第3話
私の部屋から出ると、ナイスタイミングで執事のセバスチャンが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ」
「ただいまです」
「今、戻った」
週に2回しか寝に来ない私の部屋は……ずいぶんと可愛らしい色合い。これはジーナ姉様の好みだと思われる。
そして、このタイミングでセバスチャンが来るのも、到着を知らせる魔道具のおかげ。不審者だったらどうするんだ、と言われそうだけれど、辺境伯家の執事が、ただでやられる訳もなく。戦っている姿は見たことないけど。
そのまま、食堂へと案内される私たち。普通の貴族の家だったら、着替えたりするのだろうけれど、この家は、まぁ、貴族らしからぬ家。これもある意味、日常のことではある。
「もしかして、遅かったですか? いつも通りかと思ったんだけど」
「いえ、いつも通りでございます。本日はパメラ様とニコラス様が、久々にお戻りになられたので、早めに食事のご用意をすることになりまして」
「あら、やっとダンジョンから戻ってきたんですね」
「はい」
パメラ姉様とニコラス兄様、この双子のAランク冒険者は、いまだにコークシスのダンジョンに挑戦をしている。一時期、気分転換にオムダル王国に出来たという新しいダンジョンに行ってたらしいが、結局、未達成になってしまっているコークシスのダンジョンに再挑戦しているらしい。
「遅くなりました」
「ただいま戻りました」
セバスチャンが食堂のドアをあけてくれた。
約1週間ぶりのリンドベル家の食堂には、いつもの眩い集団(エドワルドお父様、アリス母様、ヘリオルド兄様、ジーナ姉様)がテーブルについていた。ヘリオルド兄様たちの息子のアルフレッドは、まだ幼いからこの場にはいないが、今日は双子もいる。
「ミーシャ!」
「久しぶりね!」
双子が席から立ち上がってこちらに来ようとしていた。
「二人とも、もう子供じゃないんだから、落ち着きなさい」
アリス母様が窘めている。今日は当然、冒険者の格好ではなく、綺麗なドレス姿。もう50代なはずなのに、変わらずに若々しい。皺もシミも見当たらないのは……彼女の努力の賜物と私の手作りの化粧水のおかげなのは、内緒だ。
それからは、和やかな食事の時間だ。ただ、特に今日は双子がいるから、ダンジョンの話で盛り上がる。冒険者経験のないジーナ姉様も、もう慣れたもので、ニコニコしながら話を聞いている。
……たぶん、普通の貴族の食事風景とは違うんだろうなぁ。
そう思いながらも、私もニコニコ笑いながら話を聞く。
やっぱり、コークシスのダンジョンは苦労しているようだ。ネックになっているのは、アンデッド系のところらしい。以前、私も一緒に行ったことがあるが、あの臭いは慣れることはないだろう。
「今は、小人族の夫婦と一緒のパーティを組んでるんだけどね」
「小人族?」
「そう、身体が子供くらいの大きさの種族なんだけど、斥候とかをメインでやるような種族なんだけど」
「けど?」
「うちの夫婦は……めちゃくちゃ戦闘種族なんだよねぇ」
そう言って、遠い目になっているニコラス兄様。
……すんごい気になる小人族。
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