第10話
領都のお祭り、3日目、最終日だ。
昨日はイザーク兄様と出店で立ち食いしたり、広場での大道芸を見たりと、中々刺激的な一日だった。中でも驚いたのは、魔物を使役して芸をさせていたこと! 普通の動物(猿?)なのかと思ったら、イザーク兄様がフォレストモンキーという魔物だと教えてくれた。まさか、魔物が人の言うことを聞くのがいるとは知らなかった。
今日は午後からお祭りに行く予定。なんでも、冒険者ギルド主催のなんかの大会の決勝戦があるんだそうだ。それにあの小人族夫妻が出ることになったとか。あの小人族が、である。これを見ないのはもったいない。
それと夜には『森の女王』なるイベントがあって、いわゆる美女コンテスト、みたいなものらしい。そんなの、アリス母様が出たら優勝間違いなしだけど、さすがに元領主夫人が出るわけにもいかないだろう。そもそもが庶民のお祭りだし。
どんな美女が出るのか、楽しみにしながら、午前中は森の家でポーション作りに勤しんだ。何せ、初日で原液一壺使い切ってしまったのだ。2日目の昨日は終日遊んでしまった手前、翌日の営業を考えたら、用意しておきたいと思うわけで。
それに、一応、アイテムボックスに在庫はあるものの、空き瓶があるし、庭に生えている素材となる薬草や実を使ってしまいたかった。やっぱり、植物類は旬のものほど効果が高かったりする。乾燥させたモノよりも、生の薬草類で作る方が、明らかに差がはっきり出てしまうのだ。
そして昼頃に、リンドベル辺境伯家へと向かうと、早々にアリス母様が出迎えてくれた。今日はエドワルドお父様とアリス母様が一緒だ。絶対目立つ。私は隠蔽スキルで隠れていこうか、迷うくらい。
「昨日の格好も可愛かったけど、今日はこっちを着てみない?」
満面の笑みで、着せたいドレスを手に現れたアリス母様。よくよく見てみると、どう見ても、祭りに着ていくような格好じゃない。
「なんか、すごい、ゴテゴテしてない?」
ハッキリ言って、庶民が楽しむ祭りに着る服じゃないでしょ。これは、どっちかというと。
「夜会にでも着ていきそうなのじゃない?」
ムムッと、ドレスを睨みつけ、視線をアリス母様に向けると……なんで、視線を外すかな。
「……何かあるの?」
「あ、うーん、えーと」
絶対、言い訳考えてるよね、って顔のアリス母様。
「冒険者ギルドの大会も見たいって言ってたと思うけど、その格好って、確実に浮くよね?」
「うっ」
「アリス母様も、同じ格好で行くの?」
「うっ」
「……嫌よ、『森の女王』のイベントに出るのは」
「はうっ! なんでっ! だって、ミーシャだって可愛いのにっ!」
いやいや、無理があるでしょうに。身内の欲目でしかないですって。子供じゃないから、私はいたって冷静に判断できますから。
「……はぁ。あれって、『女王』って言うくらいだから、成人している女性とか、そういう制限があるんじゃないの?」
「そうね、一応、15才以上ってなってるわ」
「無理じゃん。どう見たって、ここの15才には見えないし」
「わかってるわ! だから『森のお姫様』の方に出るのよっ!」
「は?」
美人コンテストの『森の女王』がメインだから目立たないけど、どうも子供向けのコンテストもあったらしい。
……出るわけないでしょうがっ!
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