第13話 そら見ろ、テンプレじゃないか!

翌日、冒険者ギルドにて。

改めてティアは軽戦士、シエルは武闘家?らしいが壁役は私かなと思いながら来たところ、ちゃんとみんな来てるうん。

私以外は完璧。

メイドさんも来てる。


「……昨日ぶりですね。ライです。」

「はい、お迎えありがとうございます。私が最後ですが全員揃っていましたので出発できます」

「了解です。それでは外に馬車を準備しておりますので行きましょう」

「お三方、ほれっ。馬車に乗る前に各自で靴拭いといてくれ」

ハイン、ティア、シエルにタオルを渡す。

「うん」

「……まぁわかったわ」

「わかりました」


冒険者ギルドの外には馬車が停車ある。

メイドがその扉を開く。


「どうぞ乗ってください。ここからは少し遠い場所になりますのでご了承を」


ライさんの言う通りに乗車するとそこには一人の少女がいた。……幼女である。


「昨日ぶりねあなた達、早速王都までお願いするわね」

「はい、よろしくお願いします」


__________


馬車の中は広いため6人で座っても十分余裕がある。

ハインは真ん中、右隣はティア、左隣がシエル、向かい側にアリサ、ライ、そして私が座ってる。

アリサは私達に興味があるようで質問をしまくっている。

危機感がどうとかも思うが静まり返るのはそれはそれで辛いので助かる。


「今までであなた達が見た中で一番すごかったことって何かしら?」

「僕はAランクの魔物同士が戦っていたのを見たことだね。辺り一帯が瓦礫になってたんだ」


ハインはそう答えた。


「私はハインがロックドラゴンを倒したことですね」

「ふぅん、なかなか凄まじいわ。心躍る冒険ね」

「シエルはご主人様の魔法ですね。すごかったです」

「へぇ……ハイン、期待してもよくって?」


期待も何も最強だよ彼は。

近接特化相手にワンパン(物理)カマしてるんだよ恐ろしい。


「はい、もちろん」

「そう、楽しみにしておくわ。それとガイナスは何かあるかしら」


私の番か……一昨日のアレだな。

思い出すだけでも嫌になる。


「今まででは山一面にいるホワイトウルフの群れ、それが過去一番だと思います」

「……何かあったのね。追求はしないわ」


草原広がる平野の道中、それは起こる。___

『ギャオオォン!!』


何かが吠える、近いな。


「お嬢様、冒険者様方」

「あなた達、よくって?」

「わかりました」

「はい」

「うん」


素早く馬車から降りて周りを見るとそこには_


「あれは、ワイバーンか!」

「こんなところにいるなんて珍しいこともあるものね……」

「……いや、あれはただのワイバーンじゃありませんわ」


赤い鱗、翼と腕の半端前脚。

こいつは竜の残り滓、ワイバーン。

まじでイラストレーターさんと出版社の後付けのおかげてなんか虚しいけどロマンあふれる設定になった奴だ。


「まさか……上位亜種!?」


メイドさん……上位って?

……あーもう!

遭遇は期待していたけど流石にお約束すぎるでしょ。

時間軸もちょっと原作と違うのに。


「えぇ、そのようですわね。下位ならまだしも上位亜種となるとSランクに近い、Aランク帯のパーティーでも厳しいですわ」

「博識ですねアリサ様。ですが今日は心配ご無用!」


ハインがいるんだから!

Sランク魔物もけちょんけちょんなんだ!


「えぇ、そうですわね。ではお任せしますわ」

「はい、それでは」


ハインに視線を送る。

それに気づいたハインは小さくうなずき杖を構えた。


「仕事だ……いくぞ」

「あぁ」


高さ5メートル

相手までの距離は20メートルくらいか。


「ワイバーンの攻撃手段はわかるか?」

「炎のブレスと風魔法、あとは多少の再生能力と物理攻撃」

「わかった……今更俺に指示されるのもあれだろう。回復魔法だけは頼む」

「うん、わかったよ」

「よし……いくぞ!!」


私が先陣を切る。

しかしワイバーンは上空へと飛び立ち回避行動をとる。


「まずは一発……『グラビティプレッサー』」


ハインが唱えるとワイバーンは重力によって地面に強制的に戻される。


「グゥッ……オアァァァ!!!」


ワイバーンは怒り狂ったように叫び声を上げながらこちらに向かってくる。

そして大きく口を開けブレスを吐こうとしている。

狙いはハインか馬車。


「『魔法結界』」

「進むわ、ガイナス!」


絶対アイツは大丈夫だ。

だから私のできることをするだけ!

接近してぶった切る。


「ハアッ!!!」


……剣先が当たらない!?


「うぉぉぉ!?」

「えぇぇ!?」


二人して触れられず押し戻されてる、風魔法か!?

慌てて体勢を立て直す。

ワイバーンの追撃なし、んなわけあるか!


「シエル!下がれ!!」

「えっ_」


一瞬の出来事だった。

前線にいたシエルが吹き飛んだ。

ハインの付与した魔法結界は一撃でズタズタになり消滅。


「シエル!?『キュア』!」


シエルの身体が光り、傷が治っていく。


「大丈夫か!」

「えぇ、なんとか。ありがとうございますご主人様!」


主人公は無自覚系のアレだったが手を抜くヤツじゃない、あのワイバーンがやべーんだ。

だがワイバーンも若干間抜け面晒してる。

シエルを倒せなかったことに驚いてるようだな。


「ハイン、あいつに魔法使ってるよな!」

「……弱体化魔法はかなりレジストされてるみたいだ。グラビティ以外は効き目が薄い」

「そうか……アイツの魔力を枯らせればいけるか?」


ハインにすら手こずらせる魔法耐性があるみたいだな。


「無理だね。今気づいたけどワイバーンニセモノなのに『竜の血』を持ってる。血が巡るだけで常に大量の魔力を生み出して尽きないんだ」


「……どうせもとから逃げても逃がしちゃくれない。徹底抗戦一択しかねぇな」

「そうだね、僕たちなら……勝てない相手ではないはず」

「ああ……さっきは不意打ちを食らったが次はそうはいかん。二人を守りたいなら俺にあまり魔法割くなよ!」


まだ見ていないブレスには要注意だな。

風魔法もヤバイんだが。

ハインは杖を振るう。

シエルに壁貼り直して他にも各種支援、敵への可能な限りのデバフ。

仕事量がエグいことになってる。


『グゥゥォォオ!!』


口から炎が、ブレスだな。


「私も負けていられないわね……!『ホーリーシールド』3枚よ!」


ワイバーンのブレスが私たちを襲う。

ティアの魔法で防ぐことにより魔法結界が一度の攻撃で破壊されなかった。

しかし普通に苦戦してるんだけどどうしてだろ?

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