第4話


 DDDが「なりゆきを見ていろ」と言った通り、すぐに事態は変化した。隣村は王が新しく就任できなくなった。どういう仕組みかわからないが、誰も新しく王になれないらしい。もちろんまとめ役みたいなものは勝手にやったらいいのだが、王に与えられる特典が無いという。それだとやる意味がないし、そもそも村を維持する意味もない。




 佐々木が消息不明になったというニュースに対してはまるで無反応だったくせに、いざ王の機能が失われたとなると、うってかわって大騒ぎになった。一部ではすでに元の村を離れてこの竜胆の村に集まってきているらしい。たぶん、やがて隣村は消滅して飲み込まれるのだろう。この村か、または違う村によるかはわからないが。




 竜胆のことだし、戦争をわざわざ避けたりしないだろう。サクッと攻めてサクッと統治して、良い感じに併合しちゃうんじゃないかな。しばらく起きたことのない戦争というが、いざ起きてみたら随分あっけない。まぁそんなものか、人間のやることに異世界だろうとなんだろうと大差はない。




 佐々木――あのおっさん、俺にとってはただの将棋ドハマりのおっさんなのだが、王としては非常に優れていたらしい。散り散りになる村の未来を思うと罪悪感も否めない。だけどほら、これって使命だし。




……なんて逃避はしたくないが、DDDがまさに用意してくれた精神的な罠なのだろうな。別に「使命」と呼ぶ必要はない。「ミッション」でもいいし、「目標」とか「KPI/KGI」とか「今日のぶっころ」でもいい。わざわざお堅い表現を使っているのは逃げ道だ、何か特別感が演出されて、やる気を出しやすくするための。やりたいことだけやって生きていきたいよ、まったく。






「なあ妹よ、普段一人の時ってなにしてるの?」




朝飯を食べながら聞いてみた。ちなみにメニューは白米と味噌汁、漬物。変な異世界メシじゃない。




「お兄ちゃん、どうして?」




「なんとなくな、最近のお兄ちゃんは趣味で悩んでいるんだ。趣味ってものはいいぞ、やりたいことをやることだからな。誰かの意見を気にせず、理由もなく、なんとなく手癖で欲望のままにやっちゃうことだ。」




「うーんーーんん、趣味かぁ、うーんうーん」




 思ったよりも妹が悩みだしてしまった。もっとカジュアルでライトな感じの答えが聞きたかっただけなのに。




「なんか適当に思いついたやつでいいんだよ、やってて楽しいこと、飽きずにやれること、何かあるだろ?」




「うーん……人間観察?お兄ちゃん見てると飽きないよ」




「おお......素晴らしき兄妹愛だ。ちょとだけ根暗な趣味だが、お兄ちゃんとしてはそういう妹も認めたい。ちなみに飽きない理由はあるか?」




「理由?特にないかなぁ、なんとなく、ずっとやってるし」




「言わずともわかる、愛のなせる業だろう。妹よ、お前に褒美をやろう、現金だ。おこずかい1000円、大事に使いなさい」




「やったー!!お兄ちゃんありがとう、やっぱり共通の価値であるために何かの代理として機能する現金は嬉しいね!これで好きなものも買えるし!」




「おお、妹よ、相変わらずお前は価値観がハッキリしてて素晴らしいな。使い過ぎないように注意して使ってきなさい。」




「はーい、じゃあお兄ちゃん、行ってきまーす」




 現金を手に持った妹は嬉しそうだった。嬉しそうな人間を見ると、こっちも嬉しい気持ちになるね。それにしても趣味か。もちろん俺は無趣味、だって記憶もないんだから習慣もない。今まさに形作っているところ。人格形成中だから思春期と言っても過言ではない。




