第1回「エイル&クロノヒョウコラボ企画」(619文字)

 正しい血筋、正当な権利

 5代前のご先祖様から探し始めた第13番聖典を彼の代でやっと見つけることができた。

 1から12までの聖典は、人を助け豊かにする呪文が集められているが13には人を呪い破滅させる呪文があると言われていた。そのために13は禁書となり行方知れずになっていた。

 

 彼ら一族が代々第13番聖典を探していたのは、この国の国王、王族たちのせいだった。

 5代前のご先祖様は第一王子であり、正当な儀式を経て王太子となった。しかし第二王子派の貴族にはめられ、城から遠い山の中の半分崩れた古城に幽閉された。第二王子は不義の子であり、派閥の貴族に本当の父親がいると言われていたのに。

 このときから王への復讐が悲願になった。

 それからはふもとの村人たちの世話で細々と生きてきた。

 十数年後、古城が完全に崩れたときに、死んだ扱いになってしまった。

 それ以前にもう、忘れられた城にいる忘れられた元王太子など誰も気になどしていなかったのだろう。

 

 それからは、名前を偽り各地を旅して聖典を探した。

 それは子どもに、そのまた子どもに引き継がれていったのだ。


『これでやっと王に過去の過ちを認めさせ、謝罪させることができる』

 

 彼はそう思いながらも、それはあり得ないとも思っていた。


『誤りを正せない王など必要ないよね。でも殺さないよ。この国が滅ぶのをその目で見てもらおう。国の名を歴史書に残させなどしない。自分の国が忘れられるのを見ていろ』


 彼の思いに呼応して手に持っている第13聖典が笑ったような気がした。

 


 

 

 

 

 

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