第13話 西塔先生の話
黒川は、待合室で診察の順番待ちをしていた。
先程、看護師さんに確認した西塔先生との話は、診察時間中という一言でまたも門前払いになってしまっていたからだ。
考えた末に黒川は、受付に回り、体調不良という事で内科の西塔先生の受診を希望したのだった。
診察の順番が来て、黒川は診察室に入って行った。
「次は初診の方ですね。
ところで、私の受診を希望されましたが、紹介状はお持ちでは無いそうですね。
私の診察を希望する場合は、基本的に紹介状が必要ですので、次回からは気を付けて下さい。」
西塔先生は、席に着いた黒川に笑顔で言った。
「それは大変失礼いたしました、西塔先生。
でも私の事は、桜井 剛社長から連絡は来ていませんでしょうか?」
黒川がジッと先生の顔を見ながら答えた。
「桜井…。
もしかして君は、刑事さんなのか?
先程看護師に診察中と伝えたから、わざわざここまで入ってきたという事かね?」
西塔先生がけげんな表情を浮かべながら言った。
「ご名答です、先生。
それに剛社長から先生に、ちゃんと連絡もして下さっているようですね。」
「ここまで来ていただいて、こんな事を申し上げるのも何だが…。
桜井社長も私も特に刑事さんにお話するような事は無いのだよ。
もうお帰り頂けないでしょうか?」
西塔先生が言った。
「先生、私はまだ質問も何もしていませんが、それでもお話しをする事が無いとおっしゃるのですか?」
「ああ、その通りだよ。
しつこい刑事さんが来るから、気を付けて欲しいとちゃんと言われているからね。」
「ほぉ、気を付けるのですか?
一体何に気を付けるように社長はおっしゃったのですか?」
「お帰り下さい。
次の患者さんが、私の診察を待っているんだ。
私は君の悪ふざけに付き合っている暇は無いんですよ。」
西塔先生は、そう答えるとクルリと机の方へ向かい、看護師に次の患者を呼ぶように伝えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます