第46話

 1階にあった未確認の隠し部屋、他に3つもあった。それぞれに、種類の違う宝石の原石があったものだから、私たちもホクホク。ただ、ゴンジュ先輩のリストのものはなかった。

 しかし、広いフロアのせいで、2階に向かう前に体力の限界になってしまった(主に私が)。


「ミーシャ、イザーク兄様に抱えてもらってたら?」


 そりゃぁ、姉様たちみたいに身長はないし、足も一般的な日本人並みの長さしかないけどさ。自分の足で歩きたい!

 むすっとした顔になってしまったのだろう。イザーク兄様が私の頭をくりくりと撫でる。もうすっかり慣れたせいで、時々、気持ちいいとか思い始めている私。


「今日は、ここのセーフティーゾーンで1泊かな」

「そうね。どれくらいの広さなのかしら」


 地図情報で確認すると、けっこう広い場所のようなのだけれど、青く光る点が多い。たぶん、冒険者のパーティが複数いるのだろう。一応、間隔をあけて自分たちのスペースをとっているようだけれど、ここに私たちの入る余地はあるのか?

 それを伝えると、3人は立ち止まってちょっと考え込んだ。


「森の家に転移することもできるけど、冒険者たちからの情報も聞いておいてもいいとは思うけど」

「そうだなぁ」

「テントだけはって、寝るのは森の家っていうのは?」

「それが一番いいわね」

「ちょうど、ゴンジュ先輩のところで買った魔道具を使ってみたかったし」

「……いつの間に買ったの」


 ニコラス兄様は何も言わずにニヤリと笑うだけだった。



 いざ、セーフティーゾーンに入ってみたら、まるで体育館くらいのような広さの場所に、いくつものパーティがすでにテントをはっている。まるで、キャンプ場みたいだ。


「奥の方が空いてるみたいよ? 行く?」

「行くしかないよね」


 なぜか多くのテントが出入り口近くに固まっている。すぐにでも攻略に向かいたい人たちなんだろうか。セーフティーゾーンとはいえ、緊張感のある場所だと思うけど。

 どんどん奥の方へと向かっていく私たちに、冒険者たちの視線が痛い。そりゃぁ、3人ともが美形だから当たり前か? とはいえ、そういう感じの視線でもないか?

 残り5分の1を残したところで、一気に空間が空く。


「なんで、奥の壁際に来ないのかな」

「……あー、なんか理由がわかった」

「?」


 壁際に陣取る3つのテント。たぶん、それで1つのパーティだ。そのテントから、みんな一定の距離を置いているせいで、前の方がギューギューになってるのか。


「お前ら、誰の許可を得て、ここに入ってきてんだよ」


 はい、キター!

 どこにでもいるお馬鹿さんたちがー!


「ここ、セーフティーゾーンよね。許可の必要性ないわよね」


 勝気なパメラ姉様に、文句を言ってきた男は腰が引けてるし。


「ここは、俺たち『黄金の鉄槌』の場所なんだよ、出ていきな」


 今度は別の男が出てきた。こっちは、ドワーフか。ていうか、『黄金の鉄槌』じゃ、鉄槌の方が先に壊れて何も作れなそうだな、と思ったのは、私だけではないと思う。

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