第3話モラハラ夫
お風呂から出た暁人の部屋に、私はご飯を持っていった。
「ご飯ここ置いとくよ。食べ終わったのはちゃんと流しに置いといてね」
暁人は、ベッドでスマホを触って寝そべりながら「んー」と心無い返事をした。
私はそのままドアをしめて、旦那の料理も盛り付けていった。
暁人がいないとなると、旦那と二人でご飯を食べなければいけないと思うと、憂鬱になってしまう。
息子も旦那を嫌っているんだから、離婚してしまえば、楽なのかもしれない。
けれど、私には縛られた収入分しか稼ぐことが出来ない。
その中で貯金をしていっても、知れた額だ。
ため息をついていると、玄関がガチャガチャと鍵を開けてドアが開く音がした。
帰ってきた…
「ただいま」
「おかえりなさい」
最低限の挨拶はする。
しかし、食卓に並べられたハンバーグを見て、旦那はため息をついた。
「はぁ、ハンバーグ今日の昼食べたんだよな」
ぼそっと言われる小言。
「そうだったの…」
謝るのも癪なので、一言それだけ言うと、旦那は苛立ったように上着をソファーに投げた。
「本当、疲れて帰ってきたのに、ろくな食事も取れなくて、普通さ、何食べたいとか聞いてこない?」
「いつも聞いたって、なんでもいいしか答えてくれないじゃない」
「ああ、俺、なんか冷凍でいいや」
そういって、作ったハンバーグに見向きもせず、冷凍庫から勝手に息子のお弁当用に買った食品をあっためていく。
「お前はいいよな、好きな花屋で小金稼ぎして、暇な時間たくさんあるのに、普通、洗濯物とかもあんな竿にいつまでもかけとく?」
ご飯でクリアできないと小言ばかりで、人を嫌な気持ちにする。
特に、「普通は」その口癖が私を一番不快な思いにさせるんだ。
普通って何だろう。
普通って言葉で言わせてもらうなら、昼食でハンバーグ被りしても、文句言っても食べるだろう。
暇な時間はストレス発散で使わないと、私の心が壊れてしまう。
私は大きなため息を分かりやすく着くと、洗濯物をたたみはじめた。
「あれ?お前も白髪増えたんじゃない?普通さ、自分で気にして染めに行ったりしない?」
そう言って、ビールを飲みながら小馬鹿に笑ってくる。
白髪なんて、出てくるもんなのだ。
そういう旦那の頭だって白髪が見えている。それに、昔はスリムだった体型だって、腹が出てきたくせに、自分のことを棚に上げるな。
って、言いたいけど、喧嘩することも、話すことも、私はもう諦めているんだ。
話しても不快な思いしかしないのに、話す理由なんて私にはない。
そして、今日の本当の最後は一緒に寝る時だ。
全ての家事を終えて、寝ているはずの旦那の横に入っていくと、気持ち悪い手の感触が私の腰に伝わる。
「いいだろ?」
何がだよ。
「やめて、無理だから」
冷たく私はあしらう。
愛がないくせに、何故男は欲情するのだろう。
私は遊びの相手だって、ときめくから、肌を重ね合うことができるのだ。
ときめきもしない旦那に触れられたところで、何も感じない。
それでも、私がどんなに拒否しても、欲望だけを満たすための道具として旦那は私を扱った。
今日は、ハズレの日で終わった。
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