第43話
ノクノクの街で買える素材は、思っていたよりも多くはなかった。あちらの大陸であれば普通に売っていそうな物が、意外にもなかったのだ。代替品を探すというのも一つの手ではあるけれど、その代替品の性能が同じくらいなのか予想できない。
「だったら、買いに戻ればいいよね」
これが普通の人だったら、船代とかの移動費用も考えなきゃいけないから、値段が爆上がりになるんだろう。でも、私だったら関係ない。
しかし、これだけの素材を揃えた上に、かなり腕のある魔道具師でないと作れないってなると、どんだけ高額な商品なんだろう。あっちの世界のコンビニなんかに置いてあるコピー機を買う感覚と同じなんだろうか。
そもそも、複写の魔道具そのものを見たことがない。あんまりデカいと置く場所が限られるけれど、それはまた考えればいいか。
「戻るのは、ダンジョンで素材を集めてからでもかまわないわよね? よね!」
あー、はいはい。
ここまでパメラ姉様の期待満々の顔を見せられたら、断れるわけがない。
街には1泊だけして、そのまま北にあるダンジョンへと向かうことにした。
さすが、新しくできたダンジョン。早朝にも関わらず、向かう道には、街との往復の乗合馬車や歩いている冒険者たちの姿が目についた。
私たちは、そんな彼らを尻目に、馬を駆ってダンジョンへと向かった。
森の中に出来上がったダンジョンの町は、思いのほか色んな建物が出来ていた。
「主に宿屋がメインかな」
「買取用の商会の出張所みたいなのもあるわね」
「あー、冒険者ギルドと商人ギルドもある」
昼過ぎには町についた私たちは、情報収集も兼ねて、そこそこ混んでいた定食屋さんのようなところに入った。
食事はそこそこ。おかげで、周囲の声に耳を傾けることができる。
「そういやぁ、トッコのやつ、新しいフロアへ下りる階段を見つけたらしいじゃないか」
「おう、今、攻略トップの『遠雷』のトッコか」
「そうそう、昨夜戻ってきたのか、大盛り上がりだったぞ」
そんなことよりも、どんなダンジョンなのかが知りたいけれど、話題はその『トッコ』なる冒険者の話題でもちきりになっている。
とりあえず聞き取れたことでいえば。
・最深部が5階。そのトッコが見つけたのが6階への入口だという。
・まだそれほど高ランクの魔物は出ていないせいか、初心者や低ランクの冒険者が多い。なので『遠雷』もそれほど高ランクの冒険者ではないらしい。
・なかなか攻略が進んでいないのは、ワンフロアが広いせいらしい。
・得られるのは今のところ鉱物だけ。
「各フロアの魔物の情報は、冒険者ギルドで聞けるかしら」
「鉱物って、どんなのが採れているのかも、聞かなきゃ」
「ゴンジュ先輩が必要としてる素材がなければ、すぐにレヴィエスタに戻るわよ」
「そんなぁ!」
双子が声を合わせて文句を言うけれど、私には意味がないもの!
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