おばちゃん、素材収集がんばる

第40話

 エノクーラ王国までは、のんびり旅だった。身内しかいないので、大きな街に立ち寄った時以外は宿に泊ることなく、森の家でしっかり休んで、美味しい物を食べた。

 ただ、国境を越えるときだけは、なんだか物々しい雰囲気になったのは、エノクーラ王国とシャイアール王国の仲の悪さが露呈している気がする。

 未だに300年前の因縁が続いてるのか、と思ったが、エノクーラ王国の王族(エルフの血が入っている)も、シャイアール王国の王族(純血のエルフ)もどちらも長命らしいので、たかが300年なのかもしれない。


 ゴンジュ先輩の住んでいるところは、エノクーラ王国の第二の都市、ノクノクというところだそうだ。シャイアール王国の冒険者ギルドで手に入れた地図で見ると、大きな森のそばにあるらしい。

 なんでそんなところに住んでいるのかは、イザーク兄様も知らないらしい。


「お、あれがノクノクの街だな」


 ニコラス兄様の声に前を向くと、けっこう立派な石垣みたいな塀で囲まれている街が見えた。


「リンドベルの領都よりも大きそう」

「国で二番目なんだろう? うちみたいな辺境の街とは違うさ」


 イザーク兄様が楽し気に笑いながら言う。


「下手に大きな街にしたら、王家から睨まれそうだもんね」

「そうそう、今以上に面倒な立場は遠慮したいよ」


 おや。私が知らないだけで、王家と何かあったんだろうか。

 胡乱気にイザーク兄様に目を向けるけれど、当の本人は二コリと笑い返してきた。まったく、私には教える気はないということか。


「ま、いいけど」


 何かあったら、遠慮なく、行動しますけどね。


「身分証を見せてください」


 若い衛兵に入口で声をかけられた。意外に丁寧な言葉に驚く。なにせ、今までの経験上、横柄な印象が多かったからだ。


「冒険者の方々ですか。もしかして、我が領のダンジョンが目的で?」


 衛兵が目を輝かせながら、私たちのほうに目を向けた。


「え、ダンジョンがあるの?」


 それに食いついたのは、当然、パメラ姉様。ニコラス兄様も期待した目になってるし!


「ええ。1年程前に、この街の北に新たなダンジョンが現れましてね。森林資源しかなかったこの街としては、鉱石メインのダンジョンはありがたくって。今はダンジョンラッシュになってますよ」


 ニコニコしながら、さりげなく宣伝してるよね。


「姉様たち、まずは、ゴンジュ先輩でしょ」


 私の言葉に、「あっ」とか言って、しゅんとなる二人。


「おや、魔道具師殿のところのお客様でしたか」

「もしかして、ゴンジュ先輩って有名人?」

「ええ。面倒な素材を集めさせるので有名ですよ。冒険者たちからは、嫌がられてますけど、金払いがいいんでそれなりに人気みたいです」


 ……そんな噂がたつくらいなのか。

 今からすでに面倒な気配が漂ってる。

 私たちはそのまますんなり街に入れた。ついでにゴンジュ先輩の店の場所まで教えてもらってしまった。

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