が悪い『稀代の大奇人』だ。他人のことを虫ケラとしか思っていない。王族や貴族ってのは、たいがい、そういうものだが、殿下は頭8つ分ぐらい抜けている感じだ。あと、単純に不気味なんだ。喋り方とか、思想とか、とにかく全部が気持ち悪い」



(……まあ、確かに、しゃべり方は不気味だったな……)



 そこで、センは、『彼女と初めて会った時のこと』を思い出す。

 あれは、去年のこと。



『――そこで死にかけているガキ、いったい、どうしたんでちゅか?』

『もう……10日……ごはんを食べて……ない……』

『ごはんがなければ、お菓子を食べればいいじゃないでちゅか?』

『おかし……食べたこと……ない』

『あっそ。あんたの食生活とか、一ミリも興味ないでちゅけど』


『――しゅ、シューリ殿下っ! な、なぜ、こんなところに……っ』

『ん? あんた、もしかして、このガキの親でちゅか?』

『ぇ、あ……は、はい。カルマ家の現当主、バースディ・カルマと申します』

『カスの名前なんか、マジで、どうでもいいでちゅ。それより、このガキ、なんで、こんなに死にかけているんでちゅか?』

『え、えっと……じつは、この愚息は、どうしようもない無能でして。どれだけ鍛錬を積ませても、レベルが1のままでして』

『劣等種だから殺そうとしたんでちゅか?』

『い、いえ、殺そうとしたわけではなく、極限状態を味わわせることで、覚醒をうながそうかと』

『ふーん。つまり、殺す気はないと?』

『ぇ、えぇと……は、はい、もちろん。実の子を殺す親などいませんから、はは』

『じゃあ、このガキが、成人する前に死んだら、罰として、あんたを、このガキと同じ目にあわせまちゅね』

『は? い、いや、なぜ――』

『ガキの一匹もまともに育てられないような劣等種には、極限状態を味わわせて、覚醒をうながそうかと思ったんでちゅよ』

『……』

『じゃ、そういうことで』


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