第44話

 運のいいことなのか、悪いことなのか、ゴンジュ先輩が必要としてる素材のいくつかは、この新しいダンジョンでも採れるらしいことがわかった。

 わかった途端、双子たちのテンションは上がりまくったのは言うまでもない。

 もう22歳にもなって子供みたいだ、と思うと同時に、22歳なんて子供みたいなものか、と納得もした。あちらでだって、私からしたら、大学4年か新入社員かという、大人というのも微妙な年齢だ。


「ただし、エノクーラ鉱石が採れましたら、こちらは必ず徴収されます」

「エノクーラ鉱石?」


 ダンジョンの入口に設けられている冒険者ギルドの出張所。ダンジョンに入るためのエントリーと同時に、注意点をいくつか、受付の無表情なおばさんが話してくれている。


「はい。我が国の名前を冠している通り、我が国でしか産出されない石になっております。そのため、必ずダンジョンを出た後には、荷物のチェックをさせていただいております」

「随分と厳重なんですね」

「小指の爪程度で、オークキングの魔石並みの魔力を保有していると言われておりますので」


 オークキングの魔石の大きさは、赤ん坊の頭くらいあった記憶がある。


「ダンジョンの出口には、エノクーラ鉱石専用の探知機がありますので、盗み出すことはできませんので、必ず提出してください」

「え、報酬もなく徴収されるんだったら、捨ててくるよね」


 思わず声に出てしまった。

 だって、理不尽じゃない?


「大丈夫よ、滅多に出てくる鉱石じゃないし、お嬢さんたちには無理だろうから。念のために誰にでも言ってるだけよ」


 おばさんは小馬鹿にしたように言うと、今のところ作られているダンジョンの地図を差し出した。


「こちらは、まだ5階の途中までしか反映されていません。それと、出現する魔物のリストは裏面にあります。こちらに記載のない魔物が出ましたら、こちらも必ず報告してください。説明は以上です。では、次の人」


 さっさと行けと言わんばかりに手を振られて、ムッとしたけれど、後ろにすでに長い列ができていたので、仕方なく、受付のカウンターから離れた。

 狭いギルドの出張所から出て、ダンジョンの入口に向かう私たち。


「エノクーラ鉱石って必要な物の中には含まれてなかったよね」

「ないない。そんな面倒なものとかあったら、ゴンジュ先輩が言うでしょ」

「……言うと思うか、あの人が」


 ニコラス兄様の言葉に、パメラ姉様が慌ててメモを取り出す。


「……ない。うん、大丈夫」

「でも、ちょっと、あのおばさん、ムカつく」

『そんなもの、私がいれば簡単に採れるのにね』


 今日の護衛担当の土の精霊王様が悪そうな顔で笑う。


「そうよねー。それにアイテムボックスに入れちゃったら、探知機にも反応しないんじゃない?」

「だからって、やっていいことではないですよ」


 真面目なイザーク兄様が、精霊王様と私を窘めた。


「冗談ですよー」

「ミーシャが言うと冗談に聞こえないよねー」

「うんうん」


 双子にまで言われ、ちょっと納得がいかない私なのであった。

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