第2話幽霊の名はナツカ
呆然としている僕はとの話を進行するように、幽霊な彼女は口を開く。
「私、ナツカ!あなたは?」
「ぼ、僕はヘイジ…」
ナツカは、幽霊と思えないほど、くったくのない笑顔で僕を見つめた。
可愛い…
爽やかな陽だまりのような風が吹いた気がした。
「ねえ、私を成仏させる協力してよ」
成仏…
はっ!!
僕はその言葉に我に返った。
そうだ、目の前にいるのは幽霊だった。
「成仏って、何か思い残してることがあるってこと?」
「まあ、探し物かな」
「探し物…どんなもの?」
自分でも不思議なくらい普通に話している。
幽霊って、実際に会うとそんなに怖い存在ではないのだろうか。
「鈴…鈴探してるの。ネコのストラップの付いた鈴!」
ナツカは思い出したような言い方でいった。
「ネコのストラップの鈴?ちなみにそれは何年前?」
「何年前かなぁ、幽霊になった時の何月なんて考えたことも無かったわ」
「それじゃあダメじゃん…」
この図書室は何度も通っているけれど、忘れ物なんて、見たこともない。
というより、人気のない図書室に鈴なんて、あったらどこかのタイミングで鳴っていてもおかしくない気がする。
「僕、結構ここに通ってるけど、まず人来ないし、落とし物だったら気づきそうだけどな」
なんとなく、机の下とか探してみるが、埃しかない。
そんな猜疑しながら探す僕に、ナツカは必死に訴えかける。
「でもでも!ここで失くしたのは本当だもん。年数なんて関係ない」
「そうだけど…」
顔色の悪い彼女。
なのに、瞳だけはこんなに輝いて見えるのはなんでなんだろう。
窓に映った自分と目があった。
ここに見えているナツカは窓には映らない。
ただ、人生を諦めたように、死んだような目をしているのは自分の方かもしれない。
何もかもを諦めて、一人で楽に過ごす。
そうすれば、無駄に傷つかないし、無の存在になれば、誰も攻撃もしてこない。
でも、そんな自分の生きる道は、どんな意味があるんだろう。
「ナツカは、どうして死んじゃったの?」
僕の質問に、さっきまで輝いて見えた瞳に翳りがみえた。
幽霊とはいえ、女の子に対して、単刀直入過ぎて、失礼だったかもしれない。
「ごめん…今のなし!」
慌てて僕は弁解しようとすると、ナツカはさっきよりも近い距離に、ナツカがいた。
「もっと、仲良くなったら教えてあげる」
そんな、悪戯に無邪気に笑うナツカに、僕の胸が高鳴った。
「それで、どうするの?協力してくれる?してくれない?」
求められてる答えは二択。
「協力するよ」
答えは本当は決まっている。
僕の退屈な日常が変わっていく、そんな希望が初めて生まれた。
「決まりだね」
ナツカの笑顔に、釣られて僕も笑顔になっていた。
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