F級冒険者とA級冒険者③

『レベルが1→9と上がりました。スキル【物理耐性】の熟練度レベルが1→2と上がりました。スキル【身体強化】の熟練度レベルが───』


 聞こえる機械音は、ステータスの1部が上がった事を知らせるシステム音だろう。

 そう思った俺は、未だ聞こえるシステム音を無視し、もっと効率が良い方法を行った。


「『ステータスオープン』」



 ──────────────────

 結城ゆきしろ光星こうせい「17歳」

 職業「剣士」

 レベル「9」


 魔力「D」

 筋力「E」

 体力「E」

 俊敏「D」

 耐性「D」


 〜〜〜保持スキル〜〜〜

 ユニークスキル:【自己再生 Lv2】【???】


 アクティブスキル:【身体強化 Lv3】【剣術 Lv2】【気配察知 Lv2】【斬撃 Lv1】【縮地 Lv2】【物理耐性 Lv2】【火炎耐性 Lv3】


 ダンジョン攻略の証:『チュートリアルダンジョンの裏・無限牢獄』

 ──────────────────


(1回の戦闘だけで、ここまで強くなったのか………)


 ───と、ステータスを見て少し考えている時、後方から拍手の音がしてきた。


「流石ッスね先輩。これポーションッスよ」

「あぁ、ありがとう」


 彩花あやかから渡されたポーションを貰い。そして、一気飲み干すと『魔力が8割も回復』した。


「ゴホッゴホッ! ───ちょっ、おま、どんなポーションを使ったら魔力が8割も回復するんだよ!?」

「え? そりやぁ、『上位魔力薬ハイ・エキサス』に決まっているじゃないッスか?」


 純粋な目をして、首を傾け。魔力だけとは言え、下手したら数十万する魔力薬エキサスを躊躇いもなく彩花あやかは俺に渡してきたのだった。


「まぁ、先輩の言いたい事も分かるッスけど………今は休息が大事ッスよ」

「いや、でもなぁ………」

「大丈夫ッスよ。私、こう見えてお金持ちッスから!」

「いや、それ自分から言うのは違うんじゃ───」


 戦闘終わりの小休憩ではあるものの、ここは歴としたダンジョンの中だ。

 モンスターを倒しても、またモンスターが現れるのがダンジョンと言うものだ。



『ガルゥゥ!』

「っ、またヘルハウンドか!? ちっ! もう1戦やるしか───」

「待って下さいッス、先輩。今度は私の番ッスよ?」


 俺の肩に手を置き、制止の声を上げ。後ろを振り向くと、彩花あやかは片手に拳銃を握りしめていた。








『ガルゥゥゥ!!』

「おっと、危ないッスね」


 ヘルハウンドの威圧、攻撃を諸共もろともせず彩花あやかは余裕で回避。そして、ヘルハウンドの後方へと移動した。


「───さて。先輩が見ているッスから、少しだけカッコよくしないとッスね」


 ボソリと言葉を呟き、彩花あやかは拳銃の引き金トリガーを人差し指で引いた。


『ガルル!』


 銃口から発射された弾丸を、ヘルハウンドは彩花あやか同様、余裕で回避。そして、ヘルハウンドの得意である火球を発現させようとした瞬間───


「あ、そう言えば言ってなかったッスね。───その弾丸、跳弾してるッスよ?」


 岩、壁、地面。あらゆる物質を跳ねて繰り返し、弾丸はヘルハウンドに当たった。



 ただ弾丸が当たるようだったならば、ヘルハウンドら躱す事が出来ただろう。

 ───しかし、彩花あやかは相手の移動、死角を計算し尽くした上でヘルハウンドを倒したのだ。





 才能と言う、言葉で言い表せない戦闘をする者こそが───A級冒険者「東雲しののめ彩花あやか」である。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る