第37話
リンドベルの屋敷に戻り、久々に会ったアルフレッドは、また少し大きくなっていた。抱き上げるのも一苦労。これは、もっとデカくなるのは確実だろう。
ほっそりタイプのヘリオルド兄様ではなく、ガッチリタイプのエドワルドお父様に似るのかもしれない。
あの後、おじいさんたちからの緊急連絡はなかったので、何もなかったのだろう。
遭遇はしなかったものの、ストーカーエルフが近くにいるというだけで鳥肌モノって、どうなの。あれが悪意感知でひっかかるわけでもないから、怖すぎる。
精霊王様の言葉がなかったら、ただの風邪かな~? なんてのんきにあの場に居続けたかもしれない。怖い、怖い。
屋敷に戻ってすぐ、イザーク兄様は、ゴンジュ先輩(フルネームはゴンジュ・メケウルスさん)にさっそく伝達の魔法陣で連絡をとった。
私たちがこれからのことを相談しようと、お茶をしているところに返事が届いた。ナイスタイミング。
「今は……エノクーラ王国にいるらしい」
「どこ? それ」
「シャイアール王国の北にある国だね。なんだ、そんな近くにいたのかよ~」
「うん?」
「あの港町から馬だっら3日もあればつく国だよ」
なにそれ。
そんな近い国に、イザーク兄様の知り合いがいたの!?
「一応、複写の魔道具のことは伝えたんで、必要な材料を返信で書いてくれたんだが」
渋い顔をしながら、小さな手紙を私たちに見せる。
「……読めないじゃん」
時候の挨拶から始まったのはいいが、肝心な材料が多すぎるのか、小さく色々書きすぎて読めない! そもそも字が汚いっ!
元魔術師団出身だから、私たちが使うようなメモサイズの手紙よりかは大きいけれど、それにしたって、である。
「材料を書いてきている以上、作る気はあるんだろうが……これは直接本人に聞くべきか」
「じゃあ、エノクーラ王国に行ってみる?」
「いいね!」
「いいじゃない! あそこにも大きなダンジョンがあったはず!」
パメラ姉様にはダンジョンのことしか頭にないらしい。ニコラス兄様も似たようなものだから、二人だけじゃ、ただひたすらにダンジョン攻略し続けそうだ。
「そもそも、そのエノクーラ王国ってどんな国なの?」
「確か、あそこの王家は、あの大陸では珍しく人族が初代の王だったはず」
「そうそう。なんでも、エルフとの婚姻を何度か繰り返すうちに寿命が伸びたって聞いたことあるわ」
「だから、今では、単純に人族とは言い切れない種族になってるっぽいね」
「でも、シャイアール王家の方は純血主義みたいで、エノクーラ王国を目の敵にしてるって聞いたわ」
それを聞いて、あのストーカーエルフのことを思い出す。確か、アレもその王家絡みじゃなかったか。純血主義だというなら、私を取り込むとかはないだろうけれど。
『エルフは、精霊の愛し子に対する執着は凄まじい』
今日の護衛担当の風の精霊王様が、いきなり話し出した。
『普通の常識のあるエルフ族だったら、手を出そうとまでは思わない。しかし、今の王族は……愚かだ。何をやらかすか、わからない』
「精霊王様にそこまで言わすのって、何をやらかしたのよ」
精霊王様は苦い顔をすると、昔話を聞かせてくれた。
かつて、生まれたばかりの精霊の愛し子を殺そうとしたエルフの王がいたことを。
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