【台本】インターラプション

茶屋

【台本】インターラプション

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■登場人物

  アリス(♀)23才仮:会社の女性社員。

  ケイン(♂)25才仮:会社の地下駐車場・警備員。

  ギース(♂)30才仮:会社の男性社員。

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■配役 (2:1:1)


  アリス(♀)(L106):

  ケイン(♂)(L 45):

  ギース(♂)(L 46):

  N  (両)(L 58):


  ※L**:セリフ数

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■台本


 <あるオフィスビルの地下駐車場>


 N   :アリスが残業を追え地下駐車場へ降りてきた

      セキュリティドアを開け、自分の車に向かって歩いていく


     (反響するハイヒールの音:コツコツコツコツ)


 アリス :「ふぅ…。」


     (疲れた顔をして、大きめの溜息をつく)


 アリス :「またこんな時間だわ。あ、携帯…。」


 N   :アリスは立ち止まり、服のポケットを探り始める。

      そして、ハンドバッグの中の携帯電話を見つけた。


 アリス :「あぁ、良かった。忘れてきたかと思った。」


 N   :安堵のため息を小さく吐くとまた歩き出した。

      コツコツとハイヒールの音が反響する。 


     (ハイヒールの音:コツコツコツ)


 アリス :「…!?」 


 N   :道の先に倒れている警備員を見つけて驚く


     (しばし立ち尽くしているが、周囲を警戒しながら警備員の男に近寄る)


 アリス :「あの…大丈夫ですか?」


 ケイン :「…う…うう。」


     (頭を押さえながら、身体を重そうに起こすケイン)


 ケイン :「あぁ…つー(痛みをこらえ)。ふぅ~…。」


 アリス :「どうしたんですか?」


     (ケインは、ちらりと彼女を見る)


 ケイン :「…わからない。突然、後頭部に何かがぶつかって…。」


 N   :二人が周りを見ると、壊れた監視カメラが転がっていた。


 アリス :「あれは?」


 ケイン :「わからない。…俺じゃない。」


 アリス :「警察を呼んだほうがいいんじゃないかしら?」


 ケイン :「ああ、そうだな。後は俺が…アンタは気をつけて帰ってくれ。」


 アリス :「どうも、それじゃ…。」


 N   :そう言うと、アリスは自分の車へ向う。

      キーを取り出し、ドアのロックを開錠して車に乗り込むと

      出入口に向かって車を発進させた。

      しかし、車は出入り口を目の前にして甲高いブレーキ音を鳴らした。


     (車のブレーキ音:キキッ!)


 アリス :「ちょっと。どうしてシャッターが閉まってるのよ。もう!」


     (少し苛立ちをみせ、ハンドルを両手で叩く)


 N   :自分の駐車スペースに車を停めてから降りると

      足早に警備室へ向かった。


     (ハイヒールの音:コッコッコッコッ)


 アリス :「はぁ。ついてない。」


     (警備室の扉をノックする:コンコン) 


 アリス :「あのー。すみません。…すみません?」


 N   :警備室の扉をノックするも返事がない。

      アリスはドアノブをひねって扉を開けた。


     (扉を開ける:ガチャ) 


 アリス :「…誰か居ませんか? あのー…。」


 N   :その時、警備室でモニターしてる

      監視カメラの一つから大きな音がした。


     (カメラが破壊される音:ガン!ガチャ!ザー)


 アリス :「!? なに!?」


 N   :同時に、警備室の外から何かの破壊音が聞こえてきた。


     (破壊音:ガチャン)


 アリス :「っ!…なに?なんの音?」


 N   :アリスは、警戒しながら静かに扉を開けて確認するが

      特に変わったものは見当たらない。

      不安に駆られて、アリスはセキュリティドアの方へ走りだした。


     (ハイヒールの音:コッコッコッコッ)

     (次の瞬間、角で何かと激しくぶつかる:ドン)


 アリス :「キャッ!」


 N   :何かにぶつかったと思ったすぐ後。

      アリスは後頭部に衝撃と痛みを感じ、そのまま意識を失った。


     (カバンの中身が地面に散らばる) 


