お互いの久し振り

 ピンポーン、そうベルの音がエントランスに響き渡った。


(…………やっぱり出ないか)


 この場所に来た理由は1つ。信頼出来る・・・・・人が、ここに住んでいるかもしれないからだ。

 だが、わかりきっていた事だ。「アイツ」と最後に会った時は、高校生の時だったからな。


 そう諦めた俺は、これからどうするのか考えようとした時───インターホンから女性の声がした。


『誰ッスか?』

「!?」

『何か私に用でもあるんだったら早くして下さいッス』


 気だるさが混じっているものの、昔に聞いた声とちゃんと合っていた。


 そして数秒。俺は黒色のローブから顔を出し、返答をした。


「ほぉ〜、お前も少しは偉くなったな?」

『!?!? え、あァア。………も、もしかして……先輩、なんッスか?』

「あぁ、そうだが? ───にしても、お前のその喋り方は変わっていないようだな」


 信頼出来る人とは、小学校以来の後輩。名前は、東雲しののめ彩花あやかだ。











 ☆ ☆ ☆


 小さいテーブルに、小さいテレビ……。彩花あやかの家の中は、必要最低限の家具しか使っていなかった。


 そして広いリビングでは、身長は少し伸び。前よりも大人びた少女は、瞳に涙を貯めながら口を開いた。


「先輩。私がどれだけ心配したと思っているんッスか!」

「…………」


 目の下には隈を。相手の心まで読めないが、どれだけ心配させたのかは外見からでも分かる。


「すまんな。そんな辛い思いをさせて……」

「……………………もう、分かればいいんッスよ」


 涙を拭い、1呼吸置き。彩花あやかは『ある言葉』を言った。


「改めて、久し振りッスね先輩」

「あぁ、そうだな」


 お互いに2人は、久し振りの笑顔を気づかない内に顔に表していた。
















「ふぅ〜、ツカレタ」


 直ぐに今までの事を話そうとしたが、強制的に風呂場に放り投げられた。

 単純に汚いって理由もあるが、お互いに整理時間を設けたいッス! と、彩花あやかに言われたからだ。


(…………まぁ。あの様子だと彩花あやかは白だな)


 ぼんやりと天井を眺めながら、考え事をした。


 もしかしたら、彩花あやか茜たちアイツらと共犯かもしれない。………が、その線は絶対に無いだろう。

 実際、彩花あやかと会うまでは、「共犯」という言葉が心の奥底では延々と繰り返されていた。───しかし、あの表情にあの仕草。嘘では出せないものを出しているからこそ、こうやって今もリラックス出来ている。


 そう思い俺はごく自然に肩に手を当てると、傷が治っている肌が見えた。


(ま、話は変わるが───【自己再生】様様さまさまだな)


 ──────────────────

【自己再生 Lv1】

 発動条件:自身が少しでも傷を負った時

 効果:20分に1度、自身の傷の1割を治す

 ──────────────────


【自己再生】は、大怪我を負った時に本領を発揮する。

 ───例え、ボロボロの身体や片腕が無くなろうが時間さえあればデメリットなく必ず治る。

 だからこそ単純に使い勝手が良いのだ。


 ステータスをゆっくり見ていると、洗面所から大きな声がコチラに聞こえてきた。


「先輩! ちゃんと、先輩に合った服を置いとくので、それを着といて下さいッス!」

「あぁ、分かった!」


 ステータスを閉じ、俺はそう返事をした。






 ────────────────────

 次話、『東雲しののめ彩花あやかの過去と現在』

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