第二章 「彼女のすることってなに?」
第11話 「彼女のすることってなに?」
7月28日
今日も昨日と変わらず、雲一つない快晴だった。
朝のからっとした空気が気持ちがいい。
天気は変わらないが、昨日と今日とでは全然違う朝になっていた。
そう、今日は陽葵と恋人同士になって初めての朝だった。
ちなみに昨日は普通にぐっすり寝ました。普通に寝ました。
大切なことなので二回言いました。
「おはよー
今日も陽葵の朝は早く、キッチンでぐつぐつと味噌汁を作っていた。
味噌汁ってあんまり沸騰させちゃ……まっいっか。
うちの母親もだったが、オカンはあんまりそういうのは気にしないのだ。
「おはよう! 今日も早いね春斗くん」
「何か手伝うか?」
「大丈夫だよ、もう終わるから」
手慣れた様子で朝食の準備を進める陽葵。
昔は全然ダメだったのに、本当に料理ができるようになったんだなぁと少しだけ感慨深い。
「あっ! 忘れてた!」
手を止めて陽葵がこちらに寄ってくる。
「はいっ! どうぞっ!」
陽葵がこちらに「ん~~~」とこちらに背伸びをしている。
「……なにしてんの?」
「おはようのあれしたい!」
えぇ……ベタすぎる。ベタすぎるよ陽葵さん。
一生懸命にこちらに背を伸ばす姿が可愛らしくて、思わず意地悪したくなる。
「早く~~~!」
陽葵の白い足がプルプルしている。
「お、お前ら朝から何ていうもの見せつけてくれてるんだ……」
省吾くんが後ろから声をかけてきた。
陽葵が恥ずかしそうにして、サッとすぐ俺のそばを離れる。
「お、おはようございます省吾さん」
「おはようございます」
「春斗、昨日もだがお前をこれほど憎いと思った日はねぇ……!」
わなわなと怒りで身を震わす省吾くん。
「そ、そんなぁ…俺たち出会ってまだ三日くらいですよ」
「絶交だ。お前とはもう絶交だ」
「そ、そんなこと言わないで春斗くんと仲良くしてあげてくださ……ぃ」
さっきのを見られたのが恥ずかしかったのか、何とも迫力がない陽葵の援護が飛んできた。
「あ、あれ? そういえば雅文さんは?」
話を誤魔化すため、同じような時間に起きてくる雅文さんがいないこと指摘する。
「あいつは……逃げやがった」
「逃げた?」
「あぁ……“ボス猿”が帰ってくるから逃げやがった」
あーそう言えば、もう一人の女性のシェアハウスの住人が今日帰ってくるんだっけ。
やつとかボス猿呼ばわりだとか散々な言われようである。
「雅文さん、朝早かったですよ。今日は帰らないって言ってました」
朝が早かった陽葵がどうやら雅文さんが出かけたタイミングを目撃したらしい。
「裏切りやがったな……! 雅文といい春斗といい……! お前ら許さねぇからな」
「ははっ、そんなおおげさな」
なんだか、小学生みたいなこと言う省吾くんがやたらかっこ悪かった。
※※※
「春斗くん、ご飯粒ついてるよ」
「あ、ごめん」
陽葵と隣あわせでご飯を食べる。
机の向かいには省吾くんがいた。
省吾くんが物珍しそうにこちらをじーーっを見ている。
「どうしたんですか、そんなこっち見て」
「いや、何かあんまり変わらないんだなぁと思って」
「変わらない?」
陽葵と顔を見合わせて一緒に頭の上にクエスチョンマークを出す。
「いや、恋人同士になったらもっとあれじゃん? なんていうか今のあれだと母親と子供というか? 彼氏彼女っぽくないなぁって。朝のあれは置いといてさ」
……まぁ、なんとなく省吾くんが言わんとしてることは分かった。
陽葵もなんとなくだが察したらしい。
「ねー、春斗くん。彼女のすることってなに?」
澄んだ綺麗な目で陽葵が聞いてきた。
「俺が分かるわけないだろ……省吾先輩ぜひご教授お願いします!!」
「そりゃ、お前あれだろ。夜の営みとかそっちだろ」
なに言ってんだこの人。
聞いた人を圧倒的に間違えてしまった。
「よ、夜の営みですか……!」
陽葵が顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
「昨日は普通に寝ちゃってごめんね、春斗くん」
あーーー!何てことを陽葵の前で言ってくれたんだこの人!!
やっぱりふざけてでもこの人に聞いちゃダメだ!
聞いた俺のバカ、アホ!
でも、もっとアホなのは省吾くんだ!!
「はぁ、お前らは幸せそうでいいよなぁ」
省吾くんが深い溜息を吐いた。
※※※
「総員第一種戦闘配備に備えろ」
もう一人の住人は正午あたりに帰ってくるらしい。
省吾くんが玄関前でやたら気合を入れて佇んでいる。
「たいちょー、総員3名しかいません」
「うるさい、黙れ」
折角合わせたのに冷たく言われてしまった。
「お前らそんなのん気にしていられるのも今のうちだからな」
「そんなこと言われても、俺たちその人のこと何も知らないですもん」
「うん」
和室で陽葵とお茶菓子を食べながらお茶を飲んでいた。
「いいか、あの人は本当にめちゃくちゃだからな。こっちの都合なんておかいまいなし、ぐっちゃぐっちゃにかき回すだけかき回すからな」
「はぁ」
何だか、大分話を盛っているように聞こえる。
そんな風に言われるその人が少し可哀想だ。
「あんなボス猿みたいな女、今まで見たときないからな俺」
「ショーゴ、ボス猿って誰のこと?」
突然、玄関の開き戸が開いた。
ぎぎぎと省吾くんが振り向く。
「あ、あねご……」
そこにはボンッキュッボンの綺麗なお姉さんがいた。
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