第13回「2000文字以内でお題に挑戦!」(575文字)

 宝探し

 おばあちゃんにあんたはリスのようだと言われたことがある。

 その頃、幼稚園から帰ると自宅のすぐ裏にある山でドングリを拾って遊んでいた。

 お菓子の空き箱にドングリを入れていたが、三日もすると空き箱はいっぱいになった。

 幼稚園児にはドングリは宝物だった。

 宝物を取られないようにするために考えた。

 宝箱になったその箱をどこにしまうか家中歩き回って探した。

 押し入れの奥の箱の中に大事にしまった。                                                    


 山へはおばあちゃんがいつも付き添ってくれて、拾った物はお母さんにちゃんと言うように言い聞かされていたが、お母さんにドングリのことを伝え忘れていた。

 お母さんにドングリを見せようと思ったが、ドングリをしまった場所を忘れてしまっていた。

 

 それを思い出したのは、お母さんに怒られたからだ。

 部屋の片付けをしていたお母さんがあの箱を見つけた。

 箱を開けたお母さんが見たのは、虫がコンニチハしていたどんぐりだった。


 なぜ三十年以上前のことを思い出したかというと、今、自宅の裏の山に来ているからだ。

 いい日本酒が手に入ったので、日本酒好きな大事な彼女と二人で飲むための準備をするためにここに来た。

 結構な時間探しているが見つからない。

 あちらこちら掘り返しているが、日本酒好きの彼女が見つからない。

 どこに彼女を埋めたっけ。

 今まで掘って出てきたのは、別の彼女たち。

 いい日本酒を飲むなら、盃もこだわりたい。

 

 

 

 

 

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