 そんなことを思ってたらもう時間になった。俺も家を出る準備をしてとぼとぼ城へ向かった。




「あざすあざす」




 門番の下級兵士x2に適当に挨拶して屋敷にずかずかと入っていく。もう顔を覚えられたのだろう。スムーズに謁見の間まで向かった。案内くらいして欲しいとも思うがな。親しき中にも礼儀ありと言うだろう。やっぱり異世界ってのはこういう部分が甘いんだよなぁ。人間の心がないっていうか、挨拶と礼儀だろまず大事なのは。そういうのが疎かなやつほど仕事も適当なんだよ。今日も茶は用意されてないしな。ハァ、異世界ではこの日本も荒廃したものだ。文明レベルだけではなく、人心も劣化も著しい。嘆かわしいぜ。






「相変わらず貴殿の独り言は長くて意味がわからないな。そんなに茶を飲みたいのか?」




「めっそうもない!細戈千足国を治める見目麗しき竜胆様の御所、僅かな水蒸気でも口にすれば天竺の甘露に優る味わいで御座います!」




「……貴殿、相変わらず気持ち悪いぞ!初対面で言うのは控えたが、こうして会うのも二度目だ。私からも率直に言わせてもらうが、貴殿からも率直な話を望む」




「ハハァ!かしこまり!」




 さすが俺の推してる竜胆だ。ストレートにちくちく言葉を剛速球で投げつけてくる。「気持ち悪い」はけっこう響くぜ。ここまで正確に精神を刺してくるなんて、そういうスキル持ちか?<悪口Lv2:クリティカル率20%上昇>みたいな?






「さて、貴殿は息災にしていたか?」




「ええ、もちろん、元気すぎて王の5~6人くらいぶっころに行っちゃおうかなって気持ちですよ」




「ふむ、そのことなんだが、貴殿に相談がある」




「なんですかね、竜胆様の仰ることならなんでも聞きますよ。なんでもは嫌ですけどね」




「どっちなんだそれは……。まぁいい、私は知っての通り率直な会話をし過ぎるきらいがある。冗談を解せなかったとしても許せ」




「いえなんかこういう癖なんで、趣味というか。意味わからないことを言うのが。なので全然大丈夫です。竜胆様はそのまま朴訥な感じでいて欲しいです。そっちのが絶対推せます」




「よくわからないが、貴殿は難儀な性格をしているのだな……」




 そういえば俺にも趣味あったな、わけのわからないことをペラペラしゃべる趣味。うわ最悪じゃん。どこで間違えたんだ俺は?改めて知る必要があるぞ俺の過去、親の教育の失敗を。




「さて、それで相談なのだが、話してもよいか?」




「もちろんです、どのような御用で?」




「ああ、お前の言うところの自称神に会わせて欲しい」




「ダメですね」




「ダメなのか」




「絶対に無理ですね、イヤというか」




「なぜだ」




「絶対に無理なので理由とかないです。ダメなのでダメです」




「嘘ではないようだな。そう言われると余計に会いたくなるが」




「自分、嘘ついたことないですから。とりあえずダメなので他の相談にしましょう」




「それは嘘だな」




「じゃあ『俺は嘘をつく』はどうですか」




「……うーむ、私の頭の中でかつてない感覚がやって来た。ふにゃふにゃの冷たい棒で脳をいじくられているような感じだ。気持ちが悪いから遊ぶのはやめてくれ」




「まぁとりあえずそれはダメなので、次の相談どうぞ」




「……何か理由があるのか?」




「ないですね、でもダメです」




「叶える願い事を一つ増やすとしても?」




「それでもダメですね」




「理不尽だぞ」




「世界はそういうものでしょ」




「ダメな理由を教えてくれなければ、納得しづらい」




「納得は必要ではないでしょう」




「いいや、私にとっては必要だ。それだけが重要で、それ以外はいらない」




「……価値観の相違ですね」




「世界はそういうものではなかったか?」




「……じゃあ、一応聞いてみます。でもたぶんダメです。技術的に可能だったらもう一回悩みます。それでいいですか?」




「ああ、とりあえずそれで納得しよう。少なくとも条件交渉まで進んだのだ。人類の進歩に等しい。感謝しよう、帰りに褒賞を持たせる」




「あざすあざす」




 さすが俺の推してる竜胆だ。価値観が強い。たぶんDDDに会うのは無理だと思っている、根拠はない。勘だ。あれは俺と結びついて三次元空間に存在している気がする。いやもちろん全知全能なのだから可能なわけだけど、そもそも何か違うんだよな、次元が違うというか、竜胆はあれを認識できるのか?でもそれも全知全能だから、竜胆を高次元存在にすれば可能に?やっぱりやだなぁ。いやな予感しかしない。






