第8話 有力パーティーは伊達じゃない

道中特に問題なくホワイトウルフのいるエリアに到着した。



「ホワイトウルフはまだこっちに気づいていないみたいだな」

「じゃあ先制攻撃をさせてもらおう」


レイナが何かするようだ。


「分かった。頼むぞ」

「『雷槍』」


彼女の手に稲妻のような光が発生した。


「ギャウッ!?」

「まずは一匹」


レイナの放った電撃の槍がホワイトウルフを貫く。


某死にゲーみたいな攻撃だなぁ。

しかし狼を貫いた槍は電気が爆ぜる。


周囲にいた奴らも倒れ、死んだか気を失ったのか動かない。

ホワイトウルフが侵入者達に気づいた。


「来るぞ!」


一斉にこちらに駆け出す。

速い!多い!


雑魚モンスターらしいが決して侮れない。


「阻害魔法頼む!」

「はいよ『ダーク・フィールド』……これで少しはマシになるわ」


メルシーが詠唱を終え、次の魔法を発動させる。

黒い霧のようなものが広がり、狼達の進行を妨げる。


近すぎても自分たちが見えなくなる、遠すぎてもあんまり意味ない。

絶妙な距離で放ってくれた。


「視界隠し、ならこれを放つし!『リトルサンダー』!」


次にカラミティアの魔法攻撃だ。

先頭にいる狼達の周囲で雷撃が連続して発生、レイナの爆ぜる雷槍とは違いこちらは純粋な感電のみで倒してる。

結果暗闇を掻き消すことなくホワイトウルフを複数屠れた。


「マジでどんだけ居んのだよアイツら!」


しかし先頭の30,40体倒しても先は全然見えない。


それにレイナが叫んだのだ。

文字通り山程いる。

1000は最低でもいるんじゃないか?


「これ……もうちょっと後ろに下がる必要あるんじゃ……」

「……かもな。だが下手に下がると俺たちを通して近くの村や町がバレるぞ」

「仕方ない、それなり退くか。もういっちょ『雷槍』!」


遠距離攻撃がなかったので私は場を観ることしかできない。

そもそも敗因は、つまりざまぁの原因はガイナスがクソであること。


これを徹底してやってたのがこのラノベの要であり他のみんながかわいそう、お決まりの黄金パターンをハナから潰せばいいんだ。


合同パーティーで来た時点で既に結末は変わったはず。

……しかしこんなことなら弓でもできるようになるべきだったなぁ。


「『マッドトラップ』!」

「『エリアフローズン』!」


メルシーとカラミティアの魔法は先頭集団を泥に嵌らせ、嵌った奴から泥ごと氷漬けにした。


なんかみんな賢くないか?

普通にやればなんかイケる気がしてきたぞ。

氷は狼の足止めになり散開を余儀なくさせてるし。


「『結界魔法』発動します!」


散開した狼達に左右から挟まれないようシルヴィアが分かれた狼の前に魔法の防御壁を何枚も展開し強制的に合流させる。


「メルシーもシルヴィーちゃんも活躍してるのに出番がないねー」

「俺達が一番体を張るだけどな」

「……そうだけどさぁ」


私達は後衛の護衛役なのだが、少し時間がある。

まあ、まだ始まったばかりだし焦らず行こう。



___


ホワイトウルフの群れが反撃して来てから約5分。

相変わらず数は多いが確実に規模は小さくなってる。


「……そろそろだリリィ」

「張り切って行こー」


メッチャ怖いのですが。

いくら剣があっても狼は怖い。

猛獣相手に畏縮しないあなたは何なんだリリィさんや。


だがこうなったらやってやる、ガイナスのステータス任せでぶっ潰す。


「シルヴィア!フォービーさん!みんなに『魔法結界』を!」

「はい!」

「……うん」


「「『魔法結界』!!」」


2人が同時に魔法を発動する。

応用性が高い魔法であるが対象の体の周囲にバリアを貼るのが本来の使い方らしい。


応用って……主人公が使うたび作者が効果を勘違いしたせいでは?


