第47話

 ぞろぞろとテントから冒険者たちが現れた。ずいぶんと大人数で攻略していること。いや、このフロアで採れる鉱石狙いか。でも、このフロアには大したモノはなさそうなのに。


「なんだ、どうしたよ」


 リーダーらしき中年男性が出てきた。パッと見た感じは、普通っぽくて強そうには見えない。そう、冒険者らしくない感じで悪そうな人には見えなかった。


「こいつらが、俺たちのスペースに入ってこようとしたから、追い出しているところだ」

「なんだと」


 うん、いきなり目つきが変わったね。

 こんなに空きスペースあるのに、何が俺たちの~、だよ。

 私の方も、中年男性を睨みつける。


「お嬢ちゃんたち、悪いがここは、俺たちの休憩スペースだ。さっさと」

「だから、なんで、あんたたちの場所だっていうのよ。ただのセーフティーゾーンよ。ここ、誰かから買いあげてでもいるの?」

「そんなこともわからねぇとは、お嬢ちゃんたちは新人だな」

「だったら何よ」

「ここは、一番の稼ぎ頭である俺たち『黄金の鉄槌』専用の場所なんだよ」

「だから、それは誰が決めたのかって聞いてるの」

「そんなの俺たちに決まってるじゃないか」

「ハッ、他の冒険者たちもそう思ってるの?」

「だから、ああしてせまっ苦しい思いをしてるんだろ」


 うわぁ。嫌な顔をして笑ってる。

 こういう奴、すんごい嫌い。


「ちょっと、おっさん」

「お、おっさんだと」

「私からみたら、十分、おっさんでしょ」


 じろりと睨み上げる私。私の方がきっと中身はおばちゃんだけど、見た目は十代だからね。


「あー」

「ミーシャ、怒らせたな」


 双子が何やら言っているけれど、無視。

 イザーク兄様は何も言わずに、ニコニコしてる。


「稼ぎが一番って、どうやってわかんのよ」

「この大人数のパーティになんだ、一番採掘量が多いに決まってるじゃないか」

「屑鉄しか採掘しないような連中に、価値があるとは思えないけど」

「な、なんだと」


 実はこっそり、風の精霊が見てきてくれたのだ。

 テントの中で、採掘した金属類を分別していて、それも大概は屑鉄だったって。


「量より質じゃないかしら~」


 私はアイテムボックスから、手のひら大のエメラルドの原石を取り出して見せた。

 1つではない。2つ、3つと出して見せる。


「なっ!?」

「それ、どこにあったのよっ!」


 中年男性の方は固まり、いつの間にか彼の背後にいた女性冒険者が叫ぶ。

 教えるわけないでしょうが。


「これで、どっちが稼ぎとして上か、わかった?」

「くそっ、皆、こいつらをひっつかまえて、採掘場所を吐かせっ……うわっ!?」


 イザーク兄様の剣先が、リーダーの男性の喉元に刺さる。


「……誰を捕まえるだって?」

「い、いや、そのっ」

「まったく、Aランク冒険者相手に、よく言えるわ」


 ドドーンとか効果音が付きそうなくらいに、どや顔のパメラ姉様。

 カッコいい。


「え、Aランク!?」

「なんで、こんなところに」


 いきなり周りがざわつきだす。

 それだけ、ここには高ランクの冒険者がいないってことか。


「わかったら、さっさと場所を詰めなさいよ」

「クソッ」

「ほら、よかったら、もうちょっとこっち移動してきたら」


 けっこう無理に集まってる感じになっていた他の冒険者パーティに声をかける。あんまり圧迫感あったら嫌だけど、さすがに、目の前で狭苦しそうなのは見てられない。

 へなちょこ鉄槌メンバーたちからは、睨まれているけど、無視だ、無視。

 悔しそうなおっさんたちを尻目に、空いたスペースに私たちはテントを張りだしたのであった。

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