第20話

 双子が何度も見られた理由がわかった。


「なんなのよ、これはっ!」

「こんなのをやるのは、アイツしかいないだろ」


 パメラ姉様が喚いている。

 どうも、半年前に帝国のダンジョン攻略の時にパーティを組んだヤツが、パメラ姉様の追っかけ? ストーカー? になってたらしい。

 そいつの本業は吟遊詩人らしく、双子の勇姿(特にパメラ姉様がメイン)を紙に描いて、歌いまくって、帝国を渡り歩いていたそうなのだ。当然、そんなことになっていたとは、パメラ姉様たちは知るわけがない。


「ていうか、なんで、こんなのが貼ってるのよっ!」


 私たちは、カウンターで鍵を受け取ってから、宿の食堂の場所を見に行ったのだが、そこで、双子のポスター(というか、指名手配書かよ、と、内心ツッコむ)を発見したのだ。 

 食堂には、ちょっとした舞台(ほんとに人一人立てるくらい)があった。きっと、ここで歌ったり、演奏なんかをしたりするのだろう。夜は食堂よりも、飲み屋になるパターンだろうか。


「うちの宿に、リンドベル兄弟が泊まったなんて聞いたら、お客さんがたくさん来てくれそうですわ」


 ガリガリな宿の女将さんの甲高い声が、食堂に響く。

 そうは言っても、客らしい客は、私たちしかいないみたいだけど。


「……でも、綺麗に描けてるじゃん」


 本当に上手いことかけているからこそ、衛兵にもわかったってことなんだろうけど。きっと、かなり、この食堂にも通ってるのかもしれない。


「ミーシャ!」

「これ置いてった人って、いつ来たの?」


 女将さんに尋ねると、もう1か月くらい前なのだとか。


「だったら、近場にはいない可能性あるんじゃない?」

「そうであってほしいわ」

「ていうか、いまだに俺たちのことネタにしてるとか、やめてほしいよね」


 パメラ姉様が剥がして欲しい、と言ったら、渋々ながら剥がしてくれた。これ、きっと、私たちがいなくなったら貼るパターンだよな、と思ったけど、あえて言わなかった。

 それにしても、よく、ストーカーを振り払えたもんだ、と思ったら、どうもコークシスのダンジョンでまいたらしい。

 その時は、ボブさん夫婦も一緒だったらしく、ボブさんたちも、ああ、あいつかぁ、と笑ってた。


「この調子だと、帝国中にばらまかれてたり?」

「やめて!」


 でも、冗談ではなく、帝国の中を通り抜けるたびに、双子の話題が出てきそう。


「テッセンでは話題にもならなかったけどね?」

「ベリタスの方さ、いったのかもなぁ?」

「んだども……パメラたちさぁ、ここに泊まったっちゅう話が広まったら、追いかけてきそうでねぇか?」

「やめて! そんな気持ちの悪いこと言わないで!」


 よっぽど嫌なんだろうなぁ。

 双子と一緒に帝国のダンジョンに潜ってたくらいだし、そこそこの実力者なんだろうに。


「さっさと帝国出て、コークシスに行くわよっ!」


 パメラ姉様は鼻息荒く、一人でさっさと泊まる部屋へと向かってしまう。


「鍵、私が持ってるんだけど」


 苦笑いしながら後を追いかける私なのであった。

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