第48話
嬉々として自分のバッグから、2,30cm程の長さの筒を取り出すニコラス兄様。まるで置くタイプの花火みたいな感じだ。もしかして、火花が出たりして。
「もしかして、それが魔道具?」
「そうそう、これをテントの外側の少し離れた四隅に置いて、起動させるんだって~」
置くたびに何やらいじってスイッチらしきものを押していくが、特に何も変わった感じがしない。ちゃんと動いているのだろうか。
「でぇ、最後の1個……これ起動させて完了らしいから、一度、みんなテントの中に入って」
素直に中に入り、様子を見る。
「よし、起動」
その言葉と同時に、シュワッと半円形の虹色を帯びた透明な結界が現れた。
「おおお」
「なんだ、なんだ」
近くで様子を見ていた冒険者パーティの面々がざわつき出す。
「これなら、私の結界でもよくない?」
私の結界は無色透明だから、見た目だけでは結界を張っているとは気付かない。むしろ、これの方が注意喚起できるのかもしれない。
「ふっふっふ、実はこれ、結界の機能だけじゃないんですね~」
ニコラス兄様の悪そうな笑顔に、ヤバそうな機能がついていることは予想ができる。
その機能を確認したいらしいニコラス兄様を残して、私たちは森の家に転移した。万が一にも挑戦するお馬鹿さんたちの無事を祈る。
翌朝、戻ってみたら、なかなかの光景が目の前に展開されている。
「……馬鹿がこんなにいるとはね」
私たちのテントの結界越しに、黒こげの人がゴロゴロと転がっている。黒こげすぎて、どこの誰ともわからない。周囲を見ると、ほとんどの冒険者パーティがすでにいなくなっている。当然、『金ぴかの鉄槌』とかいう連中のテントもなくなっている。
セーフティーゾーンとはいえ、仲間を放って逃げるとか。所詮、一時的なものってことなのかもしれない。
「うーん、ちょっと反撃のレベル上げ過ぎだったかなぁ……でも、成功?」
のんきにサンドイッチを食べながら外の様子を見ていたニコラス兄様は、結界の魔道具をオフにしていく。
なんでも、昨夜深夜になってから、とんでもない叫び声で飛び起きたのだという。何事かと思ったら、目の前がこの状態になっていたのだとか。
「これさぁ、普段はただの結界だけなんだけど、攻撃されると反撃モードになるんだって」
「反撃……てことは、この人たち、うちらのテントに攻撃してきたってこと?」
「だねー。ただ触れるくらいじゃ問題なかったはずなのにさ。それも雷撃とかさ、ほんと、馬鹿だよねー」
楽しそうなニコラス兄様に、顔が引きつりそうになった。
どうも、その反撃もレベル設定ができたらしく、MAXに設定したそうだ。
……自業自得とはいえ、ニコラス兄様、やりすぎでは。
「もともとは、魔物対策だったらしいんだよね。ほら、これが魔物だったら、狩りに行かなくてもいいわけじゃん?」
「これ、一応、人だから……それに、一応、生きてるんだよね」
「たぶんね」
仕方がないので、治癒の魔法をかけた。あくまでも、怪我に該当する部分だけ。ちりちりになった髪の毛とか、ボロボロになった服とか防具とかは、放置だ。
「この人たち、戻れるのかしら」
「そこまで気にかけてやる必要はないだろう」
イザーク兄様が、なかなかに厳しい。
荷物を片づけた後、私たちはさっさとセーフティーゾーンから出て、次のフロアに行くことにした。
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