第14話 捜査の行き詰まり

 黒川は、光さんと会える事になった。これは、清子さんが急いで連絡を取ってくれたおかげだった。


 しかし光さんは、仕事中にあまりゆっくりと話をする時間が取れないという事で、会えるのは土曜日の夕方に決まった。ちなみに、今日はまだ火曜日だった。



 さらに黒川は、自分が剛社長の不在時に、桜井家に入る事を禁止されたと清子さんから聞いた。


 だがこの話を聞いて、社長に何かあるのかと疑念は抱いたものの、令状もない状況では、清子さんに迷惑がかかる恐れも考えて、それ以上何もする事は出来なかった。



 黒川は、土曜日までの間に出来る事を考えた。



 剛社長や西塔先生から新たな話を聞く事は、昨日の二人の反応から考えて、かなり難しい状況に思われた。


 また話を聞く為には、何がしかの準備が必要に思われた。




 次に黒川は、桜井コーポレーションの社員から何か情報を得る事は出来ないかと、あまり目立たないように気を付けながら、会社の出勤の様子を伺っていた。


 しかし、会長や社長に近い存在の上役と思われる人物の多くが、車の送迎で出勤して来る様子を見て、二人の詳しい話を聞く事は難しいかもしれないと思い始めていた。




  (もしも理会長の意識が戻れば、彼から話が聞けるのに…)



 捜査の行き詰まりを感じ始めていた黒川は、会長が入院している病院の特別室の様子を伺っていた。



 (看護師さんの動きから、会長の意識が戻った事が分かれば、清子さんと面会に行って話を聞けるかもしれない…)


 そんな一縷いちるの望みにすがりながら、会長の周辺にいる事が、捜査の何か突破口になる気がしていた。




 黒川は、そんな自分の刑事の勘を信じて、静かに何日も待っていた。








 そして、動きがあった。


 その日の夕方、特別室に一人の女子高生が近づいてきたのだ。




 学校帰りに立ち寄ったのであろうか?制服を着て鞄をもったままの彼女は、手に花束を持っていた。



 そして特別室の扉に軽くノックをした後、彼女は静かに部屋の中に入って行った。


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