***** 時間経過 *******************************************************


 <警備室>


 N   :しばらくして、アリスは警備室のソファで意識を取り戻した。


 アリス :「ん、んん…。」


 ケイン :「気がついた?」


 アリス :「わたし…。」


 ケイン :「大丈夫か?」


 アリス :「えっと…何かにぶつかって…。」


 ケイン :「ああ。警備室の前に倒れていたが、何かあったのか?」


 アリス :「わからないわ。急いでいたら、突然何かにぶつかって…。」


 ケイン :「何か?」


 アリス :「ええ。…そう! 外で何か音が聞こえて。」


 ケイン :「音? 確かに、何かの金属音が聞こえたけど。…アンタか?」


 アリス :「私じゃないわ!」


 ケイン :「そんな大声出さなくても、聞こえるよ。」


 アリス :「あ…そうだわ、カメラ。」


 ケイン :「カメラ?」


 アリス :「ええ、そうよ。あのカメラがおかしくなって…!」


 N   :アリスが監視カメラのモニターを指差す。

      ケインは、その先を目で追った後、再びアリスへ顔を向ける。


 ケイン :「監視カメラ?」


 アリス :「そうよ。私が部屋に入ってきた時、突然凄い音がして…。

       そのモニターを見たら、映像が乱れた後…

       何も映らなくなっていたわ。」


 ケイン :「何か映っていたのか?」


 アリス :「いいえ…私が見たときには何も。」


 ケイン :「そうか。」


 アリス :「だって! すぐに消えちゃったから!」


 N   :アリスは勢いよく立ち上がり、息を荒げる。


 ケイン :「わかった。落ち着いて…わかったから。」


 アリス :「…あぁ、ごめんなさい。」


 N   :アリスは頭の後ろを抑えるようにして、ソファに腰を落ろす。

      ケインがコーヒーを注いで、ソファの前にあるテーブルに置く。 


 ケイン :「コーヒーでいいか?まあ、コーヒーしかないんだけど。」


 アリス :「ありがとう…。」


 N   :ケインは、デスクに戻ると無言のままモニターのスイッチをいじる。

 

    (スイッチ音:カチ、カチッ)


 ケイン :「ふむ…。」


 アリス :「そう言えば、警察は!? 警察には電話したんでしょ?」


 ケイン :「警察?…いいや。」


 アリス :「え?どうして?!」


 N   :ケインは、アリスの方を向かずに話し続ける。


 ケイン :「状況が良く分からなかったし。確認してからにしようかと。

       それに、電話するなら警察じゃなくて…。」


 アリス :「いいわ。私がする。」


 N   :アリスは、信じられないといった様子でかぶりをふる。

      そして、足元にあったカバンを取り、携帯を探し始めた。


 ケイン :「……。」(ため息)


 アリス :「っ!?」


 N   :取り出した携帯は、見るも無残な姿になっていた。

      それを目にしたアリスの表情もそれに匹敵するほどだった。


 アリス :「なに!?どうしてこんなことに?」


 N   :ケインが、煩わしそうにアリスの方をチラリと見る。


 ケイン :「どうしたんだ?」


 アリス :「誰がこんなことを…。」


 ケイン :「何?」


 アリス :「…! もしかして、アナタなの?…私の携帯を壊したの?」


 N   :アリスは、苛立ちと怒りを隠すことなく、思ったことを言った。

      しかし、それは失言だったと気付いた時には遅かった。


 ケイン :「…なんで俺が?知らないよ!」


 アリス :「…あ、ええ。そうね。悪かったわ…。」


 N   :アリスは目線を外し。携帯電話に電源が入らないことを

      確認した後、カバンの中へと戻した。


 アリス :「…そうだわ、えーと。」


 ケイン :「ケインだ。」


 アリス :「ああ、ケイン。お願いなんだけど。

       携帯電話を貸してもらえないかしら?」


 ケイン :「…悪いな。持ってないんだ。」 

 

