第8話:開拓農民

帝国暦1121年・神暦1021年・王国暦121年1月29日・ロディー視点

ロディー15歳


「……これを、こんな立派な城門を、たった一晩で造られたのですか?!」


 俺が再建した外防壁の城門を見てアルフィンが絶句している。

 まあ、当然の反応だと思う。

 このような立派な城門を一晩で造れるのは大工か工兵の集団だけだ。

 いや、切り倒した材木を乾燥させなければいけないから、誰にもできない。


「ああ、くわしくは話せないが、俺にはそのスキルがある」


 アルフィンはこれ以上はたずねられないと口を閉じてくれた。

 2人だけの生活ではこれだけの推察力はつかないから、物心ついてしばらくの間は、それなりの人数がこの里でくらしていたのだろう。

 数年前に作られたと思われる墓が数多くあったから、間違いないだろう。


「分かりました、騎士様のスキルをお聞きするのは失礼な事でしょう。

 ただ、父上様の埋葬方法を確かめさせてください」


 アルフィンが俺にスキルを聞き出そうとしないのは、領主である俺を怒らせるのを恐れれたのだと思っていたが、父親の埋葬方法の方が大切なのだな。


「この里の習慣を優先してあげたいが、亡骸がアンデットに変化するのは困る。

 今までこの里では埋葬した者がアンデットに変化した事はないようだが、どうやって埋葬していたのだ?」


「今までは一般神官スキルを習得していた者が祈りながら火葬していました。

 火葬した遺骨を土に埋める際にも神官スキルを得ていた者が祈っていました。

 今回も同じようにしたいのですが、よろしいでしょうか?」


 神官スキルか、それだけは会得できなかった。

 他のスキルは独学するか領民から学ぶ事ができたが、神官スキルは王家の許可のもとで神殿が独占しているからな。

 それに、俺はどうも神というモノを信用しきれない。


「ああ、それでかまわない。

 アルフィン嬢の好きな時に火葬してくれればいい。

 その気になったら声をかけてくれ。

 火葬に必要な薪は何時でも用意してあげる」


「……はい、ですが、まだしばらく考えさせてください……」


「そうか、好きなだけ悩むがいい。

 ただ、アルフィンは氷の魔術が使えないのだろう?