「もう一つ相談があるが、よいか?」




「はい、もちろん」




「実はな、隣村についてだが知っての通り解体の途上である。戦争が起きて負けて、王の機能が失われたのだからな。こんなことは歴史上初めてかもしれぬ。必然的に今回の事件は周辺から大きな注目を集めている。内政干渉して来ようとするやつらは思いつくだけでも片手では足りない」




「まぁそうでしょうね、俺はいまいち王の仕組みについて知らないですが、めったにないことは確かでしょう」




「そうだ、そこで貴殿への相談だ。まず貴殿に王の仕組みについて教える。その代わり、貴殿の能力の行使にあたって相談制にしたい。つまり王を誅する前に相談して欲しいということだ。基本的に止めることはしないつもりもないが、事前に予め知っておきたいのだ」




「……ということは、別に相談してもしなくても同じでは?例えば俺が突然めっちゃやる気を出して、村すべてを焼き払いたくなったらどうしようもなくないです?」




「それはそれで納得しよう。進言はするかもしれないが、止めようとはしないつもりだ。貴殿の能力によって他の王を亡ぼすことは恐らく可能なのだろう。だが、そうすると生まれるのは権力の空白だ。統治されていない地域が突然発生すると治安が悪化してしまう。それに備えたい」




「そしてあわよくば、兵を進駐させ、そのまま実質統治、と?」




「必要があればな。私は特に帝国的野心を持っているわけではないが、かといって見逃すほどお人よしでもない。よその王より良い統治を行えるならば、私が立候補するということだ」




「自信家らしい言葉で実に頼もしいですね。俺を暗殺部隊として使って、中央首脳部を麻痺させ、そのまま首を切り落として体を乗っ取るってことと同義でしょう。斬首作戦はきっとさぞ有効でしょう」




「好きに解釈してくれて構わない。誹りも受け止めるつもりだ。だが今回の戦争は明らかに非が向こうにあったから良かった。一歩間違えればこの村が集中砲火を食らっていたかもしれないからな」




「外交で綱渡りやってるってことですね。だから相談して欲しいと?」




「それもある」




「あとは獅子身中の虫である俺を、とりあえず動きだけでも把握しておきたいと?」




「否めない」




「正直ですね、竜胆様。いいですよ、基本的には相談します。ただし例外として、どうしても極秘裏に行わなければならない場合は勝手に動きます、事後相談になります」




「その条件は?」




「例外規定なので難しいですね、お互いの信頼としか。できる限り約束は守るが、守れなさそうならそれなりの理由をちゃんと持ってくる、ってことでどうです?相手が納得できそうな理由を用意できるなら例外も許可、できそうにないなら不許可」




「うむ、それならよい。確かに最も重要なのは信頼に他ならない。信義則を貴殿が大切にするというならば、私も大切にしよう。信頼とは相互のものだからな」




「ではこの努力義務を含む約束は締結ということで」




「宜しく頼む」




「で、俺が欲しい見返りは、王の能力についての知識です。これから俺はバシバシやっていかなきゃいけないんで、予め知っておきたいです」




「ああ、いいだろう……」




 それから竜胆は王の仕組み、自分が持っている特権的なスキルについても説明してくれた。……聞いた話はすべて、DDDがかつて言ってた通りだった。






・・・






 DDDはこの世界についてこのように説明した。簡単に言えば、この世界は頭のおかしいやつらが作ったVRゲームだという。




 製作者の名前は辻政信三世。北朝鮮が核ミサイルを撃ちまくったせいで第三次世界大戦が起きて、日本民族が絶滅する危機に瀕した。だが辻政信三世は、日本人の血を絶やさぬために遺伝子情報をブロックチェーン上で保管し、そこから人格を再現してアバター化して競わせ、来るべき未来に向けて最強の大日本帝国3.0をメタバースに用意しておこうと計画したのだ。