 N   :ケインは、アリスに一瞥をくれることもなく淡々と言った。


 アリス :「…え?持っていない…って言った?」


 ケイン :「ああ。」


 アリス :「じゃあ、どうやって連絡を取ろうとしたの…?」


 ケイン :「最初は携帯電話で連絡するつもりだったんだけどさ~。」


 アリス :「…つもりだった?」


 ケイン :「失くしたんだよ。携帯を。」


 アリス :「いつ?」


 ケイン :「わからないけど。

       …持ってきてたはずなんだけどなぁ。気を失ってた時かな?」


 アリス :「はぁ!? それって…盗られたってこと?」


 ケイン :「わからないよ。勘違いしてて、家に忘れてきただけなのかも。」


 N   :ケインがチラリと、警備室の隅にある壊れた監視カメラを見る。

      アリスはその彼の行動に気付く。


 アリス :「他に電話は?」


 ケイン :「ん…。」


 N   :ケインは、アゴで警備室の電話を示した。


 アリス :「あるじゃない!」


 N   :アリスは慌てて立ち上がり、受話器に手を伸ばして取り上げる。


 アリス :「…。え? そんな!?」


 N   :忙しく電話のスイッチを叩き、何度も掛けなおしているようだ。

      ケインはアリスをよそにTVを観ていた。

      その時、ぼそりと独り言が聞こえた。


 ケイン :「この日を待っていた…。」


 アリス :「え!? 今…。」

 

 N   :何て言ったの?

      そう、アリスは聞き直そうとしたが言葉を飲み込んだ。


 ケイン :「ん? 通じないだろ。たまに故障することもあるから。

       そのせいだと思うんだけど…タイミングが悪いよな。」


 アリス :「…そ、そう。」


 N   :アリスは、さっきまでの興奮が嘘のように、

      すっかり口数が減ってしまっていた。

      そして、ソファ側に戻るとカバンを取り上げる。


 ケイン :「どうしたんだ?」


 アリス :「…私、オフィスの方に戻ってみるわ…。」


 ケイン :「…そう。分かった。」


 N   :アリスは扉を開け、セキュリティドアへ向かった。

      ゆっくりした足運びが警備室を離れるほど次第に早くなる。


     (ハイヒールの音:コツコツコッコッ) 


 アリス :「おかしいわ…絶対に何かおかしい。」


 N   :セキュリティドアの前で、カードを装置に通す。


 アリス :「…あれ? どうして。なんで開かないのよ!」


 N   :一度装置を叩き、二度、三度とカードを通す。


 アリス :「どうして…どうしてよ!!!」


     (発狂気味にドアを叩く:ガン) 


 N   :その時、再び破壊音が地下駐車場に響き渡った。


 アリス :「っ!!」


     (驚いて身をすくませ、口を手でふさぐ)


 ケイン :「大丈夫か?」


 アリス :「キャッ!」


     (突然の声に短い悲鳴を上げる)


 ケイン :「…どうした?」


 アリス :「え、いえ。どうして、アナタここにいるの…?」


 ケイン :「ハハ。どうしてって。音が聞こえたから。」


 アリス :「そう…そうね。私も聞いたわ。」


 N   :乱れた息を整えながら髪をかきあげた。


 ケイン :「おい、本当に大丈夫か?」


 N   :ケインがアリスを心配してか彼女に手を伸ばす。


 アリス :「ええ、大丈夫!だから触らないで!」


 ケイン :「……。」


 アリス :「…大丈夫。」


 N   :ケインは両手を挙げるジェスチャーをして、ゆっくり距離を取る。


 ケイン :「わかった。俺は様子を見てくるから、

       君は警備室に戻っていた方がいい。」


 アリス :「ええ、分かったわ。ありがとう。」


     (二人は別れる)


***** 数分経過 *******************************************************


 <警備室>


 N   :数分後。アリスは先ほどのソファに座り、

      飲みかけのコーヒーを口にしていた。


 アリス :「…ふぅ。」


 N   :突然、警備室の扉が開いた。


      (扉の音:ガチャ)


