第49話

 5階までコンスタントにフロアを進んでいく私たち。相変わらず、攻略してない隠し部屋を潰していく。おかげで、色んな宝石や鉱石類が集まって、ホクホクだ。特に、ダイヤモンドの原石が出てきたとたん、パメラ姉様の目の輝きたるや……一応、パメラ姉様も女子だったんだね、と、ちょっと思った。

 各フロアのセーフティーゾーンでは、1階での件からか、腫物を触るような扱いになった。余計なちょっかいをかけられなくなったのは、いいことではある。おかげで、結界をはった状態にしておけば、全員で森の家に転移することができるから、大助かりだ。


 そしていよいよ6階に向かう。ここまで、だいたい1週間。たぶん、普通の冒険者パーティだったら、この短期間ではここまでは来れなかっただろう。


「あら。ここは、そんなに広くないかも」


 地図情報を見て気が付く。いつもの地図の半分くらい。それでも、十分に広いといえば広い。


「その代わり、隠し部屋はないみたいだわ」

「あら、じゃあ、今までみたいに、ウハウハってわけにはいかないわね」

「そろそろ、本来の目的の素材採集に戻れってことじゃないか?」


 イザーク兄様に指摘されて、みんなで苦笑いする。


「そういえば、先行している冒険者パーティがあったと思ったけれど、彼らはどうしたのかしら」

「戻ってきてる可能性もあるけど……ミーシャの地図情報でわかる?」


 今までのセーフティーゾーンでは、彼らの噂話は聞こえてきてはいたものの、本人たちとはまだ遭遇していない。


「ん~、それらしい点はないけど……今までよりも、魔物との距離が近づいてるかな」


 ここまでずっと、魔物と遭遇しなかったので、ただひたすらに進むだけだった。しかし、このフロアからはそういう訳にはいかないらしい。


「いよいよね!」

「ヒャッホー!」


 ……よっぽど、戦いたかったらしい双子は、テンション上がりすぎ。

 私からは姿は見えないけれど、双子は何やら察したのか、どんどん先行していってしまう。


「イザーク兄様は、いいの?」

「私は、ミーシャを護ることのほうが大事だからね」

「はいはい、ありがとう」


 ご機嫌なイザーク兄様といっしょに、双子の後を追いかける。

 魔物さんたち、双子のストレス発散の相手、ご苦労様。

 追いつくころには、魔物本体は消えて、ドロップされた物を拾ってるし。どんだけ瞬殺スピードが早いんだか。

 パメラ姉様が手にしているのは、抱えるほどの肉の塊に見える。赤身が多そうだ。


「うふふ、まさかのミノタウロス出たわ!」

「思ったよりも小柄なのだったけど、いい肉を落としてったね」

「ミーシャ、今日は久々にステーキにしない?」

「はいはい」


 キャッキャッと喜んでる双子をよそに、私はもう一度地図情報を確認する。

 7階へ向かう階段があると思われるのは、この道の先をずっとずっとずーっと行って、突き当りを左に曲がった部屋のようなのだけれど。右に曲がった方にも部屋があるようなのだけれど、その部屋に青い点が3つ、いきなり現れた。


「うん? パメラ姉様!」

「何?」

「あの、これって何だと思う?」


 突如として現れた青い点。たぶん、冒険者パーティだと思うのだけれど、いきなりすぎる。


「可能性としては、転移陣かな」

「どっからの?」

「ダンジョンの入口にはそんなのなかったし、説明もなかったよな」


 あの時点で6階への階段があったというだけだった。もしかして、先行組がすでにもっと進んでいて、そこから戻ってきたとか?


「気になるんだったら、見に行けばいいじゃない」


 たぶん、私よりもパメラ姉様の方が、だよね。

 私が否定する間もなく、双子はすでに走り出していた。

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