第41話

 教えられた場所はすぐに見つかった。

 何せ、冒険者ギルドの真向かいにドーンと大きな店があるのだ。店名は『クルニス魔道具商会』となっている。ここに、ゴンジュ先輩がいるらしい。


「ずいぶんデカい店ね」

「店の名前はゴンジュ先輩の名前と違うけど……まさか、あの人が雇われてるの?」

「……あの人が雇われるタマか?」

「魔術師団から飛び出したくらいなのに?」

「もしかして、誰かと店を作ったとか」

「ああ、この前ので一山あてて?」

「でも、あの人に商売は無理だろ?」


 わちゃわちゃしている双子をおいておいて、私とイザーク兄様が店の中へと入っていく。

 さすがデカい店だけあって、お客さんもたくさんいる。冒険者っぽい人と、普通の一般人っぽいのと半々くらいだろうか。

 イザーク兄様がカウンターにいる中年男性に声をかけたようだ。私は、ついつい展示されてる商品に目がいってしまう。

 一般的な生活に便利そうな物が並ぶ中、反対側、冒険者たちが集まっている場所には、武器や防具の他、野営に必要なグッズなんかも並んでいるようだ。せっかくだったら、何か買っていくのもいいかな、なんて思っているところで、イザーク兄様に呼ばれた。


「ゴンジュ先輩が会ってくれるそうだ」

「はーい」


 双子たちも魔道具に心惹かれながらも、私たちと一緒に、カウンターの先の廊下を歩いていく。案内されたのは……研究室っぽい部屋。色々な道具やら素材やらが散在していて、足の踏み場もない。

 そんな中、椅子にでも座っているのか、ぬぼーっと顔を出したのは、黒髪もじゃもじゃに眼鏡をかけている中年男性。

こっちの世界に来て、眼鏡をかけている人に会ったのは初めてかもしれない。思わず、しみじみと見てしまう。


「……よぉ。イザーク……に双子か」


 色んな物が邪魔をしているようで、私の存在は目に入っていないようだ。


「なんだ、もう素材がそろったのか」

「なんだ、じゃないですよ。あのメモじゃ、何が必要なのか、わかりませんって」

「あ? そんなことなかろう」

「私だけではなく、妹たちに見せても読めませんでしたから」

「リンドベル一家は文字も読めねぇのか?」

「そんなわけないでしょうがっ」


 あ。パメラ姉様がキレた。


「お、おい、何もそこまで怒ることはなかろう。冗談だ、冗談」


 むちっと太い指をした手で、あわあわと否定するゴンジュ先輩。


「……ゴンジュ先輩、ほどほどにしておかないと、今度大物の仕事がきても、パメラが仕事を受けないって言いだしますよ。パメラが受けなきゃ、当然、俺も受けませんけど」


 ニコラス兄様が、呆れたように言った。


「いやいや、それは、困るっ」


 そう行って、慌ててごそごそっと出てきたのは……私とたいして身長が変わらないゴンジュ先輩だった。

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