 アリス :「っ!」


 ギース :「!?」


 N   :二人は互いに牽制しあいながら見つめ合う。

      そして、絞り出すようにアリスが言葉を発した。


 アリス :「…誰?」


 ギース :「それはこっちのセリフだ。なにやってんだ、こんなところで。」


 アリス :「それは、いろいろあって…。」


 ギース :「どう見ても警備員って感じじゃないけど。」


 アリス :「ええ、私はここの上で働いてるわ。」


 ギース :「そうか、私も同じだ。」


 アリス :「どうやってここに?」


 ギース :「来ちゃ悪かったか?」


 アリス :「そういう意味じゃなくて。

       …だって、セキュリティドアは開かなかったはずなのに。」


 ギース :「ん?それは分からないけど、

       中から出てくる時には、あのセキュリティは関係ないはずだ。」


 アリス :「あ…そういえば、そうね。」


 ギース :「そんな話をしている場合じゃないんだ、早く逃げた方がいい!」


 アリス :「え?どうしたの?」


 ギース :「頭のおかしい警備員に襲われた!」


 アリス :「警備員…。」


 ギース :「ああ。シャッターが降りていたからおかしいと思って来てみたら、

       途中で奴が監視カメラを壊して歩いているのが見えたんだ。」


 アリス :「そんな!?」


 ギース :「声を掛けたら金属バットで殴られた!

       なんとか反撃したが、逃げられてしまった。」


 アリス :「っ!」


 ギース :「とにかくここは危険だ。逃げた方がいい!」


 アリス :「そ、そうね。

       …でも、シャッターが閉まったままだし、ドアも開かないのよ。」


 ギース :「シャッターを開ける鍵があるはずだ…。」


 アリス :「分かったわ! この部屋を探せばいいのね?」


 ギース :「そうだ。だが、アイツが持っていたら…出られない。」


 アリス :「…。」


 ギース :「とにかく探そう!」


 N   :二人は手分けしてシャッターの鍵を探し始める。

      アリスは、操作机の上、引き出しを探し始めた。


 アリス :「…ん?」


 N   :アリスは、机の上の新聞が目に付いた。

      番組欄のある番組枠に赤い丸がついていた。

      荒々しく、新聞紙を払いのける。


     (新聞紙の音:ガサガサ)


 ギース :「あった!」


 アリス :「あった?」


     (壁掛けのキーケースが観音開きで開け放たれていた)


 ギース :「ああ、これだ。タブに”シャッター”って書いてある。」


 アリス :「やったわ!さあ、行きましょう!」


 ギース :「ちょっと待ってくれ。」


 アリス :「え、なに?」


 N   :ギースが監視モニターの前に歩み寄る。


 ギース :「奴が居ないか、モニターで確認してからにしよう。」


 アリス :「でも、壊されているんじゃ…。」


 ギース :「数台は生き残っているから、少しは役に立つだろう。」


     (監視モニタを覗くアリス)


 アリス :「居ないみたいだけど…。」


 ギース :「くそっ。出入口が見えない!」


 アリス :「待ち伏せ…?」


 ギース :「どうだろうな。可能性はあるかもしれない。」


 アリス :「警察を呼びましょうよ!アナタは携帯持っているんでしょう?」


 ギース :「……。」


 アリス :「どうしたの?」


 ギース :「それが、私のはバッテリーが切れてしまっていてね。」


 アリス :「そんな…。なんて日なの……。」


 ギース :「とりあえず行こう。まず、車に乗って出入口まで向かうんだ。」


 アリス :「分かったわ。」


 ギース :「私の車で送ろう。」


 アリス :「いいえ、大丈夫。自分の車で帰るわ。」


 ギース :「離れない方がいい。…よし、それなら。

       君の車で脱出することにしよう。運転は私がする。」


 アリス :「え?私は大丈夫よ。」


 ギース :「君を放ってはおけないよ。万が一という事もある。」


 アリス :「…わかったわ。車のキーよ。」


     (ギースに車のキーを渡す)


 ギース :「良し。じゃあ、一気に車まで走るぞ。」


 アリス :「わかったわ。」


     (扉を静かに開けて左右を確認するギース)


 ギース :「3…2…1。行くぞ!」


     (合図と共に走り出す)


 N   :合図と共に走り出した二人。

      ギースは一目散にアリスの車を目指し、

      預かったキーでロックを開錠し、手際良く車に乗り込んだ。


     (駐車場に響くハイヒールの音:コッコッコッコッコ)

     (車のエンジンのスタート音:キュキュキュ…ブルン)


