第11話:神像
帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年2月10日・ロディー視点
ロディー15歳
俺は神様の像を造った。
それなりの大木を切り倒して、人間よりも大きい身長3メートルの神像だ。
何故そんなモノを造ったかと言われれば、神様にゴマをするためだ。
スキルの基準が神様次第なのなら、ゴマをすって有利にしてもらう。
卑怯だとが姑息だとは言う奴がいるかもしれないが、これも立派な戦術だ。
それに、自分たちを創ってくれた創造神を敬う事が悪な訳がない。
まあ、神を胡散臭いと思っていた事は確かだ。
だが「立っている者は親でも使え」というではないか、神も利用させてもらう。
それに、俺だって何も対価を払わずに神頼みをしているわけではない。
俺が魔力で創り出した前世の世界の農作物はもちろん、醤油や味噌、香草塩を使った料理や酒も供えたのだ。
お供えした物は一瞬で消え去った。
信じられないくらい早く、瞬きする間もないくらいの速さで消えた。
創造神もよほど飢えていたのだろう。
前世で読んだラノベの設定では、その世界に流通している食物や料理しか食べられなかったり、御供えした物しか食べられなかったりしていた。
だとすれば、品種改良された前世の作物や、この世界にはない醤油や味噌で味付けされた料理は、創造神が生まれて初めて食べるご馳走だろう。
……ピカピカとエルドビアを入れていた木製マグカップが光っている。
これは、もっとエルドビアを寄こせという創造神からのサインなのだろうか?
そう思ったとたんに木製マグカップの明滅が早くなった。
しかたがないから木製カップ一杯にエルドビアを注いでやった。
今度は一瞬ではなく徐々にエルドビアが減っている。
木製マグカップは明滅しなくなったが、今度は木製皿が明滅し始めた。
この皿には狼肉の七味唐辛子焼きは入っていた。
エルドビアとは合わないと思うのだが、狼肉が好きなのかな?
そう思うと明滅が激しくなった。
しかたがないので狼肉の七味唐辛子焼きをもう1度作って供えた。
何度も作らされるのは嫌なので、余ったらおさがりとして自分で食べる心算で、木製皿にてんこ盛り作って御供えした。
今手元にある料理道具を全て使って焼いたので、てんこ盛りにしても余った。
最初から余らせる心算で焼いたので当然の事だ。
ここ最近は生産魔力量よりも多くの魔力を使っていた。
創造神がたくさん食べてくれるのなら、俺の食事量をごまかして魔力生産できる。
やはり甘すぎるエルドビアと狼肉の七味唐辛子焼きは合わなかったのだろう。
あるいは酒精の強い焼酎の方が七味胡椒焼きと合うと思ったのかもしれない。
焼酎を入れていた木製マグカップが光り始めた。
創造神なのに食い意地が汚いと呆れはしたが、こうなりそうだとは思っていた。
不敬かもしれないが、狼肉の七味唐辛子焼きを食べながら焼酎を注いだ。生姜
なみなみと注いだからか、あるいは酒精が強いからか、少しずつ減っている。
お供えした七味唐辛子焼きが残っている間に、次の料理をてんこ盛り作る。
創造神が食べなければ全部俺が食べればいい事だ。
個人的には狼肉の七味唐辛子焼きよりも猪の生姜焼きの方が好きだ。
玉葱があればいいのだが、残念ながらニラのような野草しかない。
それに、生姜焼きとは言われているが、実際には生姜炒めだと思う。
七味唐辛子焼きを作った鍋を手早く洗って作る。
だがここでエンシェントドワーフのジェイミーが音もなくやってきた。
ドワーフと言えばドタバタしていて素早さが無いのではないのか?
エンシェントと呼ばれるほどの上位種は素早さまで得ているのか?
よだれを垂らしながら顔を寄せてくるのは止めろ、怖過ぎる!
しかたがないので、俺が食べていた狼肉の七味唐辛子焼きの皿を渡してやった。
だがそれだけでは満足できないようで、神像に御供えしているエルドビアのマグカップと焼酎のマグカップを殺気のこもった眼で見つめている。
「創造神様が飲みかけている酒を横取りして飲む気か?
そんな事をしたら、この世界の全ドワーフが呪われるのではないか?」
「騎士様、頼む、もうちょっとだけ飲ませてくれ!
誓った通り死ぬまで忠誠を尽くすから。
明日から馬車馬のように働くから。
どうか、どうか、焼酎と言う酒を飲ませてくれ、お願いだ!」
「しかたがない奴だな、飲んだ分だけ働くというのなら、俺は飲ませてやってもいいのだが、流石に神様が飲みたいと思っている酒は飲ませられないぞ」
俺がそう言うと、清酒を御供えしていたマグカップが光り出した。
これは、清酒ならジェイミーに与えていいというサインなのだろうか?
