第28話

 私たちが管理室から出ると、再び、多くの冒険者たちに囲まれた。双子やイザーク兄様が守ってくれているが、ボブさんたちや私みたいな小柄な者にはたまったものではない。


「まったく、邪魔なんだから」


 私の呟きと同時に、結界を張る。まるでお椀型のような透明な結界のできあがり。

 急に張ったもんだから、一気に周囲にいた冒険者たちが押し戻されて、端の方にいた人などは倒れこんでいる。


「こりゃ、なんだ!?」

「おい、痛いって!」


 それでもしぶとく立ちふさがる冒険者たちをかきわけて、ずいずいと進む私たち。なんか結界と背後の人に挟まれて、変な体勢になってる人とかもいて、ちょっと面白い。

 しかし、それでもギャーギャーとうるさいので、防音もほどこしておく。これで、外の騒音は聞こえないし、こっちの会話も外には聞こえない。


「ミーシャ、ありがと」

「ううん。この後はどうするの?」


 前を歩いていたパメラ姉様の隣に並んで歩く。


「うーん、どうしようか」

「ボブたちはどうする?」


 ニコラス兄様が後ろを歩いていたボブさんに声をかけた。


「ん~、とりあえず、目標のダンジョンはクリアしたから、一度、国さぁ、戻るか」

「んだねぇ。あんまり、家を放置しとくと、親戚どもに荒らされるかもしんねーし」


 おう!? もしや、あのファンタジー映画のような展開?


「ねぇねぇ、ボブさんたちの家って、どこにあるの?」

「うちか?」

「うちはぁ、隣の大陸にあるシャイアールってぇ国だぁ」


 げ。もしや、あのストーカーエルフのいる国!?


「シャイアールの一番南の端っこの森の中に、おらたち小人族の村があるだよぉ」

「とんでもねぇ田舎だでなぁ、あまり行商人も来ないんだぁ」

「へぇ」


 隣の大陸は、結局中途半端にしか周れなかったことを思い出す。

 ストーカーエルフしかり、ムカつく冒険者しかり。


「そういえば、あの冒険者ギルドのおじいさん、あれからどれくらい絵を描いてくれたかな」


 一番後ろを歩いていたイザーク兄様に声をかける。

 本当は、隣の大陸から戻る時に寄って、おじいさんが描いた絵を受け取るはずだったのだけれど、ムカつく冒険者のせいで転移で帰ってきてしまったのだ。おかげで、いまだに私の手にはない。


「もう1年以上前だ。かなり描きためているんじゃないか?」


 何のことだ? という顔で双子たちが見てきたので、あちらの大陸で知り合ったギルド職員のおじいさんの話をした。

 ボブさんたちは、なんとなくピンときたのか、あのじいさんか、と言って話に加わってきた。よっぽど印象に残るおじいさんらしい。


「そうだ、ギルド本部行ったら問い合わせてみればいいじゃない」

「だね。ギルド職員だっていうなら、大陸間でも連絡はできるはずだし」

「ついでに、あっちに行っちゃうのもありじゃない?」


 勝手に双子が盛り上がっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る