 このデータの改ざんが不可能なVRゲームでは、個々人の社会貢献、社会的評価によってトークンが発行される。これは市場に出回っている通貨とは違う。通貨はただの物を手に入れる手段に過ぎない。この世界でそれよりも重要なのは社会貢献から得られるトークンを使って、その個人のスキル、能力値などを成長させることができるシステムだ。社会貢献するソーシャルグッドな人物が、トークンを得てもっと成長して更に世界を素晴らしく改良していくだろう。




 このトークンを使用してスキルや能力値を得る仕組みは3体のAIが設計・保守・管理していて、人間は介在していないらしい。だから不正は起きようがない。




「Code is law.」




 決められたコード通り世界は設計され、その設計の通りに世界は動く。これ以上の公平は存在しない。正義と公正のVRMMOだ。




 完璧なインセンティブ設計に成功した……かのように思われた。だが失敗が起きた。この失敗についてはまた今度の話にしよう。




 そして竜胆が持っているような王の特権的なスキルとは、村を統治することによって地位と名声を得た人物が、大量獲得したトークンを使い、我が子に最高の「遺伝子」を付与することによって生まれる。次第に血は濃くなっていき、一般市民の数十倍のトークンで最高の為政者が形成される。




 佐々木のいた村で機能しなくなったのはこのシステムのことだ。あの村では統治によるトークンの付与が一切なくなった。




 ちなみに竜胆はこの仕組みを「王とは民からの支持によって生まれ、血と誇りによって統治される」と語ったが、ほとんど同様のことを指す。同じ事象に対しても見方が違えば説明はここまで異なる。竜胆の説明は現実の政治の仕組み、生活の実感に伴った説明で、ともすれば精神論的とも言えるが辻政信三世の思想をむしろ的確に実現するものとも言える。それに対してDDDの説明はシステマチックな話だ。竜胆とDDD、絶対に趣味合わないだろうな。




 ちなみに俺はDDDの話と竜胆の話、どっちの説明を信じていると思う?正解は「どっちも信じていない」だ。例えばある世界のある宗教は、この世界の背後には神の摂理があると語った。良いことをすれば天国に、悪いことをすれば地獄に行くシステムがある、と。そしてある宗教学者はこう語った。




「どちらにせよ天国と地獄の存在を信じていた方が得をするのだから、とりあえず信じるように」と。




 天国と地獄があるとすれば、がんばって働いて良いことをしようと心掛けるはずだ。もしも真実、天国も地獄もないとしても、良いことをするなら良いじゃないか。つまりどうやっても得しかないから背面世界を信じた方が良いとする説だ。メリットとデメリットがわかりやすくて素晴らしい。でも俺はこう考える。もっと性格の悪い神がいたらどうなんだ?




 俺が神だったら、こういう設計をしてみたくなる。良いことをしたやつをクソつまらない世界に異世界転生させ、悪いことしたやつをクソおもしろい世界に異世界転生させる。良いことと悪いことを比べたら、おもしろいのはたいてい悪いことの方なのだから合理的だろう。つまらないが治安の良い天国とおもしろいけど治安の悪い地獄、それぞれに住み分けもできているし、住民の思想傾向も合ってるだろうからそこそこ良いインセンティブの制度じゃないか?




 で、話はズレてしまったが。俺は世界がどうであるかなんてどうでもいい。この世界がVRゲームでもそれを知る方法なんてないし、血と誇りの熱血国家運営異世界モノだったとしても、やっぱりこれを正しく知る方法なんて無い。どっちの世界観だと俺は得をするだろうか?宗教学者ならなんて答えてくれるかな。よくいる異世界に転生したやつが必死に元の世界に戻りたがるのって、俺からすれば意味わからないし、反対に、新しい異世界で金儲けしてハーレム作ろうとするのも虚しくないか?と思ってしまう。




