第14話 「陽葵って意外に着やせ…」
7月29日
昨日のバーベキューパーティはほぼ夜通しで行われた。
全員、そのまま部屋に戻ることなく玄関先の和室で雑魚寝をしていた。
そんな俺は、ブラック企業勤めの悪い癖で少し早めに目が覚めてしまった。
周りを見ると、雅文さんは死体のように動くことなく寝ていて、
佳乃お姉さまの寝息と一緒に上下する豊かな胸元が目に悪い。
いつの間にか全員にちゃんと毛布がかかっていたが、佳乃さんだけは豪快に毛布を蹴っ飛ばしていた。
……美人台無しな豪快さだった。
「あれ?
周りをみると、陽葵の姿が見えない。
昨日は、ずっと一緒にいたはずだったのに。
「陽葵ー?」
陽葵を探すのに、廊下に出るとトイレの前で力尽きてる省吾くんの姿あった。
顔色も青白くて本当に具合が悪そうだった。
「省吾くん、大丈夫ですか?」
「……んっ? うっうっぷ」
少し声をかけると、ダダダっとすぐにトイレに駆け込んでしまった。
今日の省吾くんは、しばらくトイレの住人になってそうな勢いだった。
「陽葵ここかー?」
キッチンに顔を出すが、陽葵の姿は見えなかった。
もしかして庭のバーベキュー道具を一人で片付けてるのかと、そっちにも行ってみるが、そっちにも陽葵はいなかった。
うーん。もしかすると、俺の部屋に戻ってるのかなぁと自分の部屋も確認するが、そっちにもいなかった。
あと、見てないところは裏庭かお風呂くらいだったのだが、お風呂に行ったところでシャワーの音が聞こえてきた。
ジャーー。
「陽葵?」
ドア超しに声をかけると、シャワーの音が止まった。
「あっ、春斗くん? おはよー!」
「お風呂入ってたんだ、どこ行ったのかと探しまわっちゃったよ」
「あはは、ごめんごめん。昨日入らなかったらか何か気持ち悪くて」
ようやく陽葵を見つけて少しほっとする。
「心配してくれたの?」
陽葵の嬉しそうな声が聞こえてくる。
なんか、それにバカ正直に答えるのも大分恥ずかしい。
「まぁ……」
とりあえず、否定もせず誤魔化しといた。
「大丈夫だよ。春斗くんの傍から離れないから」
ドア越しだからか大分恥ずかしいことを臆することなく言ってくる陽葵。
「ありがと、じゃゆっくりしてな」
恥ずかしさを誤魔化すためその場を離れようとすると、陽葵の大きな声がいきなり聞こえてきた。
「あーーー! バスタオル忘れちゃった! ちょっと持ってきて~!」
「はいはい」
相変わらずそそっかしいなと思いつつ、部屋にバスタオルを取りに戻った。
※※※
「陽葵取ってきたぞー」
洗面所にバスタオルを置こうと、ガラッと引き戸を開ける。
「「あっ」」
そこにはハンドタオルで身体を拭いている陽葵の姿があった。
「――なんで風呂入ってないの?」
「の、のぼせそうだったから」
陽葵が急いで手で身体を隠す。
……が隠れ切ってなかった。
あ、あれ? 陽葵って意外に着やせ……。
すらっと伸びた白い足に、柔らかそうな太もも。
形のいいおへそに、きゅっと引き締まったくびれ。
枯れた大地だと思ってた二つのおわん型の双丘は意外に……。
「は、はやくバスタオルちょうだい!」
「あ、ごめん! ごめん!」
「は、恥ずかしいからあんまり見ないでよぉ……」
陽葵にバスタオルを渡して、急いで洗面所から出る。
「ごめんって! 風呂入ってるもんだばかり」
「ふ、ふつうノックするよよよね!」
二人ともテンパってあたわたしてしまう。
「いいんだけど、春斗くんならいいんだけどさ……」
「と、とりあえず俺和室に戻ってるから!」
陽葵がそんなこと言うものだから少し理性がなくなりそうになったので、逃げるようにその場を立ち去った。
※※※
「何してんのお前?」
和室でうつぶせになっていたらやや復調した省吾くんがこちらに声をかけてきた。
「今、俺の中の野生が爆発しそうなんで瞑想してるんです! 邪魔しないでください!」
「わけわかんねー、うっぷ気持ち悪い」
そう言うと、省吾くんはまたトイレに戻ってしまった。
今部屋に戻るとピンクな気分が爆発しそうなので、とりあえず人がいる和室で落ち着かせることにした。
雅文さんと佳乃さんがいる部屋ならとりあえず落ち着くことができるだろう、多分。
そんな祈りを込めた瞑想をしていると、今度は風呂上がりの陽葵がやってきた。
「――あれ? 春斗くん何してるの?」
「今、俺の野生がアグレッシブビーストになりそうだから瞑想してるの! ほっといてくれ!」
「ふーん? 変な春斗くん」
トコトコとそのままキッチンに向かう陽葵。
風呂上がりの陽葵はTシャツとショートパンツのラフな格好になっていた。
白くて柔らかそうな生足と太ももに目に入ってしまう。
さっきのことがフラッシュバックしてしまう。
落ち着け……落ち着くのだ……!
「春斗くん、今日はなめこの味噌汁にするからね!」
「お、おう」
何だか、なめこという言葉までピンクな響きに聞こえてしまっていた。
※※※
「どう? おいしい?」
「うん美味しいよ」
ずずずーとなめこの味噌汁をすする。
なんとかその後持ち直し、陽葵と朝食を取っていた。
雅文さんがそのあと少しだけ起きて、自分の部屋に戻ってしまった。
佳乃さんは相変わらず部屋の真ん中で大の字で寝ている。
「味噌汁って二日酔いに効くわ~~」
省吾くんはトイレから帰ってきて、一緒に朝食を食べていた。
「そうですか? 良かったー!」
陽葵もニコニコと省吾くんに答える。
「いつもあんな調子なんですか?」
「あんな調子って?」
「昨日の騒ぎ方と言いますか」
「あー」
省吾くんと素朴な疑問をぶつける。
「いいか春斗、陽葵ちゃん。あんなもんじゃないから覚悟しとけよ」
「はぁ……」
相変わらず省吾くんがやたら佳乃さんのことをやたら警戒している。
別に実害にあったわけではないので、俺たちはそんな気の抜けた返事を返すことしかできない。
「ふわぁ~~~よく寝た」
そんな噂をしていたら佳乃さんが大きなあくびをしながら目を覚ました。
「おはようございます佳乃さん」
「おはよ~、ショーゴ、ハルト、ヒマリ」
佳乃さんは朝の挨拶をして周りをきょろきょろと見渡す。
「あれ? マサフミは?」
「あいつなら部屋に戻って寝てますよ」
「そっかー、じゃあ呼んできて」
「はぁ?」
省吾くんと佳乃さんがそんなやり取りをしているのを陽葵と一緒に眺めていた。
なんだか、嫌な予感がする……!
「よし! 川に泳ぎに行こう!!」
起きるやいなや、佳乃さんの号令がかかる。
やっぱりと、がっくり省吾くんがうなだれていた。
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