第25話 姫子の考え

 「えっ!?」

 女性から言われた事の無かった誉め言葉に、黒川は慌てた。




 「黒川さんの『警察官としての心構え』に私、深い感銘を受けました。



  世の中は、決して嬉しい事、楽しい事ばかりではありません。


  時には辛い事、苦しい事もあります。そしてそれが続いてしまうような時も…。


  でもその負の局面において、悪い誘惑に負けてはいけないのですよね。




  正しく生きる事の大切さ、そして難しさが分かっている方が言える、とても重みのある考え方だと思います。




  事件が起きてしまった時、その事件を解決する事が、正しい道であると信じて…。


  そして出来る事なら、事件が起きる前に、それを止めたい…。


  本当におっしゃる通りだと思います。




  さらに先程の銀行内での、瞬時の判断と行動力。


  私、黒川さんは、警察がまさに天職だと思います。」

 姫子が答えた。



 「ああ…、(そういう事だったのか…。)


  ありがとうございます。」

 黒川は、姫子の肩透かしの言葉にめげずに、きちんと答えた。




 「あの、黒川さん…。


  その…、私に問題になった事件についての詳細を教えてはいただけませんでしょうか?


  もしかしたら、何か捜査のお力になれるヒントが見つかるかもしれません。

  もちろん、もしよろしければのお願いなのですが…。」

 姫子が遠慮がちに黒川に聞いてきた。


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