 性格の悪い神の存在、それがありえるとすれば、どうして何を信じられるだろうか。




 ちなみに異世界に来て1週間くらい経ったある日、ウォシュレットのないトイレと飯の貧相さに嫌気がさして、チョンマゲがない以外ほとんど江戸時代のこの世界からおさらばしたくなった俺はDDDに聞いてみたことがある。




「なあ、DDD、俺を元の世界に戻すことってできるか?」




「君よ、もちろん可能だよ、私に言いなさい、いつでも君を戻そう」




 簡単にできるらしい。でももっと詳しく聞いてみたんだ、その時の意識はどうなる?俺は同じ人物か?心は?魂は?というか俺は誰だよ?……答えは考えたくもない。だが何にせよ、俺は別に元の世界についての記憶も特にないし、アイデンティティもそっちに無いのだからわざわざ戻る理由がない。




 異世界転生2回目みたいなものじゃないか。いくら流行っているからといって異世界転生ばかりにハマってたら頭おかしくなるぞ。いいかい、坊ちゃん嬢ちゃん、異世界転生モノは人生に1度ハマったらもうそれでいいんだよ。……ハシカみたいなものさ。






・・・






 竜胆の説明、DDDの説明、どちらもこの世界の仕組みを写し取ったものだ。まぁ結局、俺のやることは特に変わらないのだけどね。




 「王を殺し尽くせ」か。竜胆もこの方針には基本的に賛成のようだ。なぜならその方が世界をもっと良くすることができる可能性があるから、と。自分ならもっと上手くやれるという自信のもと、この世界を平定するのもやぶさかではない腹積もりだ。




 親が煮詰めに煮詰めた最強のブルーブラッド、遺伝子という名のチートスキル。どのくらい強いのか聞いたらこの村の全員を演習場に集めて単純に戦ったなら竜胆が勝てるという。この公式チートお嬢様は反則すぎる。俺なんて真正面から戦ったら弓でスナイプされて瞬殺じゃないか?敵対しなくて良かった。




 逆に言えば、単純な武力で肉壁になってくれる竜胆はこの上ないほど俺にとって最優良パートナーだ。




「竜胆、お前のことを大切にするよ」




「はあ?なんだ突然、気持ちの悪い。なんだその差し出した拳は」




「これは俺の入信している新興宗教団体の儀式なんだ。幸福の友の霊の会という団体で、怪しいんだが、ねずみ講とかよりは健全でな。新しい信者を勧誘すると地位が上がるんだが、そこで行われている契約の儀式がこれなんだ。握り拳をお互いにぶつける。これで俺とお前は魂の友になる」




「絶対にやりたくないな、それは」




「頼むやってくれ、やってくれないと俺は呪いで死ぬことになっている。数字を数えるぞ。5、4、3、」




「わかった、わかった、やるからやめろ、死ぬな。こうでいいか」




互いの握り拳をぶつけて友情を誓い合った。




ピロん。




「隠し実績が解除されました――『竜の姫』」




 これも実績の対象なのかよ。隠し実績ってなんだ?王を殺すのと違う実績があるってことか?相変わらずこの世界はわけわからないな。




 ……とか思ってたら、竜胆の拳は俺を3メートルほど吹き飛ばしていた。拳同士のぶつかりでここまで威力を発揮するとは、公式チートスキルはヤバすぎるだろ、と思いながら俺はしばらく床に倒れ伏すことになったのだ。




「おい、お前、大丈夫か?何をやってるんだ……まったく」




 背中から肺へ強く衝撃を受けて呼吸すらできず、死にかけの蝉みたいに仰向けでピクピク動く俺。それを見て笑っている竜胆。笑顔を初めて見た気がする。近寄ってきて傍に正座をすると、その膝に俺の頭を乗っけた。異世界で初の膝枕体験。これこそ実績解除じゃね?と思ったが、やってきたのは強烈な吐き気と眩暈。混濁する意識。ああそうか、喉が詰まって死なないように頭を高くしてくれたのか。その後、俺は庭に放り出されて鯉にマウス・トゥ・マウスで餌をやることになった。




これは初キス実績解除か?






・・・


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