第12話
冒険者ギルドの大会は、私たちが見ることができたのは、準決勝あたりからだった。しかし、なかなか白熱した戦いで面白かった。
一応、剣士や魔法使い、シーフのような職種ごとに分かれて戦うのが面白かった。
ただし、Aランクの冒険者は参加が不可らしい。Aランクは数も多くない上に、そもそも、BランクとAランクの差はかなり大きいらしいのだ。だから、双子は参加していなかった。
「……イザーク兄様、優勝しちゃったね」
剣士の部で、圧勝してしまうイザーク兄様。
さすがエドワルドお父様の息子であり元近衛騎士。たぶん、実力だけでいったら、Aランク相当なんじゃなかろうか……本気だしてどうするよ。
報奨金を渡しているのは、さっきの胡散臭い副ギルド長ではなく、見るからに脳筋な感じのツルピカはおっさん。彼がこの領都の冒険者ギルドのギルド長なんだろう。うん、なんか、まさにって感じではある。
そして、優勝の報奨である金一封を受け取り、にこやかに観衆に応えているイザーク兄様に、ちょっとだけ呆れる。確かに、まだDランクだけど、いいのかそれで。
戦うときの呼び込みの名前は苗字がなかったから、辺境伯家の者だと気付いた人は多くないと思う。しかし、そもそも、領民のためのお祭りで、領主の身内が金一封貰っていいんだろうか。
そして、シーフの部では、あの小人族のボブさんが優勝していた。人族相手に、体格差をものともせずに、さくっと勝ってしまった。あの素早い動きに反応できてた相手も凄いといえば凄いけど。
ボブさんが出てきた時に、エドワルドお父様たちに、双子と一緒のパーティにいる話をしたら、興味津々で身を乗り出して見入ってた。ちなみに双子とメアリーさんは、会場の反対側にいたらしい(土の精霊王様談)。
「来年はミーシャも出てみる?」
アリス母様の声に、私は苦笑い。
「いやいや、私には無理、無理」
剣術なんてそもそも出来ないし、攻撃魔法だって滅多に使わない。こんな私に対人戦なんて、絶対無理だもの。すぐに『スリープ』とかって、眠らせて終わりになりそうだ。
「そうね。それに、ミーシャが動くより先に、精霊王様が手を出していそう」
「そっちのほうが、かなり物騒だぞ」
二人の言葉に、うんうん、と素直に私も頷いてしまった。
ほんと、精霊王様たちは私の危機に関しては加減を知らないしなぁ……。
大会の表彰が終わって、私たちは会場を後にしようと部屋を出たところで、再び、エドワルドお父様が副ギルド長のジャックさんに捕まった。
なので、私とアリス母様はお父様を残して、さっさとギルドから出ることにした。
「……あの人、なんか胡散臭いのよね」
建物から出たら、つい、思ったことが零れてしまった。
アリス母様は気付いたみたいだったけど、苦笑いを浮かべるだけで、何も言わなかった。
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