第8話

今日は金曜日、明日湊と雪乃が、デートという名のお出かけに行く前日。

「どうした?湊、顔がにやけてるぞ?」

「い、いやっ?いつも通りだぞ?」

「もしいつも通りの顔だったら、めちゃくちゃキモいぞ」

「ほれ」と、なぜか悠が持っている手鏡で自分の顔を確認してみると…

「うん。これはキモいな」

「だろ?なんかあるのか?彼女とデートか?」

「俺に彼女ができると思うか?」

「あ。俺がバカっだったわ。湊に限ってそれはないな。」

「母さんと同じ反応なんだが…」

「湊に彼女は…なんか違うような、気がするんだよなぁ」

「そうかいそうかい。彼女もちの人間には俺の気持ちがわからないってかい」

「なになに?彼女がどうしたの~?」

“彼女”という単語に反応した、恋バナ好き女子の千夢が入ってきた。というか、湊の友達は、この2人しかいないので、それ以外の人が来ることはない。


「今さ、湊に彼女がいるのはなんか違和感があるって話をしてたんだ」

「そうかな~?意外と、湊君は恋に落ちたら一途って感じじゃない?だってどうせ、可愛いな~って思っても、それだけで終わる感じの人でしょ?」

「まあ、そうだな」

湊は、元々雪乃のことも観賞用だと思っており、かわいいとは思うが、自分には手が届かないし、変な妄想しても現実見せられて悲しくなるだけだから、それくらいにしか思わないのだ。


「だから、本気で恋をしたことがないの!だから、その時になってからは、すごくおもしろそうだな~って」

「ふ~ん、俺には、“みなと心”がわからないな」

「その乙女心みたいに言うのやめてくれない?」

「そうだね。乙女心より“みなと心”のほうがわかんないね」

なぜその言葉で通じるのかがわからないが、そこにいるバカップル同士だと通じるらしい。さすが恋人。

「だから、何でその言葉で意味が通じるの」

「まあ、そこは気にしないほうがいいぞ」

「私たちは、一人で二つだからね」

「そこは二人で一つっていう所じゃないのかよ!ってかそういってほしかった」

「また定期考査が始まっちゃうから、ちゆと一緒に勉強会をしなきゃいけないな」

“定期考査”!!

それは、高校生活において、一番大事なテストである。もし、点数を落としてしまうと、長期期間中の4分の3の日数を登校日とされた、“補習”になってしまう。

それだけなら、華の高校生活が奪われるだけ、と思う湊だが、なぜ湊は本気で勉強する?

それは、単位が取れないからだ。経済的にも、きついがそれより、友達ができない事を、怖がっている。何度も言っているが、この世の中で友達は2人だ。雪乃のことは、友達と思っているかは不明だが。

「湊君も来るでしょ~?」

「いいなあ、860点だっけ。900点中」

「858点な。」

「どっちでも、同じだろ?頭いいことには変わりない」

「お前去年は2点足りなくて、補習だっただろ?」

「ま、まあそうだけどさ」

「私は、430点だった~」

「補習は回避できたよな。補習の人は400点以下だったよね」

「そうなんだよ~悠のおかげだね!」

少し前までは、“ゆうくん”だったのにいつの間にか、“ゆう”になっている。これが時間の経過ということか。

「それじゃあ、急だけどさ明日勉強会しない?湊とちゆの実力試しにもさ」

「いいね~!」

「湊は?」

「ごめん、その日、用事があるんだけど…」

「「え!?湊(君)に用事!?」」

「今まで一度もなかったのに。ついに春が来たのか」

「私たちは、もう、応援することしかできないよ…」

「いってこい!」

「いい知らせを待ってるね」

「勝手に送り出すなよ!?」


なんか勘違いはされたが、無事に送り届けられた湊であった。

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