四話
「これは……『ソルジャー』だと!?」
「そんな! 宇宙軍がここにも!?」
「いや、待て。宇宙軍のソルジャーとは少し違う。……あれは傭兵か?」
新たに現れた三体の人型機動兵器、ソルジャーの姿を見てナツミが目を見開き、驚くトウマの言葉をアレックスが否定する。トウマ達と一緒にこの世界にやって来た他の男女もソルジャーを驚いた顔で見ていたのだが、ライゴウだけは冷静に三体のソルジャーを観察していた。
(あのソルジャーの左肩のマークは……。そうか、『彼女達』もここに来たのか)
新たに現れた三体のソルジャーはアレックスの言う通り、彼が所属する地球軍と敵対している宇宙軍のソルジャーを改造したもので、ライゴウは三体のソルジャーの左肩にある薔薇のマークを見て乗っている人物を思い出す。
三体のソルジャーに乗っているのはトウマ達と同じアニメに登場していた登場人物で、傭兵をしている三姉妹である。三姉妹はとある筋の情報からトウマの乗る新型機動兵器のことを知ると、自分達がそれを手に入れようと何度もトウマ達を襲撃してきた。
三姉妹はアニメの世界ではそれなりに腕がいい傭兵として知られているのだが、いつもいいところまでいってトウマ達に敗北して、敵役なのにどこか憎めないキャラクターとして前世でも人気があった。
「あら? ここは何処かしら?」
「私達はさっきまで宇宙にいたはずなのにどうして地球に?」
「ちょっと貴女達。そんなことはいいからあれを見なさいよ。あれって確か例の地球軍の新型機動兵器でしょ?」
トウマ達がソルジャーが突然現れたことに困惑していた時、ソルジャーのコックピットで傭兵の三姉妹の三女と次女であるリル・ローズとルル・ローズが通信機で会話していると、そこに長女のワール・ローズの声が割り込んできた。
「あら? 本当ね」
「でもどうして新型もここにあるのかしら?」
「知らないわよ、そんなこと。とにかく重要なのは今が新型機動兵器を手に入れる絶好のチャンスってことよ。行くわよ、ルル、リル」
ワールの言葉にルルとリルが従い、三体のソルジャーが新型機動兵器に向かおうとした時、いつ間にかライゴウが三体のソルジャーの前に進み出ていた。
「貴様! 一体何を!?」
「戻れ! 危ねぇぞ!」
ナツミとアレックスが自分達に背を向けてソルジャーに向かうライゴウに大声で言うが、ライゴウはそれに答えず三体のソルジャーに話しかける。
「あの、すみません。ちょっといいですか? この場所について話があって……!」
そこまでライゴウが言った時、ワールが乗るソルジャーが左手に持つ巨大なマシンガンを発砲した。
「ちょっと姉さん? 一体何をするの?」
「あの人、お話をしたいって言っただけじゃない?」
「安心しなさい、ただの威嚇で誰にも当てていないわよ。話なんか後でいくらでも聞けるわ。それより今は新型機動兵器を手に入れるのよ」
ソルジャーのコックピットで通信機からマシンガンを撃ったことを咎めるリルとルルの声が聞こえてくるが、ワールは何でもないように答えると再び自分のソルジャーを新型機動兵器に向かわせようとする。するとその時、マシンガンの発砲によって言葉を遮られたライゴウがどこか楽しそうな声で呟く。
「そうか……。話し合いじゃなくて戦闘がいいのか……。それじゃあ、しょうがないな? うん、これはもうしょうがない」
ライゴウは自分に言い聞かせるように呟いた後、その瞳を闘志と歓喜で輝かせて叫んだ。
「急急如律令! 式機神創造・轟音蜘蛛!」
ライゴウが「合言葉」を叫んだ次の瞬間、彼の脳裏に刻み込まれた術式が発動して周囲にいくつもの光の玉が生じた。
術式「火生土」発動。精神エネルギーを変換して疑似物質を創造。
術式「土生金」発動。疑似物質を装甲や機械の部品に変換した後に組み上げる。
ライゴウの周囲に生じたいくつもの光の玉は、それぞれ形を変えて様々な装甲や機械の部品になるとライゴウを中心にして組み合い、僅か数秒で五間(約九メートル)を超える鋼鉄の巨人の姿へとなる。
新たに現れた鋼鉄の巨人は青と赤の甲冑を身に纏った鎧武者のような外見をしており、背中には二門の大砲と二本の昆虫の脚のような部品が取り付けられていた。そして頭部には外の景色を内部の操縦士に伝える八つの水晶製の瞳が輝いており、八つの瞳と背中にある大砲と脚を合わせて八本の手足を持つ姿は「蜘蛛」の名に相応しかった。
『『…………………………!?』』
ソルジャーとは全く違う鋼鉄の巨人の出現にトウマ達やワール達傭兵の三姉妹が驚き、その間にも巨人の内部でライゴウは次の術式を発動させていた。
術式「金生水」発動。鋼鉄の巨人の内部にある貯水装置に大気中の水分を集めて水を精製。
術式「水生木」発動。貯水装置に精製した水を一瞬で水蒸気に変換して鋼鉄の巨人の内部を循環させる。
準備が全て整うと鋼鉄の巨人は身体の各所から蒸気を噴出させながら身体を動かし、鋼鉄の巨人の内部でライゴウは百機鵺光により異世界からやって来たからくり仕掛けの巨人とその操縦士達に誇るように宣言をした。
「式機神『轟音蜘蛛』完成! 『陰陽師』松永ライゴウ! これより百機鵺光を鎮圧する!」
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