ある朝、祖父は太平洋の真ん中で目を覚ました

 ある朝、祖父は太平洋の真ん中で目を覚ましたらしい。


「いや~、参ったよ」

 

 自宅から行方不明になっていた祖父が帰ってきてそう言った。

 今までどこに行っていたのか聞いても「太平洋にいた」としか答えない。

 ふざけていると父は怒っていたが、祖父の日に焼けてボロボロになった肌は真実味があると思う。


「じいちゃんが帰ってきてよかったよ」


「太平洋の真ん中だから帰ってこられたが、地球の真ん中だったら無理だったよ」


 確かに帰ってくるのは無理だね。そもそも行くのが無理だけど。

 祖父が独り言のように呟いた。


「宇宙の真ん中だったら、行ってみたかった」

 


 


 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る