第17話 黒川の主張
「だから、さっきから何度も言っているじゃないですか。
『あの放送は、仕組まれた物』だって。
編集で流さないで、ごまかそうとしていましたが、あの記者は匿名電話の話を知っていたんですよ。
それを知っている刑事関係者以外の人間は、ほんの一握りなんですよ。
恐らく西塔先生は、剛社長から話を聞いて、それを記者に話したはずです。
それに、ああまでして自分を陥れようとしたという事は、西塔先生が自分に調べられたら困る何かを絶対隠している証拠だとは思いませんか?
自分の勘に間違いは、無いはずなんです。
どうか剛社長と西塔先生の捜査を、自分に継続させて下さい。
お願いします。」
先程から黒川は、何度も頭を直角に下げて、懇願していた。
テレビ放送の影響力は甚大だった。
黒川は、すぐさま上層部から会議室に呼び出され、説明を要求されていたのだ。
「黒川、君の言う事を信じていない訳ではないんだ。
恐らく君が言う事が真実なのだろう。
だが、テレビで放送されていた捜査の進め方が問題になっているのも、事実なんだよ。
そして病院から、何日も病院内にいたという君の行動に対する抗議の連絡も、入ってきてしまっているんだよ。
あちらさんは、君の捜査を即刻中止するよう要望してきている。
だから最初に注意するように言ったじゃないか。
君はしばらくの間、応援に言って貰う事になった。
行先は、都市銀行。
出張勤務だ。
銀行さんの言う事を良く聞いて、大人しく銀行員のように行動するんだぞ。」
「それは、交番から派遣されている振込詐欺防止の為の注意喚起業務ですよね。
一日中銀行員と一緒に窓口業務のアシストとして入り口に立って、不審行動を取る老人がいないか見ている奴ですよね。
あれに自分が行くと言うのですか?
そうやって銀行に縛り付ける事で、この捜査に関わる時間を自分から奪う算段ですね。」
最後には、黒川が思わず不満を口にした。
「申し訳ないが、これは決定事項だ。
直ぐに準備をして出発しなさい。
そのうち正式な辞令も出る事になるだろう。」
課長は、黒川の問には一切答えなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます