24.〈天巡る風〉Ⅶ
――愛刀をゆっくり鞘に納め、痛む体を押して立ち上がる。
義足の上から膝を覆う形で装着していた
左膝が痛い。右肩から腕にかけて筋が千切れかけているような違和感があって、手先も少し痙攣している。なんとなく、もう一度同じことをやったら次は動けなくなるだろうという確信があった。
技に対して、俺の体と〈
まあ、この程度は治癒魔法で誤魔化せる範囲。義足も……少し軋んでいる気もするが、大丈夫だろう。
「せ、……先、輩」
ユリティアが辛うじてそれだけ言った。師匠もアトリもアンゼも全員言葉を失って、頭の理解が追いつかない様子でしきりに俺の横顔を見つめている。言いたがっていることはわかる……けど、ごめん。あとにしてくれ。
痛みをこらえながら歩く。納めた剣を杖代わりにして、倒れたスタッフィオをすぐ横から見下ろす。
掠れた声が応えた。
「カフッ――……ふ、ふふ。なるほど……もっとも侮ってはいけないのは、アナタだったということですか……」
「……」
スタッフィオは右腕を〈
「なんとも、まあ……アナタ……本当に、人間ですか?」
「そうだよ。あんたと同じ……人間だ」
悪党とは思えないくらい、静かな瞳をしていた。
「悪党を倒して、この子を守ったのですから……もっと、嬉しそうな顔を、すればいいのに」
「……人を殺して嬉しいことなんて、なにひとつねえよ」
「……」
小さく咳き込み、
「……この山肌を登って、反対側へ回り込むと……遺跡があります。捕らえた冒険者は、そこにいますよ」
どこまでも、静かだった。
「手下を四人、残してきています。まあ……ただの、荷物持ちです。アナタなら、なんの問題もないでしょう……」
「……冷静だな」
「ふ、ふ……悪党の、最期など。こんなもの……ですよ……」
そうわかっていたなら。
わかっていたのに、どうして、
「しかし――ああ……アナタほどの、剣士から。片足と、片目まで奪うとは――」
だが、もうそれ以上交わせる言葉はなかった。
スタッフィオの体から、急速に命の気配が消えていく。
最期の言葉は……いったい、誰に向けたものだったのだろうか。
「本当に、この世界は……ロクなものでは……ありません、ねぇ…………」
「…………」
……ああ、そうだな。
その通りだよ。ここは本当にロクでもない世界だ。登場人物を苦しめるのが目的と言わんばかりの外道ファンタジー。俺たちだって、『原作』ではとっくの昔になぶり殺しにされていたはずの存在なのだ。
スタッフィオ、たぶんあんたは――折れてしまったんだろうな。生まれた瞬間からの悪人なんていない。あんただって昔は俺たちのように冒険を夢見て、魔法に憧れて、仲間がいて、どこまでだって歩いていけると本気で思っていたのかもしれない。そうしてロクでもない運命に弄ばれて、世界に失望して、どうしようもないところまで折れてしまったのかもしれない。
理解はする。だが同情はしない。
事情は汲む。だが正しいとは認めない。
少なくとも俺は、あんたと真逆の人間を知ってるよ。あの主人公はすべてを喪って、どん底に落ちて、それでも這い上がって自分の足で歩いていたんだ。守りたかった人はもう誰もいないのに、それでも誰かを守ろうと、死に物狂いで。
俺は、そんな主人公に命を救われた。
だからどんな事情があれ、あんたがルエリィにやったことは認めない。あんたを斬ったことも後悔しない。
助けなければよかったと恩人に後悔させるような生き方、するわけにはいかないからな。
「――ルエリィ」
ルエリィの名を呼ぶ。涙を限界まで溜めた瞳でこちらを見上げる彼女に、俺はまっすぐ手を伸ばす。
「行くぞ。おねえさんが待ってる」
「っ……!」
ルエリィが震えた。咄嗟に右手を持ち上げかけ、しかしなにかに詰まって首を振ると、
「で、でも……! 私は、皆さんを騙してっ……こんな迷惑を」
「勘違いするな。誰が誰を騙したって?」
ルエリィの言葉をぴしゃりと遮る。あまり長々と喋るのは苦手なのだが、今ばかりは俺が言わなければ気が済まなかった。罪悪感に押し潰される女の子なんてウチのパーティだけで充分――いや充分じゃないけども。
ともかく、
「この依頼が罠だって、みんな最初から気づいてたぞ」
「……え、」
「それともおまえ――自分の考えた計画が完全無欠で、非の打ち所がなくて、天才詐欺師同然で、俺たちを完璧に騙してみせたと思ってるのか?」
「そ、そんなことは! ……あ、」
そういうことだ。
おまえは、最初から誰も騙してなんかいない。たしかに〈
「手口を見抜かれて逆に利用されるようなやつが、悪党を気取るな」
「――、」
本当はもっと優しく諭してやれればいいのに、口から出てくるのはルエリィを叱るような言葉ばかりだ。顔だって眉間に皺を寄せて、きっと怒っている風にしか見えないと思う。ルエリィが一人で勝手に思い詰めて、一人で勝手に諦めようとしている姿が我慢ならなくて、頭ではわかっていても体が衝動的に動いていた。
おまえはなんのためにあんなやつらの言いなりになって、歯を食いしばりながら俺たちを騙そうとした。ぜんぶおねえさんの、仲間たちのためだろう。だったら最後までそれだけを考えていればいいんだ。もう、あとほんの一歩のところまで来てるんだぞ。
「おまえは人を騙すのが下手クソで、悪いことなんて逆立ちしたってできなくて、誰よりもおねえさん想いな、」
騙したとか迷惑をかけたとか、そういう話はぜんぶ終わってからでいいんだ。
だから、言う。
「――普通の冒険者で、普通の女の子だろうが」
ルエリィの瞳が、大きく揺れ動いたのを見た。
彼女の心を覆い尽くしていた闇が晴れて、光が戻ったような。ようやく、ルエリィという少女本来の感情が垣間見えたような。
「ふ、ぐ……」
そして揺れ動いた心は、やがてルエリィの内側だけでは収まりが利かなくなってしまったようで、
「うぐっ――ふぐえ゛えぇぇぇ……」
泣き出した。
それはもう、手で拭う端から次々ボロボロとこぼれて落ちていくガチ泣きであった。……や、やっちまったかもしれん。
「ル、ルエリィ? す、すまん、口が悪くてすまん。俺が言いたかったのは、あー……」
「ぶえ゛えええぇぇぇ」
「ルエリィ……!」
あー! そ、そうだよな! 「勘違いするな」とか「悪党を気取るな」とか、さすがにちょっと言い方キツかったよな! それ以前に愛想悪すぎて普通に怖いよな! 中学生と高校生の年齢差だしそりゃあ怖くて泣いちゃうよなぁ! 視線が刺さる……! 師匠たちの視線が背中に刺さる刺さる……!
