おばちゃん、再び悪い人とニアミスする

第30話

 リンドベル領のギルドに素材を渡した双子たちだったのだけれど、量が量だっただけに、鑑定に時間がかかるというので、一旦、コークシスの宿に戻った。

 中でも、ドラゴンの魔石には、鑑定する職員が叫び声を上げて大変だった。おかげで、ギルドマスターまで出てくる始末。


「さすが、リンドベル家だな」


 そう言って豪快に笑われた。私ではない。双子が、だ。



 宿に戻って、翌日以降どうするか、という話に戻った。テーブルに地図を広げて確認する。

 ソウロン王国は山に囲まれたドワーフ主体の国らしい。ドワーフといえば、前にシャトルワース王国からの逃亡途中で出会った、ドワーフと人間のハーフの伯爵がいたっけ。


「そういえば、エンロイド伯爵って?」

「ああ、そうそう、ハリーおじさんは、そのソウロン王国の末姫の息子だったわね」

「おお、やっぱり!」


 ちょっと、これは寄らない選択肢はない。


「その隣のナディス王国と、トーレス王国は、どちらもが王族は人族だね」

「ああ。ただ、ナディス王国とトーレス王国はあんまり仲がよくないんだよねぇ」

「そうそう、しょっちゅう、国境あたりで小競り合いがあるらしい」

「え、じゃあ、ナディス王国からトーレス王国に行くのは無理?」

「いや、行商人などの人の流れは問題ないんじゃないかなぁ」


 トーレス王国はナディス王国とウルトガ王国とは隣接しているのだけれど、コークシス王国からは直接行く道はないらしい。


「海を使って行くこともできるけど、コークシスともそれほ仲がいいわけではないようなんだよねぇ」

「なんでまた」


 なんでも、コークシス王国とナディス王国はエルフの血筋が入っているとかで、他国を下に見る傾向があるんだとか。その一方で、トーレス王国は、名前の由来でもあるトーラス帝国と血縁関係があるらしい。かなり遠縁らしいけど、虎の威を借りるなんとか、みたいなところがあるらしい。


「どっちもどっちじゃんね」

「そうね。それに、今はナディスの方には帝国の元皇太子妃と皇子が戻ってきているから、血の濃さで言ったら、ナディス王国の方が帝国に近いものがあるし」


 なんと。あの皇太子の関係者が、ナディス王国にいるとは!


「でも、私たち、ただの冒険者だし、王族とか関係ないし」

「そうね。普通に観光したり、ダンジョン行ったりする分には、早々、彼らと接触することもないだろうしね」


 万が一、接触しそうになったら、三十六計逃げるに如かず、だ。


「パメラはダンジョン行かないって選択肢はないんだ」


 ニコラス兄様が呆れたように言う。


「んだな、さすが、パメラだぁ」


 ボブさんたちも笑っている。


「そういえば、ボブたちはどうするんだ?」


 イザーク兄様が思い出したように言ってきた。

 すっかり忘れていたよ。


「う~ん、オラたちは早いところ戻りてぇから、途中まで一緒でいいべか」


 そうだよね。私たちののんびり旅に付き合わせるのも申し訳ない。


「だったら、隣の大陸の港町まで、転移しちゃう?」


 ストーカーエルフに遭遇する前に、戻ってくればいいわけだし。 


「ついでに、あっちのギルド職員のおじいさんのところに顔を出すのもアリかな」

「そういえば、リンドベルのギルドで聞くの忘れてたわね。ごめん」


 素材の量が多すぎて、皆が盛り上がっちゃったものだから、私も含め、すっかり忘れてた。どうせ、私たちは急ぎの旅でもない。リンドベルのギルドの鑑定が終わってお金を受け取り次第、隣の大陸に行くことにした。


 ああ、転移ってありがたい。

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