第17話

 再び乗合馬車の旅が始まった。

 なんか嫌な話を聞いてしまった気がするが、私はもう知らない。彼らが国のことを考えて、精霊王様に顔向けできる行動をしているんだったら、精霊王様たちだって怒りを鎮めてくれるはずなのだ。それが変わらない、ということは、彼らの行動がともなっていないということだろう。


 リンドベル辺境伯領とは反対側にあるゴーダ辺境伯領。この移動にかかったのは、約1週間。思ってた以上に時間がかかったのは、道路の整備不良が一番の原因だったと思う。なんとか国境まで辿り着いた我々だけれど、ここに至っては、ほぼ私は死んでる。

 国境越えのため、一旦馬車から降りている私たち。


「もう、ちょっと、家に帰って休む」

「え、何、ミーシャだけズルい」


 しゃがみこんでボソッと言った言葉を、しっかり聞き取ってる、地獄耳の持ち主のパメラ姉さま。ズルいと言われようと、宿屋の布団だけじゃ、今の私の疲れはとれない。しっかりお風呂に入って休みたい!

 しかし、そんな私の思いは実現されることはなく、のろのろと国境越えを終えると、そのまま終点の町まで馬車に乗り続けた。

 ……頑張った私、偉い。

 その町で一泊した後、私たちは乗合馬車ではなく、馬に乗り換えた。もう、あんなガタガタいうのに乗るのは嫌だ。 


 そこからは、移動のスピードが格段にあがったのは言うまでもない。

 何せ、精霊王様たちが、馬たちを補助しまくっているんだもの、当たり前だ。ボブさんたちは、不思議に思いながらも、ニコラス兄様が精霊魔法の使い手なのを知っているので、そういうもんか、みたいな感じになっていた。

 レヴィエスタ王国内の移動に一週間以上かかったのに、テッセン王国の横断に3日しかかからなかった。観光するような場所がなかったせいもあるけれど、それでもかなりのスピードだったと思う。

 そして、帝国へと入るのだけれど。


「うわ~」


 テッセン王国と帝国との国境は、急ごしらえというのもあってか、簡単な石組みしかされていない。こんなのじゃ、戦いになったら一撃で壊れるな。

 その国境を挟んで、明確に環境の違いが現れていた。


「何にもないね」

「ああ」


 荒れ果てた平野が目の前に広がっていた。


「こんなんじゃ、野生の生き物なんか生きていけないんじゃない?」

「野生だけではなく、人も無理だろ」

「……近隣の村の者たちのほとんどは、テッセン王国へと逃げてきているから、なんとか無事だ」


 国境の門の前で立ち止まった私たちの会話に、衛兵のおじさんが加わった。


「我が主の賢明な判断で、いち早く独立したからよかったものの、そうでなかったら、同じようになっていたでしょう」


 なんでこんな国境にいるような人が、そんなことを知っているのか。

 双子とイザーク兄様がおじさんに鋭い視線を向けると、いきなり衛兵のおじさんが跪き、頭を下げた。

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