「ありがとうございます」

「……」


この魔法は魔力と精神力両方を消費するらしい。


連発したら精神力依存のバフ系魔法と魔力依存の状態異常解除、回復系魔術両方が使いづらくなりしかも回復アイテムが別々のため消費管理が難しくなる。


魔法使いであるメルシーは精神力と魔力で比較したときに魔力が高く精神力が低い配分のため壁貼りが微妙とのこと。


「さて、行くぞ!」

「あぁ!」

「おー!」

リリィ、レイナと共に狼達へ突っ込む。


「おらぁ!!」


レイナが斧を振り降ろし、振り回し何体も子犬のように軽々と吹き飛ぶ。


隣ではリリィが頭部を狙って殴り叩き潰す。


装備しているガントレット?は既に銀色から返り血の赤が広がっていた。

私も迫ってくる狼に対し剣を横に振る。


『バゥ!?』


狼は情けなく吠え、樹木に衝突して動かなくなった。


「……つっよ」


すまんガイナス。

無能とか思ってて悪かった。

描写的に技がないのではなく、いらなかったんだ。


これでまぁまぁ、くらいしか力を出してない気がする。


『「普通なら『筋力強化』と『筋力一時増加』があるだけでもすごいんですよ!魔物と戦うのに不足する地力が高く戦いやすくなるんです!」』


シルヴィアの言ってたことはすごく正しかった。

次は右から来た狼を拳で殴りつける。


『ゲブッ!!』


一撃でこれが断末魔だった。

とにかく手数、殴って蹴って切り裂いて、ぶつけて刺して潰して……


これを後衛を守りながらするのが正解かもしれない。


『グルルルル……』


狼は仲間が一発で吹き飛んでも怯える様子はない。

しかしこちらを警戒している。

やはりただの雑魚モンスターではないようだ。


『ガァッ!』

「くっ……!」


左から狼が飛び掛かってきた。

咄嗟のパンチが顔に命中しやはり一撃で沈んだ。

慢心しなきゃやれるぞこれ。

__________



「はぁ……はぁ……」

「あなた、疲れたのかしら?」


戦闘開始から既に2時間経過。

襲い掛かる狼を撃退しながら後退してる。

しかし、シルヴィアが疲労困ぱいの様子だった。


「ま、まだやれます!」


だが難しいだろう。

戦局を確認しながら魔法をガンガン使う、精神力がガンガン削れる。

削れた精神力の中でまた戦局を確認する。


想定外に無理させていた!


どこかで休ませたいが人員は既にギリギリ。


「お願いよ。……まったく嫌な依頼よね」


というか早く来いよハイン!

状況的には来ててもおかしくないんだぞ?


レイナはまだいけそうだけどカラミティア、フォービーのそろそろ魔力、精神力がヤバい。


ホワイトウルフもかなり倒れ2割もいない。

だが多い。


「やべぇーなこりゃ……」

「あと少しなんだがな」

「もうやだよぉ」


「ふぅ……よし、そろそろ決めよう」


私は覚悟を決めた。

とにかく注意を引き付ける。


「レイナ、君の体力は?」

「まだやれる!」


「よし、俺とレイナで前線に出る。リリィはメルシー達を守ってくれ」


「……分かったよ!おりゃっ!!」


よし、ここからは全力だ。


「『筋力一時増加』」


手に血管が浮き出てきた。

力は強くなるかもしれないけど大量出血には注意だな。


「行くぞ!」

「おう!!」


2人で前に立つ。

ホワイトウルフ達は当然迎撃してくるが、そんなの関係ない。


「おぉぉぉぉ!!」


増加したパワーで拳の連打を叩き込む。


足場が既に狼の死骸で安定しないのが辛い!


『グルルルル!!』


狼が爪で反撃してきた。

それを手で受け止める。


「ぐっ!?」


手首皮膚が裂け血が流れる。

そしてその痛みを我慢しながらもう片方の手で拳を振り降ろす。

背中や首に食らいつこうとするが鎧が牙を通さない。


「『メディック』!」


腕の痛みが引き出血がなくなる。

だが感謝伝える余力なんて今はもったいない。

行動で伝える!


「はり、合え……」

「おらぁ!!」


レイナは狼の頭を掴み地面へ叩き付ける。


『グバッ!?』


彼女も斧を扱う余裕がなくなって来たのだろう。

私はここで終われない。

地面に這いつくばっている狼を蹴り飛ばす。

飛ばされた死骸が飛びかかる狼に接触し揃って地に伏せる。


途端、目があった。

遠くに1体、体格が他の奴らよりでかい奴だ。


見つけた。

群れなら絶対いる存在を。


「テメーがボスだな」


『……』

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