……結局、見かねた師匠とアンゼが交代してくれて、それでようやくルエリィは泣き止んでくれた。
柄にもなく女の子を励まそうとするなんて、俺には千年早かった。くそう、これがもし原作主人公だったら、同じ無愛想でも頼りがいがあってカッコよくて信頼できる無愛想だろうに……。
ウォルカ、やはりおまえは所詮モブだった男よ。
俺は拗ねた。
/
――本当にこの男は、どこまでアトリの心を焦がせば気が済むのだろうか。
命を燃やして鬼神と成り、〈アルスヴァレムの民〉すら太刀打ちできない死神をたった一人で討ち滅ぼして、仲間を誰一人欠けさせることなく守り抜いてみせた戦士。それだけでもアトリが魂まで惚れ込むには充分だったのに、これ以上はもう捧げられるものがなくなってしまうではないか。
ウォルカが片膝をついてゆるく抜刀の構えを取った直後、アトリは世界そのものが静止したような錯覚に囚われた。音が消え、風が凪ぎ、すべての呼吸とまたたきが途絶えた静寂の中で、彼が剣の鯉口をわずかに切ったのだけははっきり見たのを覚えている。
そして、見えたのはそこまでだった。
(すごい――)
同じだ。彼が、〈
あれが、死の淵で限界を超克した者だけが辿り着ける極致。敵が間合いの外にいようが、幼い少女を人質に取っていようが、死神と呼ばれる不死の怪物だろうが――問答無用で捻じ伏せ、絶ち斬る雷光。
離れた相手を斬る技自体は珍しくもなんともない。しかしそれは魔力の斬撃を作り出して飛ばすというもので、どちらかといえば剣技よりも魔法に近い分類であり、
ウォルカの一閃は、そうではなかった。
極めて文字通りに、空間を無視して斬っていた。彼の剣は単なる武芸の域を超え、魔法すらも凌駕しうる次元に到達したのだ。
しかも彼は、軸足が義足である。義足を壊さぬため片膝をつくという不完全な体勢でなお、あの冴え、あの絶技。
(ああ、ウォルカ――――)
心を焦がされるようだ。彼という戦士と出会えた自分はなんという幸運なのだろう。今すぐ故郷のおばばに自慢してやりたい。見た目がまだ若いから最初は疑われるかもしれないが、今の一閃を見ればおばばだって「なにやってんだいさっさとひん剥きな!!」と血眼になるに決まっている。
……無論、アトリが犯してしまった罪は決して許されるものではない。アトリがあんなヘマさえしていなければ、ウォルカは片目と片足を失ってなどいなかったはずだ。せめて片足だけでも無事だったなら、彼が崩れ落ちてしまった剣の道を嘆くことも、自分を足手まといと責めることもなかった。
だからアトリは、髪の一本、骨の一片、血の一滴、魂の一切、すべてを捧げて彼のために生きるのだ。どこまでも、どこへでも、いつかこの命が完全に尽き果てるまで。
それがアトリにできる償いであり、望みであり、命の理由だ。
(……あ、そういえば)
そしてアトリは、最後にこう首を傾げるのであった。
――ウォルカって、子どもは何人ほしいかな?
ルエリィが、泣いている。
おねえさんや仲間を囚われてからずっと独り、心を削ぎ落とされていくような苦しみに耐え続けていたのだろう。堰を切ったように涙を流すルエリィをリゼルとアンゼが慰め、怖がらせてしまったと勘違いしたウォルカが少し離れた場所で落ち込んでいる。
そんな戦いの結末を見届けたユリティアは、己の頬にも一筋の雫が伝ったのを感じた。
「あ……」
反射的に指で拭うも、驚くことはなかった。ユリティアは身をよじるような吐息とともに、そっと己の胸を強く抱き締める。
ずっと怖かった。自分のせいでウォルカの剣がこの世から消えてしまうのだと、昼と夜の区別もできなくなるほどに恐れ、誰も見ていない場所で何度も何度も嗚咽にまみれた。正直、ウォルカが目を覚ますより前の自分は、リゼルと比べても大差ないくらいにひどい有様だったと思う。
だが、違った。
悪夢の中でユリティアの脳裏に焼きつく、銀の雷光。〈
ウォルカの剣は、潰えていなかったのだ。
(先輩っ……せんぱいっ…………!!)
