第11話
無事に(?)ひらひらドレスではなく、前日同様のちょっと小奇麗な程度の服を着て、午後からお祭りに参加した私。
エドワルドお父様が腕に抱えて行こうとするのを、なんとか逃れ、その代わりにエドワルドお父様とアリス母様の間で両手を繋がれる刑に処せられる。まるで捕まったエイリアンだ。
――そして、見事に目立つ。
先代の領主ってだけじゃなく、冒険者としても有名な二人だから、まー、見事に色んな人達から声がかかること。特に、庶民の祭りというのと、元々気さくな二人だけに……前に進まん。
「エドワルド様っ! どうそ、こいつを食ってってくだせぇ!」
「何言ってるんだいっ、アリス様! このデケルのジュース、いかがでしょう!」
うん、みんな、お父様たち大好きね。
視線のほとんどは二人に向いているけど、時々、私に向く不思議そうな視線。領都で聖女としてのお披露目をしているわけでもないし、誰だろうな、くらいかもしれない。一応、今日は土の精霊王様が、髪と目の色を変えてくれてるから、薬屋のミーシャにはつながらない……はずだ。
「皆、悪いな、冒険者ギルドの武道大会に行くんで、また後でな」
エドワルドお父様の言葉に、残念がりながらも道を開ける人々。まるでモーゼだな。
「さぁ、急がないと決勝が始まってしまう」
「昨日もなかなかいい試合だったから、楽しみね」
二人は昨日から大会を見に行っていた模様。
まぁ、領主の仕事はヘリオルド兄様に押し付けてるしなぁ。ヘリオルド兄様? 今日は王都にお呼ばれだそうだ。また、面倒な話を押し付けられるんじゃないか、と思うと、気の毒でならない。
ちなみに、初日はエドワルドお父様たちとヘリオルド兄様たち、4人で遠くから私の出店も見てたらしい。ストーカーかよっ!
冒険者ギルドの周辺は、まるでダフ屋みたいなのがぞろぞろいて、なんかチケットを売ってるみたい。いや、あれは賭け札みたいなもんか。それにしても、やはり『冒険者』というだけあって、あまり柄のよくない人もちらほら。
しかし、エドワルドお父様はそんなものには目もくれず、冒険者ギルドのドアを開ける。
「リンドベル様、お待ちしておりました」
「ジャック、遅れてすまんな」
「いえいえ」
ドアのところまで駆け寄ってきた男性が一人。ジャックと呼ばれるこの人は、この領都の冒険者ギルドの副ギルド長らしい。アリス母様がこっそり教えてくれた。
私は、ここではあんまり冒険者ギルドでの活動をしていないので、この人の顔は初めて見る。細目で銀色の髪をなでつけて、黒っぽいスーツ姿は、どう見ても冒険者ギルドっぽくない。うさん臭さが半端ない。でも、エドワルドお父様と親し気な様子から、悪い人ではないのかも。
ジャックに案内されて、私たちは冒険者ギルドの中にある大型の訓練場へと案内される。ここでその武道大会なるものが行われているらしい。
私はエドワルドお父様の後ろに隠れるようについていく。ここでも視線の多くは、エドワルドお父様たちに向くし、コソコソ話している連中もいる。
会場のドアが開いた途端、大きな歓声が響く。どんだけ分厚いドアなの? と一瞬思ったけれど、防音の魔術具でも使っているかもしれないことに気付く。私も結界張るときに防音する時があるしね。
「お席はこちらで」
「うむ、悪いな」
「いえいえ、とんでもございません」
案内されたのは、訓練場を一望できる一番上の観覧席のような場所だった。
「うわー。冒険者ギルドにこんな施設があったのね」
思わず声が漏れる。
「フフフ、地方の小さなギルドにはないけど、領都にあるギルドになると、かなり大きな施設を持っているところが多いのよ」
アリス母様の説明に、なるほど、と頷きながら、勧められた椅子に座った。
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