 アリス :「はぁはぁはぁ…。」


 N   :車中から助手席の扉を開けるギース。

      やや遅れて来たアリスが車に乗り込む。


     (乗り込むアリス)

     (車の扉の音:バタン)


 ギース :「行くよ?いいかい?」


 アリス :「ええ!」


     (走行中の車の音:ブーン)


 ギース :「出入り口に着いたら私はシャッターを開けてくる。

       君は車の中で待っていてくれ。」


 アリス :「わかったわ。気をつけて!」


 ギース :「何かあったらクラクションを鳴らすんだ、いいね?」


 アリス :「ええ!」


     (ブレーキ音:キッ!)


 N   :アリスの車が再び出入り口の前で停まる。

      出入り口のシャッターは、先ほどと同じく閉じたままだ。


 ギース :「行ってくる。」


 アリス :「……気を付けて。」


 N   :ギースは車を降りて、シャッターの操作盤に向かって歩いていく。

      アリスは、心配そうに見つめている。

      そして、シャッター用のキーを差込み操作すると

      シャッターが音を立てて開き始めた。


     (シャッターの動く音:ガシャガシャガシャ)


 N   :シャッターが動作したことを確認すると、

      足早に車へ戻り乗り込むギース。


     (車の扉の音:バタン)


 ギース :「ふう。」


 アリス :「早く…早く開いて…!」


 ギース :「…。」


 N   :ギースがサイドミラーをチラリとみて後方を気に掛ける。

      アリスも気になって後ろを振り返ろうとする。


 ギース :「もうすぐシャッターが開く、前を向いてろ!」


 アリス :「え?ええ…。」


 N   :すぐに向き直るアリス。

      シャッターの高さが、車高を越えた。その時。

      ギースの掛け声て共にタイヤが悲鳴を上げながら車が発進する。


 ギース :「行くぞ!」


     (車の急発進:キキキ…ブーン)


 アリス :「きゃっ!」


     (車が揺れてこすれる音:ゴスン)


 ギース :「よし、外まで出れば大丈夫だ。」


 アリス :「はぁ……。」


 N   :安堵するアリスの深い溜息が漏れる。


***** 車中帰り道 *******************************************************


 <帰路についた、アリスの車の中>


 N   :駐車場を出た後、車は走り続けている。

      助手席でアリスは考え事をしていた。


 ギース :「落ち着いた?」


 アリス :「ええ…。」


 ギース :「とりあえず、一安心だ。」


 アリス :「そうね。助かったわ…。えっと…。」


 ギース :「私の名前か? ギースだ。」


 アリス :「ギース、ありがとう。本当に助かったわ。」


 ギース :「いいや。気にすることは無いさ。」


 アリス :「警察に行ったほうがいいんじゃないかしら?」


 ギース :「それは私に任せてくれ。大丈夫…君の事は私が守る。」


 アリス :「…。」


 N   :アリスはその時、フッと警備員のことを思い返していた。

      地下で見たもの、体験したことが次々と浮かび上がる。


***** アリス回想 ******************************************************* 


 ケイン :「わからない。…俺じゃない。」


 N   :突然、壊れた監視モニター。


 ケイン :「この日を待っていた…。」


 N   :番組欄に赤い丸がついている新聞。


 ケイン :「失くしたんだよ。携帯を。」


***** 車中 ************************************************************* 


 N   :運転中のギースは、そんなアリスの様子を気に掛ける。


 ギース :「アリス?」


 アリス :「え。あ、いいえ。なんでもないわ。」


     (その時、ふっと気付いたアリス)


 アリス :「あ…えっと、ギース?」


 ギース :「ん? なんだい?」


 アリス :「あの…聞きづらいんだけど…。どうして私の…。」


 N   :その時、ありえない音が車内に響いた。

      それは…携帯電話の着信音だった。


     (携帯の着信音:ピリリリリリ…ピリリリリリ…)


 ギース :「…どうしたんだい?」


 ギース :「アリス。」


     (空撮:走っていく車と共に、アリスの悲鳴が遠ざかる)


 N   :二人を乗せた車は高速道路を走りぬけ、夜の闇へ消えていった。

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