 だとしたら時は限られているぞ。

 厳しいようだが、アルフィンも御尊父が腐っていく姿は見たくないだろう?」


「……はい……」


 これ以上何か言うのは情が無さすぎる。

 いや、すでに言い過ぎたくらいだ。


「俺はこの里の防衛力を高めるために手を加えてくる」


「はい」


 俺はそう言うと愛馬を駆って東外城門に向かった。

 いや、これからは二ノ丸東城門と言おう、その方が俺にはしっくりくる。

 俺は二ノ丸東城門を出ると周囲の木々を手当たり次第伐採した。

 枝葉を落として一部の材木(丸太)は二ノ丸内に運んだ。


 魔力で鳶口を発現させて鉤部分を丸太に突き立てると、どれほど大きくて重い丸太でも軽々と運べることは、すでに何度も経験している。

 今回は伐採した木々の根の部分も鳶口で引っ掛けて掘り起こす。

 根の部分の大半は魔力鍬で肥料にするが、それ以外は色々と使い道がある。


 二ノ丸の外に残すのは新たな防壁にする長く太い丸太だけだ。

 丸太の太さには多少の差があってもいいが、高さだけは18メートルにそろえた。

 細すぎる前端部を切り落としてできるだけ隙間がないようにする。

 外防壁の外側に深さ3メートルほどの穴を掘り、丸太を太い方から落とす。


 木造の新しい外防壁から5メートル離した場所に穴を掘る。

 畦を作る要領だが、作物を作る畦とは比較にならない深さと広さだ。

 幅10メールと深さ10メートルの空堀から出た土は積み上げて土塁にした。

 丸太を支える土の深さは8メートル、外からの高さ15メートルの防壁が完成だ。


「ヒィイイイイイン」


 愛馬アールヴァクが昼飯ができたと呼んでくれる。

 だが愛馬アールヴァクが昼飯を作ってくれたわけではない。

 アルフィンが昼飯を作ったら愛馬がいなないて教えてくれる手はずになっていた。

 父親が死んで何もできない状態だったが、飯を作れるくらいには回復したようだ。


「大変な思いをした直後なのにすまないな」


 正直こんな状況の少女に何を話すのが正解なのか分からない。

 だが何も話さない訳にはいかないから、食事を作ってくれたことへの礼を言う。


「いえ、私こそ昨日から今朝にかけてろくに御礼も言わずに失礼しました」


「いや、ちゃんと礼を言ってもらっていたぞ」


「そう、なのですね、それはよかったです。

 正直何を言って何をしていたのか思い出せないのです」


「何度も言う事になるが、今回の事は年若い少女には耐えられない事だ。

 今までの事も、今話している事も、後で思い出せなくて当然の事だ。

 だから何も気にしなくていい、安心して好きにすればいい」


「ありがとうございます、騎士様。

 騎士様からお預かりした肉と塩を使って焼いてみました。

 騎士様のお口に合うような料理はできませんが、どうかお食べください」


「俺も年若くはあるが、それでも常在戦場の精神で鍛えられてきた。

 実戦訓練では野戦料理もよく食べていた。

 野獣肉に塩を振っただけの料理で10日過ごした事も多い」


「そうなのですね、安心いたしました。

 それにしても、この塩は信じられないくらい美味しいですね。

 普通の塩、と言っても、わたくしはこの森で作る塩しか知らないのですが、これは海で作る塩なのでしょうか?」


「ああ、確かにこれは海の水から作った塩だが、それだけではない。

 俺が色々な薬草や香草を試して創り出した香草塩の1つだ。

 調味料が塩だけしかないのはさびし過ぎるからな。

 ところで、この森で作る塩というのは、草を燃やした灰から作る塩なのか?」


「はい、森の草を燃やした灰を水で煮て作る塩です」


 そうだよな、塩なしでは生きていけないから、灰塩くらい作っていたよな。

 そうでなければ100年以上森の奥に隠れ住む事はできない。

 内陸部のこの地方では塩がとても高い。

 まして王家は塩を専売にして国民から軍費を搾り取っているからな。


「海水から作る海水塩と灰から作る灰塩では味がかなり違うからな。

 まして薬草や香草で風味付けした香草塩とは全く別物だ。

 これからはこの地で作った灰塩に、この地で採れる薬草や香草を合わせた、新しい香草塩を作ってみよう」


「香草塩ですか。

 そのようなモノを作り出すスキルがあるのですね」


「いや、香草を作るのはスキルではない。

 あ、いや、スキルなのかな?

 もしかしたら料理人スキルの1つなのかもしれないが、俺は一般スキルとして料理人をレベルアップさせただけだから、アルフィンにも作れるぞ」


 午前中は頑張ったし、今スキルがどうなっているか確認しておこう。

 

(脳内ステータス画面オープン)


 ……なんじゃこれは?!

 神与スキルの農民の下に開拓農民がついている?

 大項目の付属スキルではなく、同列のスキルだと!

 前世のラノベやゲームの設定にある上位スキルに転職するのとも違うよな?


『ロディー』

種族:ホモサピエンス

神与スキル:農民  ・レベル239

     :開拓農民・レベル106

 付属スキル:耕種農業レベル212

        耕作  レベル243

        種蒔き レベル238

        品種改良レベル238

        農薬生産レベル238

        農薬散布レベル238

        選定  レベル239

        収穫  レベル238

        剣鉈術 レベル239

        戦斧術 レベル327

      :工芸農業レベル212

        木工  レベル212

        紡績  レベル212

        織物  レベル212

      :開拓  レベル109

        伐採  レベル109

        建築  レベル106

 一般スキル:戦闘術レベル9

        剣術 レベル9

        槍術 レベル9

        戦斧術レベル9

        弓術 レベル9

        石弓術レベル9

        拳術 レベル9

        脚術 レベル9

        柔術 レベル9

        戦術 レベル9

        馬術 レベル9

        調教術レベル9

      :魔術

      :生産術レベル9

        木工 レベル9

        絵画 レベル9

        習字 レベル9

        算術 レベル9

        料理 レベル9

        刺繍 レベル9

        裁縫 レベル9

        大工 レベル9

        石工 レベル9


「基本能力」

HP:   3424

魔力:1823874

命力:1198327

筋力:   3497  

体力:   3522 

知性:  10087  

精神:   4599  

速力:   3498

器用:   3490

運 :   3491

魅力:   3490

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る