それとも、清酒を飲むから焼酎は与えていいというサインなのだろうか?
そんな風に考えていたら、清酒マグカップの光が強くなった。
とりあえずドワーフは無視して清酒をなみなみと注いでみた。
創造神は満足したのか、マグカップが光らなくなった。
試しに使っていないマグカップを手に持ってみたが、何の反応もなかった。
ジェイミーの期待のこもった視線が痛いくらいに突き刺さる。
創造神からのサインを見逃さないように、注意深くゆっくりと焼酎瓶を持つ。
想像神像にも御供えに使っているマグカップや皿にも全く反応がない。
ゆっくりと焼酎をマグカップに注ぐが、顔がつくほど近づいてきているジェイミーが邪魔でしかたがない。
「飲んでもいいが、一気に飲むなよ。
飲んでしまったら終わりだからな、わかっているな?」
「分かっている、わかっているから、早くくれ。
早く飲ませてくれ、頼む、お願いだ、意地悪しないでくれ!」
「誰が意地悪をしているというのだ!
全てのドワーフが創造神に嫌われないように気を使ってやっているのだぞ!
今自分がどれだけ危険な態度をとっているか分かっているのか?!」
「解かっている、判ってはいるが、我慢できないのだ!
ドワーフ族の酒好きは種族の特性だからしかたがないのだ。
悪いのはそんな特性をドワーフ族に与えた創造神の方だろう?
だから、な、早く焼酎を飲ませてくれ、頼むよ!」
「ならば、もう1つここで誓え。
焼酎を造るための蒸留器を明日作るとな」
「誓う、誓うから飲ませてくれ、もう意地悪しないでくれ」
よし、エンシェントと呼ばれるくらいのドワーフなら、最初に言っていた剣だけでなく、他の道具を作る能力もあるはずだ。
大きくて使い易い蒸留器があれば、味はともかく酒精の強い酒が造れる。
ドワーフなら味よりも酒精が強い酒を選ぶ気がする。
「これ1杯だけだからな」
ジェイミーも焼酎が残り少ない事は理解しているのだろう。
狼肉の七味唐辛子焼きはがっついて食べているが、焼酎はチビチビ飲んでいる。
俺はそれを横目に見ながら神像のマグカップにエールを注ぐ。
俺は酒が飲めなかったが、友人たちは生姜焼きにはビールと言っていたからな。
生姜焼きと一緒に供えたエールが一瞬でなくなった。
なくなっただけではなく、激しく明滅している。
急いでエールを注いでやるが、心の中に冷たく冷やす事ができたらと思ってしまったのがいけなかったのだと思う。
神像全体が光り出してしまった。
どう考えても氷結魔術や冷却魔術でエールを冷やせというサインだろう。
だが、俺には魔術を使うスキルがない。
俺に魔術スキルを与えなかったのも、像が光っている事を気がつかないくらい焼酎に夢中になっているドワーフ族の特性を決めたのも、創造神なのだ。
だが、料理と酒に夢中になっている創造神が、俺のスキルを操作したかもしれないと思って、脳内ステータス表を確認してみた。
『ロディー』
種族:ホモサピエンス
神与スキル:農民 ・レベル475
:自作農民・レベル106
:開拓農民・レベル342
付属スキル:耕種農業レベル212
耕作 レベル422
種蒔き レベル342
品種改良レベル342
農薬生産レベル342
農薬散布レベル342
選定 レベル342
収穫 レベル342
剣鉈術 レベル475
戦斧術 レベル475
:工芸農業レベル212
木工 レベル212
紡績 レベル212
織物 レベル212
:開拓 レベル342
伐採 レベル342
建築 レベル342
魔力生産レベル 1
魔力増幅レベル 1
:自作 レベル106
燻製 レベル 68
酒造 レベル 58
発酵 レベル 83
陶芸 レベル106
料理 レベル 57
一般スキル:戦闘術レベル9
剣術 レベル9
槍術 レベル9
戦斧術レベル9
弓術 レベル9
石弓術レベル9
拳術 レベル9
脚術 レベル9
柔術 レベル9
戦術 レベル9
馬術 レベル9
調教術レベル9
:魔術
:生産術レベル9
木工 レベル9
絵画 レベル9
習字 レベル9
算術 レベル9
料理 レベル9
刺繍 レベル9
裁縫 レベル9
大工 レベル9
石工 レベル9
「基本能力」
HP: 19285
魔力:1709432
命力:1348653
筋力: 13925
体力: 12884
知性: 19842
精神: 10899
速力: 9291
器用: 9270
運 : 9939
魅力: 9230
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