第29話

 おじいさんの描いた絵も気にはなる。しかし。


「また、あのストーカーエルフに会ったら嫌だなぁ」

「すとーかー? が何なのかわかんないけど、私たちが一緒なんだし、大丈夫よぉ。そもそも、私たちがいなくたって、大丈夫でしょ?」

『それはそうだな』


 今日の担当の風の精霊王様が、私の肩でふんぞり返っている。当然、この姿が見えるのは、同じパーティメンバーのみ。うまいこと精霊王様がやっている。


「うーん、だったら、ギルド本部で問い合わせしたら、ウルトガ経由であっちに向かう?」

「転移じゃなくていいの?」

「そんなに急いでいるわけでもないし、ほら、コークシスとウルトガの間にある国に行ったことないし」


 前回は、イザーク兄様と合流してからウルトガへと直接転移してしまったのだ。せっかくなら、観光しながら行きたい。


「ここからウルトガだと、ソウロン王国とナディス王国か」

「ウルトガに向かうだけなら、その2国のどちらかだね」

「あとはトーレス王国だが、こっちはナディス王国を経由することになるからな」


 道筋としては、


 ①コークシス→ソウロン→ウルトガ

 ②コークシス→ナディス→ウルトガ

 ③コークシス→ナディス→トーレス→ウルトガ


 という3パターンがあるらしい。


「どうせなら3国経由すればいいじゃない?」


 遠回りになるけど、コークシス→ソウロン→ナディス→トーレス→ウルトガという行き方もありじゃないのだろうか。


「うーん、それは、ちょっと地図を見ながら話そう」

「そうね、それに、早いところ、お宝とかの整理もしちゃいたいし」

「はーい」


 気が付けば、すでに冒険者たちの人込みからは抜け出していた。

 人混みの中で、あんな、変な空間ができてたのだもの、さすがに、結界が張られていることは察したのであろう。

 私たちは最寄りの大きめな宿屋に入ると、すぐに大きめな一部屋を借りた。ここはダンジョンのある町なので、パーティ単位で泊まれる部屋のある宿もあるのだ。

 荷物を下ろすと、のんびりする間もなく、お宝の確認が始まる。正直、私は後方支援でまともに戦っていないので、調剤に使えそうな素材を貰えればいい。それ以外は、残りの5人にお任せしたら、残りはギルドに売り払うつもりらしい。その中には、あのドラゴンの魔石もあるが、あれがどれくらいの価値があるのか、予想もつかない。


「どうせなら、リンドベルのギルドに売る?」


 パメラ姉様、あの女性職員に思うところがあったようだ。


「わしらは、金になるんだったら、どこで売ってもかまわんよ?」

「んだなぁ」

「よーし! じゃあ、ミーシャ、一度、屋敷に転移してくれる? 私とニコラスで売ってくるわ!」


 うん、コークシスでは売らないってことね。

 まぁ、いいんじゃない?

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