すべてが運命のように思えた。ユリティアが代々騎士の家系に生まれたのも、昔からずっと剣が好きだったのも、剣を振る才能を与えられたのも、兄たちから半ば家を追われるような冷遇を受けたのも、あのとき魔法学校での生活を選んだのも、すべてウォルカという剣士に出会うためだったのだと。
きっとわたしは、このために――。
そう胸の中で氾濫する感情に、溺れてしまいそうだった。
――しかし、だからといってユリティアの犯した過ちが消えてなくなるわけではない。
焦がれれば焦がれるほど、心の奥底でにじむような痛みが生まれる。片目片足を失ってしまった現実に彼が苦しみ、己を不甲斐ないと責めている事実はなにも変わらない。たとえ彼の剣が潰えていなかったとしても、それで救われたような気持ちになる資格などユリティアにありはしない。
この戦いだって、結局最後はウォルカの剣に助けられてしまった。こんな体たらくで、彼の苦しみを取り除くなどできるわけがない。彼に寄り添うなどできるはずもない。このままではウォルカとの差がどこまでも大きく隔たって、やがて置いていかれてしまうだけ。
ユリティアは技でウォルカに、力でアトリに、魔法でリゼルに遥か遠く及ばない。唯一無二と呼べる力がユリティアにはない。このパーティでただひとり、ユリティアだけは替えが利く。
もし、見放されてしまったら。そのとき、ユリティアは――――
「なあ、ユリティア……俺はやっぱり、人相というか。顔が怖いんだろうか……」
「……」
とても自信なさげに問うてくるウォルカへ、ユリティアは微笑んで答える。
「先輩」
「あ、ああ。正直に言ってくれていいぞ……」
「わたし、ずっと傍にいますから。一生懸命がんばりますから」
ユリティアは、ウォルカの邪魔になるあらゆる苦しみを排除し、支えられる存在になりたいと願う。ウォルカが誰にも言えない暗い過去を歩んできたというのなら、それすらも癒やして寄り添えるようになりたいと。
だから、
「――――――――――捨てないで、くださいね?」
「うん、……………………うん??」
焦がれるような白い感情と、
日が沈み始めている。
赤々と燃える西の空に、少しずつ薄闇の色が広がろうとしていた。
/
青年は全身から血の気をなくし、追い立てられるようにあてどなく森を逃げ惑っている。
ほんの数分前まで、ウォルカたちに『ロイド』の名を偽称していた青年だ。陽気で気さくなルックスは跡形もなく崩れ去り、脂汗と土にまみれ、全身から獣のごとき怒りと憎悪、そしてわずかに覆い隠しきれない恐怖をにじませている。
それはそうだろう。なにせ青年は今、足を引きずって命からがら逃げ延びようとしている最中なのだから。
笑う余裕などあるはずもない。
「くそっ、なんなんだ……なんなんだよあいつらッ、こんなのおかしいだろうが……!!」
Aランクパーティ、〈
精々が十七かそこらのガキの集まりなのだから、適当に人質を取って数で囲めば楽勝だと本気で思っていた。
だいたいこの国の若い冒険者というのは、魔物と戦うのは得意でも人間相手だと途端に顔色を変えるやつらが多い。実際、最初に狙ったパーティはそうだった。つい最近Aに上がったばかりだったというあのパーティは、女一人を人質に取られただけで面白いほど総崩れし、あとは数に物を言わせるだけで簡単に押し潰してしまえた。Aランクといってもガキなら所詮こんなもんか、と心底拍子抜けしたのを覚えている。
〈
だから、ガキはそんなものなのだと思っていた。
だから、〈
むしろ年齢だけなら、あのパーティこそ一番ガキの集まりだった。
結果――『カイン』の名を騙っていた相方は胸を深く斬られた上、打ちどころも悪く、青年が意識を取り戻したときにはもはや手の施しようがなかった。青年自身も右腕がへし折れ、左足は引きずることしかできず、頭から流れる血で視界が半分潰れ、咳き込めば全身が引き裂かれるように痛む。
ようやく笑みがこぼれた。敗走の屈辱と傷の痛みで正気を失いつつある人間の、黒く歪んだ笑みだった。
あいつのせいだ。
あの男が筋書き通り人質になっていれば、結果は違っていたはずだ。あの男にすべて破壊された。あいつのせい、なにもかもあいつのせいで、
「ははっ……許さねえ、許さねえよあのクソ野郎……!! 必ずぶっ壊してやるからな……!! あんたの目の前で、仲間の女も全員ッ、」
叫ぶと同時に、視界が開けた。
そこはスタッフィオが馬車を暴走させ、獣道へ入っていったあの分かれ道だった。あてどなく逃げるあまり、自分はこんなところまで戻ってきてしまったらしい。
「――――あ?」
「うん?」
そして、青年は。
血にまみれた男たちの死体を茂みの奥に放り込む、場違いなほど身綺麗な騎士の姿を見た。
「おや、君が逃げてくるということは――ふむ、向こうはもう終わってしまったのかな。その様子では、さぞかし
「…………、」
「ああ、これかい? さすがに街道の真ん中で転がしたままとはいかないだろう? ……まったく君たち悪党は、死んでからも人の邪魔にしかならないのだから困ったものだよ」
〈
徒党の中でも腕利きの八人が集まった。クロスボウも、強力な魔法の〈
なのに、なんだこれは。
騎士の
全員やられた? たった一人に? 傷ひとつつけられず? 呼吸ひとつ乱せずに?
