この続きを書いて下さい!!【エイルの挑戦状】(1300文字)ジャンル 異世界ファンタジー……多分

勇者と幼馴染

 異世界に転移したが魔王が強すぎる。


 何度も勇者のチートスキルである死に戻りを駆使して、魔王との戦いをやり直しているが勝てる気がしない。


 死に戻りとは、死ぬと少し前に戻りやり直せる能力だ。もっとも戻れるのは魔王と戦う直前に固定されている。


 だいたい大陸が吹き飛ぶ威力の隕石を当てても、完全物理無効によりノーダメージだし、異世界転移させるにも完全魔法無効で効果なし、もちろん攻撃魔法もノーダメージだ。


 完全状態異常無効で、デバフも毒も石化も変化も何もかも、そう封印さえも完全無効だ。オマケに超回復で細胞が一つでもあれば数秒で元に戻るらしい。そもそもかすり傷すら与えられないけど。


 対話しようにも見た目は、毒々しいでっかい恐竜で、食うか、殺るか、どちらしかないという知能もない生き物だ。


 しかし放置していては、世界中の生き物が食い尽くされてしまう。


 そこで 勇者のアイディアの出番だ。


 離れた場所にある魔王討伐隊の、勇者の幼馴染を含めた隊員に魔法を使い頼みごとをする。


 幼馴染は勇者が転移するとき、彼女の母親の料理のおすそ分けを持ってきていて転移に巻き込まれたのだった。

 彼女の母親は料理上手で勇者の家によくおすそ分けをしてくれた。

 

 どれくらい時間が経っただろうか。

『完了しました』と連絡がきたので、勇者は頼みごとをした場所まで引き返した。


 そこにあった覆いを取るとおいしそうないい匂いが広がる。

 幼馴染を中心に討伐隊が作った大量の料理があった。


 魔王は勇者に目もくれず、料理を食べる、食べる、食べつくす。

 

 だが、料理を食べつくした魔王の様子がおかしい。

 うずくまって、動かない。


 幼馴染や討伐隊員たちが勇者に近寄ってきても、魔王は動かない。魔王からすれば食料が増えたのに動かない。

 うまくいったのに勇者は複雑な気持ちになっていた。


 幼馴染は「みんなで摘んだ毒草のおかげだね」と笑っているが、隊員たちは幼馴染の料理の腕をほめる。


 幼馴染は魔王に向かって「もう、こんなことしちゃダメだよ」とか「食べる量を減らすんだよ」とかお説教をしている。


 魔王は知能はないが本能で感じているのだろう。『こいつはヤバイ』と。冷や汗を垂らしている。恐怖は言語を超えた。

 

 勇者は『恐竜って汗かいたっけ?あ、異世界だからか』などと、冷汗の止まらない魔王を見ながらこれからのことを考える。


 幼馴染の作った料理の匂いのする匂い袋や香水を作れるのか。結界に匂いをつけられるのか。


 異世界の料理人に幼馴染の料理の手順を覚えてもらって料理を再現できればいいのだが、それは無理だろう。


 幼馴染とその母親が同じ材料、同じ手順で作っても味が違うのだから。赤の他人、それも異世界の人には……。


 勇者は一番大事なことを忘れていた。

 それは、「食べ過ぎると毒草料理を食べさせるよ」と言って、魔王を冷や汗だらだらにさせている幼馴染に本当のことを伝えないことだ。第一級箝口令を敷かなければいけない。


 魔王に恐怖を与えたのは毒草ではない。当たり前だ。そんなのは無効にされている。

 魔王を恐れさせたのは幼馴染の料理の味付けだ。


 母親が料理上手でも、娘もそうとは限らない。


 勇者は同情的なまなざしで魔王を見つめていたのだった。

 


 

 


 



 



 


 


 

 


 

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