久しぶりの嬉し涙

「……っ、…ん、ん〜───!? ッ、モンスターは!?」


 どのくらいの時間かは分からないが、意識を失っていたのだろう。ほぼ反射的に、急いで起き上がった先は───森であった。


(どういう事だ? 俺は確かに「地獄」に居たはずだが……)


 何が起こっているのか、正直な話全く分からなかった。……が、まずは行動あるのみ。そう思った俺は周りを見渡してみると………気になる物が視界に入った。


(何でこんな所に、こんな物が?)


 地面にポツンと置かれてあったのは、ページ数が少ない本と黒色をしたローブであった。


 取り敢えず、最も近くにあった本が気になったので、本の内容が何なのかを読もうとした中身を開いてみると───そこには衝撃的な内容が書き込まれていた。




 この世界には『魔力』、『ダンジョン』、モンスターなどの非現実的なものが出現した。

 そして、これら全ての基本となるのが………


「『ステータスオープン』」



 ──────────────────

 結城ゆきしろ光星こうせい「17歳」

 職業「剣士」

 レベル「1」


 魔力「E」

 筋力「F」

 体力「E」

 俊敏「E」

 耐性「E」


 〜〜〜保持スキル〜〜〜

 ユニークスキル:【自己再生 Lv1】【???】


 アクティブスキル:【身体強化 Lv1】【剣術 Lv1】【気配察知 Lv1】【斬撃 Lv1】【縮地 Lv1】【物理耐性 Lv1】【火炎耐性 Lv1】


 ダンジョン攻略の証:『チュートリアルダンジョンの裏・無限牢獄』

 ──────────────────


(………何だろうな、この気持ちは)


『ステータス』に書かれてあるのは絶対。ならば、ダンジョンを攻略する=外に出れるという事。つまりは………森に居る=ダンジョンを攻略した事になる。


(やっとあの「地獄」から解放された。やっと夢であった『日常』が迎えられる)


 久しく忘れていた喜びは、俺の心に深く刻み込まれた。


 そして俺は、静かに嬉し涙を流すのだった。











 取り敢えず(Part2)、この森に滞在していると危険に思った俺は───


「ハァハァ………長すぎ、だろ…」


 黒色のローブ(上半身裸だったから)と手には本を持ち、俺は前へと森の中を突き進んでいた。


 つい先程の俺だったなら直ぐに森を突き抜ける程度は出来る……が、それは出来ない。

 何故ならば、『初期化』されたからだ。


 ───RPGを例に出すならば、ダンジョン攻略時に掛かってしまう呪いデバフの類だろう。

 幸い、スキル等は初期化レベル1だけで済んだものの、もちろん基本能力スペックも『初期化』されている。


(しかし、無限牢獄についての情報は全く無かったな……)


 あの本に見落としがあったのか、ステータスについての扱い方が分からなかった為か、『チュートリアルダンジョンの裏・無限牢獄』の情報が1mmも無かった。


(まぁ、ユニークスキル【???】も同じ何だがな)


 ユニークスキル【???】。……詳細は『無限牢獄』と同じで、1mmたりとも情報が無かった。しかし、何かただならぬ予感がある気がする。




「ハァハァ───やっと見えたか」


 約1時間は掛けて進んだ先は、灯りで照らされてある綺麗な街並みであった。


 ───と、そこでふと思い当たった事がある。


(ここは、俺が住んでいた相沢市じゃないのか? 結構変わってしまったが………街の名残がまだ残っているな)


 例えば、あの無駄に高いビル。確か炎上して破産した会社であったが、とごかの会社が買い取ったのだろうか? ………などの、見覚えがある建物が少なからず見えていた。


 そして、木から生えてある葉っぱを退かし、暫くの間俺は感傷に浸っていた。

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