第18話 VRはSF
ネットカフェに来てから少し。
「さてと」
竜也は受付からもらった透明な袋に入っている謎の道具を取り出した。ゴーグルのようなものと、いくつかの配線器具が入っていた。
慣れているのか手際よくつなげてゴーグルのようなものを装着する。
「俺としてはこれをやるためにネカフェに来たようなものだけどね」
「ふーん。ところでそれは一体なんだ?」
「
「
「俺が説明するより実際に体験した方が早いかな? つけてみなよ」
そう言って竜也は竜一にヘッドセットを渡した。竜一が装着した、その時だった。
「うおおおおおおお!!! な、な、な、何じゃこりゃあ!?」
どこを見渡しても画面の端がない。どこまでも、どこまでも、現実とほぼ同じ感覚で画面が表示されていた。彼が振り向いたり天井や床を見ると……。
「えええええ!? 後ろも! え!? 天井も!? ええ!? 足元まで!? どこまでもディスプレイ画面!? ど、どうなってんだこれは!? 何だこれ!?」
今までずいぶんと「30年後の未来の進歩ぶり」を見てきたがその中でも極めつけに別格な体験。
真上から足元まですべての場所が画像で表示された画面で、まるで本当に現実的に見ているかのような臨場感だった。
「マジか! マジか!? とんでもない事だぞこれは!」
その臨場感あふれる、いや臨場感しかない映像に圧倒されていた。
その後、竜一が見たVR動画は「小型犬の紹介をする人畜無害な動画」だったのだが、動き回る犬もそれとじゃれている子供の映像はもちろんの事、耳近くのスピーカーから聞こえるその声や息遣いに至るまでその全てが「リアル」で、
まさに今その場で実物が触れるのではないか? と思う位であった。
時折テロップで犬種の紹介がされることが無ければ、本当にその場に立っていると錯覚するほどの「圧倒的な」リアルさだった。
「ス……スゲェ。今まで出てきたどんなSFの道具よりもSFらしいぜ……臨場感
2023年は携帯電話が旧式になる程スゲェってのは散々知ってたけど、まさかここまで出来るとは思ってもみなかったぜ。
もう完璧にSFの世界そのまま、いやSFでもここまで凄いものは無いぞ」
竜一はその衝撃的すぎる映像に脳みそがシェイクされたかのような感覚で呆然としながらもなんとかそう答える。
「ハハッ。俺が初めてVRを体験した時とほとんど同じことを言ってるね、伯父さん。まぁそこは血縁関係があるからかなぁ。
あ、そうそう。このVRだけど家庭用ゲーム機にもあるんだよ。俺は持ってないけどね」
「!? なんだってぇ!? コレが家庭用ゲーム機にもあるのか!? 一家に一台VRが配備されている時代なのか令和は!?」
「ま、まぁざっくり言えばそうだね。まぁここにあるのは最新機種で家庭用にあるのはそれよりは描画力とかマシンパワーが無い低価格版だけどね」
「ス、スゲェ……もう凄すぎてスゲェ以外のセリフが出てこないわ。いやー俺、2023年を舐めてたわ。
いや舐めてるって言い方がちょっと悪かったけど、ここまでとんでもないものを用意できるとは思ってもみなかったわ。いやぁ凄まじいぞホントに、スゲェわ」
竜一はまだ衝撃から立ち直れていないのか、ボーっとしたまま竜也と会話している。
「あと、俺も見たいからヘッドセット返してくれない?」
「あ、ああ。そうだったな。悪かったよ」
そう言って額の辺りまでずり上げたヘッドセットを竜也に渡した。
この後竜一はマンガ本を読んだり時折竜二と咲夜がいる部屋に行って一緒に歌ったりして過ごしたという。
【次回予告】
ゴールデンウィークも終わり学校が再開される。竜一と竜也は学校帰りにある飲み物を飲んだ。
自販機から買えるそれは「ディストピアSF下層労働者が飲む合成飲料」を思わせるものだったとあの時竜一は思ったという。
第19話 「透明飲料はSF」
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