第15話
なんとか休憩場所に辿り着くと、続々と乗客たちが降りる。私たちは一番奥にいたから、降りるのも一番最後だ。乗合馬車に同乗してた者の多くは、行商人や一般人っぽい人が多い。冒険者は護衛を除いたら、私たちだけのようだった。
私たちは休憩場所の中でも、端の方へと移動する。折り畳みの椅子をアイテムボックスから取り出して一息つく。これは前に、森の家の近くの村の大工さんに作ってもらったやつ。あちらで使ってたパイプ椅子のイメージを伝えたら、1週間ほどでイメージ通りのものを作り上げてくれたのだ。
「……ミーシャ、それ、わたしたちの分はないの?」
パメラ姉様の声に、ニヤリとする。
「作ってないわけないじゃん?」
そう。一応、リンドベル家全員分は作ってある(アルフレッドはのぞく)。ただサイズは私の椅子より、大きめでしっかりした作りになってるけど。
「さーすがー!」
「ボブさんたちの分もあるけど、使います?」
「なんと! そりゃぁ、ありがてぇ」
「いいんだか?」
「ちょっと大きいかもしれないけど、どうぞ」
ポイポイッと取り出しては、渡す。椅子の広げ方は私のを見て察すると、すぐに開いて座ってみる。
「はぁ。地べたに座ると、汚れがなぁ」
「濡れてなぐても、湿気がなぁ」
小人族なだけに、ちょっと足が浮いててもご愛敬。
「しかし、思った以上に、道が悪いな」
イザーク兄様が渋い顔でそう言うのもわかる。轍ができていたり、石がごろごろしてたりと、全然、道が整備されていないのだ。
「最近になって乗合馬車が通り出したから、仕方がないとはいえ、この道はちょっとどうかと思うよね」
ニコラス兄様も苦々し気だ。
今私たちが使っている道は、帝国から新たに独立して出来たテッセン王国へと抜ける街道で、まだギリギリレヴィエスタ王国内だったりする。
実は、レヴィエスタ王国との国境を挟んであった、帝国側の2つの辺境伯家(テッセン家とベリタス家)が、帝都の混乱に乗じて独立をしたのだ。
両家とも、元々は100年から200年前に帝国に攻められて吸収された国だったこともあり、帝国のゴタゴタと同時に独立をしたのだとか。
普段、帝国側へ抜ける道として使われていたのが、シャトルワース王国やエシトニア王国へ向かう道としても頻繁に利用されていたりする。それが今では、ベリタス王国へ向かう道になっているのだ。
一方で、今我々が利用しているテッセン王国への道は、あまり利用されてこなかった。
「テッセンも独立したのだから、ゴーダ辺境伯も、そのうち整備されるだろう」
「独立して半年も経ってませんしね」
イザーク兄様の言葉に、パメラ姉様も頷く。
それだけ、ゴーダ辺境伯領と元テッセン辺境伯との交流があまりなかったということなんだろう。
「……ごめんなさーい」
何せ、この道を行くことになったのは、私が単純に、前と違う道で行きたいという、我儘を言ったせいだからなのだ。えへ。
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