第14話 かつての理想?

ハイン視点


ワイバーンがとても強い。

Aランクの魔物だからもともと強いんだけど理由は大型の魔物の中で飛べること、がある。

しかしあのワイバーンは既に『グラビティ』で抑えてるはずなのに弱体化してるようには感じられない。


「『オーバーフロー』!」


この魔法はしばらく相手の魔法が発動する前に魔力の分散で威力がかなり減衰する。


「よし、これで……」


魔法は確かに弱まったがまだ攻撃は仕掛けられないでいる。


「『魔法結界』、『全体強化』」


防御の風魔法はなかなか減衰しない……こっちはただの魔法じゃないとか?

やはり魔法結界が壊れた時点で安定した勝ち目はほぼなくなったと言っていいだろう。

前線はガイナスが今までと違って一番上手く立ち回れているけど……埒が明かない状態。

何より彼の『上級剣術』がなぜか封印されているから仮に攻撃したって倒せないと思う。


「『ヒール』、『マッドトラップ』、『ストームバースト』。みんな、ブレスが来る!!」

「了解!」

「わかったわ!」

「はい!」

「『魔法結界』!」


試しにワイバーンの顔に魔法結界を張ってみる。

ブレスは放射状に拡散、数秒で魔法結界は壊れ照射された。


「ガイナスくん!!」

「大丈夫だ、すまないハイン。だが集中切らすなよ!」

「わかってる!ありがとう!」


さっきはガイナスにカスった。

魔法結界使うよりも俊敏性を底上げして回避のほうがコスト的にも安全性もよさそうだ。

僕が完全に支援に徹するが仮に支援がない状態でワイバーンに一番ダメージを与えられそうなのは上級剣術を習得してる彼だろう。

しかし鑑定スキルではその封印は強力で今の僕では10秒程度無効化することしかできない。

なら大まかな筋書きはワイバーンの身動きを封じる+風魔法、ブレス使用不可+ガイナスの上級剣術の開放と全開支援、これがもっとも現実的な手段か。

難しいだろうな。


「ティア、シエル、ガイナス、今どうするか考えているからなる守りに入ってほしい!」


ワイバーンはおそらく魔法が効きにくい体質なんだと思う。

麻痺、毒、視界阻害、能力低下、いくつか弱体化魔法を放っても効果が薄いんだ。

それにしてもワイバーンの魔法の威力が高い。

魔法結界を一撃で粉砕するなんて……いや、僕もまだまだだな。


「ハイン、何か考えがあるの!」

「うん……でもしばらくブレスが来たら避けてくれればいいかな」

「任せてちょうだい」

「あぁ」


よし、だいたい頭でまとまった。

まずワイバーンの行動を封じる手段から。

足を止める手段はグラビティでいける。

風魔法とブレスの対処……これは別の魔法を使うしかない。そして次に重要なのがガイナスとその封印された剣技だ、これを使わせないと絶対に勝てないと思う。

きっと大丈夫だ。

なぜここまで彼の性格が変わったのかは不明だが。


「……ワイバーン退治、ガイナスに全てを賭ける。そうすればまだ残っている魔力と精神力でも勝てる、多分」

「そう、わかったわ。でもそれってあなたも生身ってことでしょ」


ティアが僕の前に立つ。

ヤツは風魔法の調子が悪いことを理解してブレスと物理攻撃で僕たちを攻撃している。

まずは試し、ガイナスにバッドステータス解除をしてみる。


「ガイナス、君の上級剣術を少しの間使えるようにする!いいかな!!」

「おわっとととっ……おうよ!わかった!」


今発生したブレスが終わったときに合わせる。


「『オールキャンセレーション』」


どうなる?

鑑定スキル!!



名前:ガイナス・ハインド(21歳)

レベル:38

Aランク冒険者

所属:炎雷猫

職業:戦士

体力 :309/386

攻撃力:204

防御力:100

素早さ:141

魔力 :92/92

精神力:187/205

運 :80


スキル一覧

『生活魔法』

『上級剣術』

『初級体術(分類不明)』

『スタミナ増加LV4』

『筋力強化LV4』

『筋力一時増加LV2』

『敏捷性上昇lv2』

『回復量上昇LV2』

『隠蔽LV1』

『鑑定(要調査)』

『危険察知』

『財産管理』


称号


『ドラゴンスレイヤー』

『お金の管理のことならおまかせ』

『実質鑑定スキル』

『多分いい人』

『狼の狩人』



よし、成功だ。

そうとはいえこっちもかなりの魔力を消費したから乱発はできない。

異常ステータス解除一つにかなり魔力、精神力を削るとは……

次に変化、ガイナスはどう変わった?

……さっきと違いステータス、スキル任せに攻撃せず……剣技とわかる振り方、そして剣に炎を纏っている。

前と比べて判断や行動に違いはあれど間違いない、いっしょに戦っていた頃の剣だ。

さらに風の防御を炎の剣が打ち破って明確にダメージが入ってる。

嬉しい誤算だな。


「ガイナス!そろそろ下がってくれ!!」

「!」


効果終了、剣もさっきまでの熱は消えていた。


「のわっ!?なんかすっげー疲れがっ!?」


まずい!ガイナスが膝をついた!

やられる!!


「ガイナス!!」


脚は全力だが間に合わない!!

いや、僕は支援魔法使いだろ!

「『グラビティ』!」

「『ホーリーシールド』!」


ワイバーンの動きが鈍くなり、ティアの支援が一撃で砕かれるが_


僅かにできた時間でシエルがガイナスを担いで戻ってくる。

一瞬の差遅れて接近したワイバーンの大顎が閉じられた。


「あ、ありがとう。ごめん」

「いえ、私も活躍できませんでしたから」


息を撫で下ろす。

よし、なら切り替えろ。

課題はほぼクリア。

ブレスもなんとかできるし、あとはこの盤面を勝利に持っていくだけ。

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