「ああ、遺体はあとできちんと処理するから安心してくれたまえ。野晒しにはしないさ。まあ、その前に魔物に食べられてしまうかもしれないがね……っと」
八人目の死体を、茂みの奥に放り投げる。両手の土埃を叩いて払い、一息ついて、
「さて――もう一仕事か」
騎士の声音が低くなると同時、青年の全神経が大音量でアラートを鳴らした。
ヤバい。
勝てる勝てないの話ができる次元ですら、ない。
今すぐ逃げろと本能が全力で叫ぶのに、足が地面に縫いつけられて動かない。膝が大笑いを始める。喉が一瞬で干上がる。全身の水分が脂汗に変わる。
「――ちょ、ちょっと待ってよ。わ、悪かった、悪かったって。ほんとにさ、ちょっとした出来心ってやつで。反省するよ、マジで心入れ替えるから」
「誰に命乞いしているんだい?」
騎士は眉ひとつ動かさない。
「君が平伏叩頭して、泣きながら許しを乞わなければならないのは……あのルエリィという子だろう? 僕に言われても知ったこっちゃあない」
「た、頼む。頼むよマジでさ、」
「それに、君らの罪状はすでに定まっている」
聞く耳持たず剣を抜く。
「神の化身であらせられる、あの御方を襲撃とは……よもや首程度で
「……は?」
神の、化身?
いったいなんの話だ。この国で『神の化身』といったら、それは聖都の頂点に君臨する四人の聖女以外に――
「――――――――ぁ?」
――致命的な違和感。
今まで自分の認識していた世界が、なにかによって歪められていたという強烈な理解。
その瞬間、皮膚が裂けるような怖気がせり上がってきた。視界が横転するような目眩と吐き気に襲われ、堪らず前のめりになって口を押さえた。
「――そうだ、なんで。なんで、気づかなかった? あのシスター、あの顔、」
「理解できたなら結構」
「なんでだ!? ふざけんなッ、気づかないわけあるか!! ありえない、なんで誰もッ――ぐ、うぐぇ……っ!」
意味がわからなかった。どうして聖女がこんなところにいるのか。いやそれ以前に、あのシスターが聖女だとわかっていたはずなのに、どうして今の今まで思い至らなかったのか、
「光栄に思うといい。君は今、神の御業たる奇蹟の一端に触れたのだよ」
「なんっ――」
しかし理屈や理由がなんであれ、間違いなく言えるのはただひとつ。
それは、聖女の護衛を務めるような騎士が、聖女と行動をともにするような冒険者パーティが、自分たちにどうこうできる存在であるわけがなかったということ。
そう――これは、決して偶然ではなく。
今まで自分のやってきたことが、ぜんぶ自分に返ってきただけの、
「――なんだよ、なんだよそれ、ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな……」
「ふうん」
さして興味もなさそうに、騎士は言った。
「さんざあの子らを理不尽に苦しめておいて――自分の理不尽には文句を言うんだねえ」
最期に青年の耳が聞いたのは、〈
――罪に罰を。悪しき魂に聖滅を。
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